№1
スノー、コレスティーノは真っ先に海に飛び込んで行った。クリス、鈴は後に続きゆっくりとした足取りでやって来る。
「クリス兄、見て!!」
砂浜は本当にダイヤモンドの山だった。太陽の光で角度を変えるたびに砂浜は輝いて見えた。
「すごいな……」
鈴は開いた口を閉じるのを忘れてしまうほど、その美しい砂浜に見とれてしまった。
「おーい!!そこのお二人!!中に入ってきなよ!!」
スノーが突っ立ているクリスたちを呼んだ。スノーとコレスティーノは水をかけ合いはしゃいでいた。
「ふむ。海は久しぶりじゃの。」
クリスが振り向くとそこには水着姿のフローラが仁王立ちしていた。
「―――――――っ!?」
クリスは我が目を疑った。鈴もそのダイナマイトさに呆気にとられている。
「なんだお主ら。その目は」
「・・・いえ・・・何でも」
クリスは困ったような、何とも言えない作り笑いをして言った。
「鈴ー!!」
すると、向こうから玲の声が聞こえてきた。
「あっ、玲だ――――――――っ」
その途端、鈴は玲の格好を見て言葉を失った。
「鈴、どう? 可愛いでしょ?」
玲は紐パンのビキニ姿だった。
「ねえ、クリス兄はどう思う?」
クリスも鈴同様、言葉を失った。
「ああ。・・・いいと・・・思うよ」
クリスにしては歯切れの悪い口調だった。一方で鈴は緊張しすぎて何を喋ったらいいかわからなくなっている。
「あ・・・あ・・・玲、昆布と・・・わかめ・・・どっちがう・・・うまいかな?」
「そうね……やっぱ、わかめじゃない? っていうか鈴、どうしてそんなこと訊くの?」
玲はそう言って、クリスと鈴のことはお構いなしに海の中に飛び込んで行った。
「あ」
クリスが鈴を見て言う。
「な、何だよクリス兄?」
「鈴、鼻血出てるよ……」
「はぁ、まったく疲れる」
ベイビードールはそのままだった。そして、なにかを唱えるとダイヤモンドの砂がうねり上がり、椅子の形を作った。ベイビードールはそこに辛そうに腰かけた。
「なんだ、主は泳がぬのか」
疲れきっているベイビードールにフローラが尋ねた。
「我は――――――――」
「泳げないんだよ!!」
遠くからスノーが大声で叫んだ。
フローラはなるほどと言った様子でくくくっと笑った。
ベイビードールは余計なことを言ってくれたなと言うように「後で絞める」と手振りでスノーに言った。
「はははっ!ごめんよ!!」スノーは陽気に笑っていた。
「クリス兄、行こうぜ」
鈴がクリスを手を引いて海の方へ走っていった。フローラはそんな二人を鼻で笑い、「わしにもその椅子を」とベイビードールに言った。ベイビードールは大きなため息をついて、また唱えごとをした。
バシャッ、バシャッ!!
「うわっ!!やりやがったなコレスティーノ!!」
「ははっ!!」
バシャッ、バシャッ!!
「スノー!!冷たいわよ!!」
「クリス兄!!」
バシャッ!!
「おっ、やったなぁ―――この野郎!!」
「うわっ!! クリス兄冷てぇ!!」
キャハハッ、キャハハッ―――――――
時間は優雅に流れるように過ぎていく。心は幸せでいっぱいだった。他にはもう何もいらないと思うほど――――――――――。
「鈴!! あっちまで泳ごう!!」
「おうっ!! 競争しようぜ」
「じゃあ……よーい――――」
ドンッという瞬間、鈴は先を越して猛スピードで泳いでいった。
「あっ! 鈴ずるいわよ!!」
玲も後を追うように急いで泳いでいく。
俺の勝ちだ!!と思ったその時だった。鈴は体が宙に浮いた感じがした。そして、流れの勢いで海底へと引きずり込まれていく。
「なっ……! やべっ、水が……!!」
海面から顔を出して何とか酸素を確保しようとするが、また次の波が来て鈴を飲み込んでいく。
「くそっ……! ……ごぼっ!!」
もう駄目だと思った瞬間、鈴の前に手が差し伸べられた。その手を鈴は必死になって掴んだ。そして、海面に顔を出し、息を整えた。手を差し伸べたのは、玲だった。
「鈴、危ないじゃない!!」
「ゲホゴホっ!! ご、ごめん……」
鈴は勢いに任せて泳いでいたせいで、結構水深の深いところにきてしまっていたのだ。
「今度からはき―――――――――」
また波が来て、今度は双子を飲み込んだ。二人は必死に海面へ泳いでいく。
「っ――――――――!?」
泳ぐ体制が間もならなかった鈴は必死に玲にしがみついたが、そのしがみついた所は少し変な感触がした。海面に上がる。そして、それが何なのかを知る。途端に、鈴も玲も顔が真っ赤になった。その時ちょうど異変に気付いたクリスとスノーがやってきた。
「大丈夫か二人とも!!」
クリスがそう言った瞬間だった。
「きゃあぁああああああああああああ!!」
玲の鋭い叫び声が空高く響き渡った。
「何だ?」
そんなことは知らずに、ベイビードールとフローラは互いに顔を見合わせ言った。
その頃、海では激しい死闘があった。
「鈴のバカ!! 絶縁するどころか殺してやる!!」
「れ、玲っ、落ち着いて……」
玲が一方的に鈴を殴っていた。
「ごめん、ごめんってば!! 誤解だよ!! 確かに胸を鷲掴みした俺に非はあるけど、仕方ないだろ?! 死にそうになったんだって!!」
「それなら濁流に飲み込まれなさい!!」
「嫌だよ!! あっ、痛っ!!」
鈴はまた玲に一発食らわされた。クリスはそんな双子を止める余地はなく、ただ突っ立って見ているしかなかった。後から来たコレスティーノは何が何だか分からず、スノーに事情を尋ねた。
「何? なんで喧嘩しとるん?」
「あのな、鈴が玲の胸を約ニ十秒間鷲掴みにしたんだ。それに玲は怒って今あんな感じ。で、クリスは何も言えなくてあそこに突っ立ってる。」
「なるほどな……。羨ましいやんか」
コレスティーノはボソッと呟いた。スノーはそんなコレスティーノを横目で睨みつけた。