表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第一章:距離、ゼロセンチ

新しいクラスでの生活が始まり、悠李と玲央は少しずつ顔を合わせるようになる。


玲央は変わらず無邪気に話しかけ、悠李はツンとしながらも、どこか気にしている様子。


まだぎこちないけれど、ふたりの距離は確実に近づいていく。

第一章:距離、ゼロセンチ


「──おはよ、悠李くん!」


朝。まだ半分寝ている悠李の隣に、当然のように座る玲央。


「……水野。お前、なんで毎日こっち来るの」


「え、だって隣空いてるし。悠李くん、ひとりでぽつんって座ってるとこ見ると、俺が行かなくちゃってなるじゃん」


「いらないお世話。……ていうか近い」


「えっ、これくらい普通じゃない? ほら、顔近づけたって全然平気~」


「っ、顔近づけんな! バカ!!」


玲央は悪びれもせず笑う。


(なにこいつ……本当に距離感バグってる)


でも、なぜか逃げられない。玲央の笑顔は、思っていたよりもずっとあたたかくて、まぶしかった。


──そしてこの日を境に、悠李の「普通の高校生活」は、じわじわと変わり始めたのだった。


***


それから数日。


玲央は変わらず毎朝隣に座り、何気ない話を振ってくる。今日は夢の話、昨日は給食の話、その前は飼い犬の話。


「ねえ悠李くんって、朝ごはん何食べる派?」

「……食わない。ギリまで寝てる」

「えー! 朝ごはんは大事だよ? じゃあ俺が作りに行ってあげようか?」

「来んな。通報する」


口ではつっけんどんに返す悠李だが、顔はちょっとだけ赤い。


放課後も、玲央は廊下で待ち伏せしていたりする。


「一緒に帰ろ!」

「……なんで」

「だって方向、途中まで一緒っぽいし。いいじゃん、ね?」


この「ね?」の言い方がずるい。断れなくなるのを、玲央は完全に理解している気がする。


***


ある日、悠李がうっかり風邪で早退した翌日。


玲央が真っ先に駆け寄ってきた。


「大丈夫だった!? 昨日、すっごく心配してたんだよ俺!」

「……なんでお前がそんな心配すんだよ」


「だって……悠李くんだし」


その言い方が、どこか特別みたいで、心臓がどくんと跳ねた。


悠李は、机に突っ伏しながらそっぽを向いた。


「……別に、お前が来なくても、勝手に治るわ」


「でも俺が行ったら、もっと早く治ってたかもよ?」


「は? なにその自信。どこから湧いてんだよ……」


「悠李くんの隣、俺の特等席だからね」


玲央の明るい声と笑顔が、教室の窓から差し込む日差しみたいに眩しかった。


(──おかしい。あいつが笑うたびに、なんか胸がザワつく)


気づきたくない感情が、少しずつ育ち始めていた。



玲央の明るさに戸惑いながらも、悠李は次第に彼の存在を意識し始める。


距離はまだゼロセンチにはほど遠いけれど、確かな変化がそこにあった。


これからどんな関係になっていくのか、ふたりの物語はまだ始まったばかりだ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ