№1
とりあえず、クリスたちは今日はベイビードールの城に泊ることにした。
当分は元の世界に帰れなさそうだったし、なんだかんだでお茶会は夕方まで続いたし・・・。
スノーに案内されたクリスの寝室は自分一人では勿体ないほどの大きな寝室だった。
クリスは念のためスノーに聞くことにした。
「あの……。これ、僕一人で使う寝室じゃないよね」
スノーが不思議そうに首を傾げる。
「えっ? もちろん君一人で使う寝室だけど?」
鈴と玲がどんな感じなのと部屋を覗きに来た。
「わー、すごい広い」
「本当ね」
鈴と玲はベッドに直行し、飛んで跳ねたりしていた。
「おーい、君たち子供はこっちの部屋だよ」と、スノーが言ったが、鈴と玲ははしゃいでいてまったく聞く耳を持っていなかった。
「いいよ、スノー。僕一人じゃこの部屋は広すぎるから皆で寝るよ」
クリスが断りを入れた。
「ああ、わかったよ。―――そこの御婦人も?」スノーはフローラに訪ねる。
「わしがこ奴らと一緒に寝るわけがなかろう」
フローラは不快気味に言った。
「そうかい。じゃあ、御婦人はこちらへ」
スノーはフローラを別の寝室に案内しに去っていった。クリスはやれやれといった表情でそれを見送った。
「クリス兄!!枕投げしよっ!!」
鈴は枕を投げる態勢をとりながらクリスに言った。
「だめだよ。騒がしくしちゃ」
クリスは鈴に注意した。だが、それと同時に微笑ましい気持ちにもなれた。『あの家』にいたら、彼らはこんなに元気になることはなかっただろう。
すると、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。
「はい、どうぞ」
ガチャッ―――――――――。
入ってきたのはベイビードールだった。
「……」
クリスは何と言ったらいいか分からず、ただ作り笑顔で迎えた。
「お前のその作り笑顔は不愉快だ。止めろ」
ベイビードールは冷笑を浮かべながら言った。クリスは言われたとおりに笑うのを止め、双子に見えないように素の表情を出した。
「あなたのその人をバカにするような笑いも不愉快です」
しかしベイビードールはあまり気に留めず、ゆったりとした足取りで双子の方に向かって言った。
「お前ら、腹は空いてないか?」
真っ先に鈴が反応した。
「空いたっ!」
玲もそれに続いて、「鈴が空いたって言うなら、私も空いたわっ!」と言う。双子は顔を見合わせて笑った。
「元気な奴らだ。ならば食堂に来い」
そう言うと、ベイビードールは出ていった。双子も後を追うようにいく。出ていく際、「クリス兄も!!」と一瞬振り返って出ていった。クリスはため息をついた後、「はいはい」と困ったように微笑んだ。