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Red tea  作者: 紅騎士と黒猫
お泊まり会
10/19

№4


 翌朝からクリスの頭を悩ませる出来事が起こった。鈴が妙に不機嫌でブスッとしている。原因はそう、コレスティーノだ。―――あの豚男め。


 コレスティーノは今朝も、「おはよ~さん、そしてこにゃにゃちわ~」と意味不明な言葉を発しながらベッドに忍び込んで、玲を驚かしていた。


 「きゃっ! 何この変なおじさん! ……殺すわよ?」


 玲はコレスティーノの顔面にパンチを一発お見舞いした。そしてその時、クリスがあることに気付く。


 「ん~……」


 鈴が眉間にしわを寄せていた。


 クリスはこれはまずいとばかりにコレスティーノに静かにしてくれと頼む。


 「えっ? どうしたん? 何かあったん?」


 コレスティーノは全く注意を聞いていないのか、それともわざと大声で言っているのか……。


 クリスは恐る恐る鈴の方に顔を向けた。


 「………」


 鈴は喧嘩を売るようにクリスたちをガンつけていた。玲もやばいと感じたのか、クリスの手をとり、そっと握った。クリスも玲の手を握り返す。


 「なんや~、鈴えらい不機嫌やな。寝起き悪いんか」


 コレスティーノは何も知らずひょうきんに笑っていた。反対に、クリスと玲は顔を強張らせている。


 「鈴、あのさ」とクリスが呼び掛けた瞬間。


 「………何?」


 鈴は神経を集中させ気を高めて、魔法を発動させやすいような体制をとっていた。だが、無論ここではそんなことはできない。鈴はますます腹が立ったのか、地団駄を踏んだ。


 「ちょっと鈴、いい加減にしなさい!」

 

 玲が鈴をたしなめる。


 「何? 玲。俺に構ってほしいの?」


 鈴はつかつかと玲の元へ歩み寄ると、玲に口づけをした。


 「なっ……?! 何するのよ鈴っ!!」


 玲は顔を真っ赤にして鈴を引き離す。「いい加減にしないと監禁するわよっ!!」


 「できるもんならしてみれば?」


 鈴はフッと微笑んだ。玲は肩を上下させながら「鈴のバカっ!」と叫ぶ。


 騒ぎを聞きつけてやって来たスノーとベイビードールは、どうしたんだと言いたげだったが、巻き添えを食らうのは嫌だったので、じっと遠巻きに見ている。フローラはと言えば、そんな鈴に癪に障ったのか「クリス、今すぐそのガキの舌を切るか殺せ」と、平然と言い放った。


 クリスは、鈴を何とかしなければと思った。鈴は寝起きが悪く、誰かに起こされるとすぐに怒って不機嫌になり、玲が話に絡むと上機嫌になるのだ。


 「何か凄いことになってんなぁ。もしかして修羅場ってやつ? ……ま、そんなこと俺には関係ないか。よーし皆、朝食食べ終わったら海行くで」


 根本的な原因を作ったコレスティーノは鼻歌を歌って上機嫌だった。暴走する鈴を止めるクリスと玲の苦労などお構いなしだ。


 「海……?」


 鈴はすっと目を細める。


 「そや、海やで!」コレスティーノはにっと笑って言った。


 ヤバイ、とクリスたちは思った。今の鈴ならツーハンデットソードでコレスティーノを殺しかねない、と。だが鈴は『海』という言葉を聞いた瞬間、目を輝かせて言った。


 「玲っ、クリス兄! 早く行こうよ!」

 

 どうやら目が覚めた―――正気を取り戻した―――らしい。自分の行動を振り返らない言動である。そんなことなら「海行こうね」と言っておけば良かったとクリスは後悔した。


 一方。事情を詳しく知らないスノーたちは「何だこのガキは」と思った。それを見透かしたのか、玲が疲れた様子で言う。


 「朝起きたばかりの鈴は、タチが悪いのよ」


 日常的に玲がブチ切れて剣を振りかざすため、中々気付かれないが、本当にタチが悪いのは寝起きの鈴だったりする。


 「海かぁ。べビィ―も行く? 久しぶりに海水浴としゃれこもう」


 スノーは乗る気満々だったが、ベイビードールは全然乗る気ではないようだった。

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