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安楽椅子ニート 番外編20

「あのさぁ、聞いてくれよ。図書館に行ったんだけどさ、いつも、借りられている本があるんだよ。」

「・・・」

「お前、聞いてる?」

「聞いてますけど。何です、その、取り留めのない話は?木崎さん、仕事が溜まっているんだから、手ぇ動かして下さいよぉ。」

「わかった。わかった。ちょっと休んだら始めるから。・・・で、さぁ?」

「・・・ああああ、もう。はい?何です、聞きますから、聞きますから、木崎さんも仕事、して下さいよ。」

「峰さぁ、図書館、行く?」

「はぁ。行きませんね。本、読みませんもん。」

「お前、はっきりしてるなぁ。」

「まったく本を読みませんから。たまに読むのは週刊誌のマンガくらいで、マンガもそんなに興味もないですし。小説にしたって、待っていればそのうち、映画化されるじゃないですか。映画でみれば内容はわかりますから。」

「そりゃマンガとか小説はそれでいいけど、資格の勉強したり、専門書とか、お前、読まないの?」

「資格ですか?僕、今の仕事で満足しているんで、他に資格を取りたいと思いません。」

「清々しいを越して反対に気分が良いよ。」

「仕事の専門分野に関しては、木崎さんや先輩に聞けばいいし。今の仕事がダメなら他に異動させられるだけだし。ダメなら早く異動させて欲しいですよね。」

「清々しいを通り越して、潔いな。侍?現代の侍か?お前は。」

「いやぁ。褒めないで下さいよぉ。」

「褒めてねぇよ。」

「本を読まなくても生活できるって話ですよ。分からない事はネットで調べればいいだけだし。」

「お前、それ、危ないぞ?知らないのか、ネットリテラシー?」

「それ、ネットで見た事あります。あれでしょ?道徳教育のあれですよね?」

「ネットリテラシーをネットで見る、ってもう世紀末だよ。アタタだよ、南斗水鳥拳だよ。」

「意味わからない事、言われても分かりませんよ。なんですかアタタって?」

「ほら、そういう所だよ。峰、お前、本、読まないから一般常識が欠如しているんだ。武論尊は一般常識だぞ?」

「?・・・絶対、一般常識ではないですね。木崎さんが言っている事で一般常識であるはずがありませんもん。」

「憶測でものを言うものじゃあ、ないよ。」

「・・・それで何なんです?その、図書館がどうとかこうとか、って。」

「どうとかこうとかじゃねぇよ、聞いてろよ。図書館に何時、行っても、借りられている本があるんだ。」

「・・・。図書館って本を借りる所ですよね。それなら、当然、本が借りられていても不思議ではないんじゃないんですか?よほど人気がある本じゃない限り、何冊も置いてないでしょうから。人気の本なら、借り待ち行列だって起こるんでしょう?」

「人気がある本ならな。・・・ほら、渡部でおなじみ、東京フレンドパークで、本の紹介コーナーあるだろ?」

「???」

「だからフレンドパークだよ。ほら、寺脇が司会で次に渡部。リリコが映画を紹介して、欽ちゃんの弟子のはしのが」

「ブランチです。ブランチ。」

「ブランチ?・・・まぁいいや。そこで本、紹介すると本、売れるだろ?」

「うぅうん。逆だと思いますけど。人気があるからテレビで紹介されるんだと思います。」

「どっちみち人気になるだろ。そうすると、買わないで読みたい連中が、図書館に殺到するんだ。すると、ま、借り待ち行列が何週間、何か月。・・・買えよ、って思うけどな。」

「木崎さん。人の事、言えないですよ。」

「俺は違うんだって。」

「いやぁ同じでしょう。」

「あのな。そんな人気がある本じゃない気がするんだ。・・・タウンページだよ。タウンページ。お前、知ってる?タウンページ?」

「タウンページ?あの黄色の電話帳ですか?」

「そう。その黄色の奴。正確には電話帳なんだけど、お店とか病院とかの専門の電話帳な。」

「最近、見かけないですねぇ。そう言えば。」

「お前んち、固定電話ある?なきゃ、持ってきてくれないぞ?」

「いや、違いますよ。あっても、持ってきてくれないですよ。うちの実家、持ってきてもらってないと思いますよ?いや。どうかな。分かんない。あったっけな?」

「あれ、言わないと持ってきてくれないのかな?」

「いや、もう、分からないですね。それこそ、ほら、電話番号、調べるのに、ネット、使っちゃいますから。」

「それ言っちゃ、終わっちゃうだろう?」

「そうなんですけど。今、なんでもネットに出ていますから。ネットのタウンページもあるんじゃなかったでしたっけ?専門の店、以外だったら、評価も載っていますから。ネットは。」

「食べログとかだろ?」

「木崎さん。飲食店だけじゃないですよ。今、どんな会社でも評価が載ってますから。病院とかもそうですし、タイヤ交換、ガソリンスタンド。ヘアーサロン。なんでもござれですよ。一億総レビュアー時代ですよ。」

「・・・またいい加減な事、書いてあるんだろ?」

「だいたいいい加減な事、書いてありますけど、真相は定かではありませんからね。もしかしたら本当かも知れないし、嘘かも知れないし、サクラかも知れない。住所が書いてあって、営業時間が書いてあるだけでも便利ですよ。」

「それはあるかもな。一回行って、嫌だったら、行かなけりゃ済む話だもんな。」

「今は一回行って、嫌だったら、下げレビューを書いて、ウサを晴らしてから、行かないっていうのが一般的です。マイナス営業ですよ、お店にとっては怖い話ですよね。」

「どっかで裁判になってなかったっけ?あまりにも嘘かかれて裁判起こしたとか。あ、俺、あれで見た。大岩係長で。ホシをあげるぅうう!って奴。」

「内藤?内藤、ええっと。科捜研のダンナの方!」

「結婚してないけどな。ま、ひどい話だよ。ある事ない事、書かれて。」

「でも、本当かも知れませんからね。実際、ひどい店、ありますから。態度が悪い病院とかもありますから。あながち、嘘と言い切れないのがネットの怖い所ですよ。」

「そうだなぁ。ふぅ~ん。」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「じゃないよ!ネットの話じゃないんだよ、図書館でタウンページがいつも借りられていて、ないんだよ!・・・峰、お前、不思議に思わないか?」

「いやぁ、そうですね。不思議ぃ?・・・うぅうん。興味ないんでそこまで深く考えた事がないんで。分かりません。」

「しかもだよ。九十七年度版だけ、ないんだ。」

「九十七年?」

「ほら、図書館で法律の本、借りたりするだろ?」

「・・・僕、借りないんで。」

「ああ、お前、そういう奴だったよな。お前、今、言っておくけど、ネットの情報もアテになんねぇから、ちゃんとしとけよ?」

「はぁ。」

「ソースだよ、ソース。」

「ソース?・・・その先は言わなくても結構です。おたふく、とか、そういう話、脱線するだけなんで。」

「・・・書いてある記事の信憑性だよ。法律関係は、ネットだと嚙み砕いて説明してあって分かりやすいけど、情報元、怪しいから、結局、図書館で調べなおすハメになるんだ。だいたい、合ってるけど。だいたい、その通りだけど。」

「その通りならいいじゃないですか?」

「だから、その正確さを担保するのに、ネットに書いてありました!じゃ済まされないから、ちゃんと、辞典なり調べて、合っているか確認するの。出典元がおざなりだったら俺達の仕事、終わりだよ?お前、社会人の常識だぞ、それ。」

「間違っていたら、上役が直すでしょうし、もし、間違ったまま、話が通ってしまったら、上役もザルだった、という事で、僕含め連帯責任ですから。むしろ困るのは上役ですよ。僕、困りませんもん。処分された所でたかが知れているし。」

「峰、お前、とんでもねぇ奴だな。清々しい通り越して呆れるぜ。お前と一緒に心中はしたくねぇなぁ。」

「どうも、ありがとうございます。」

「だから褒めてねぇんだって。・・・それでぇ、図書館に行くだろ。そうすると、辞書のコーナーの端に、タウンページとハローページが置いてあるんだ。黄色と青で目立つんだよ。壁一面、電話帳だ。昔の奴も置いてあるんだよな。誰が見るんだろう?と思って、いつも、見ていたんだけど、話はここからだ。」

「ええ。」

「九十七年のタウンページだけ、置いてないんだよ。九十五、九十六、九十七、九十八って、綺麗に番号が揃っているから見ていて気持ちいいな、と思っていたら、九十七だけ抜け落ちているんだ。」

「普通にそんな前のは撤去しちゃったんじゃないですか?無くても困らないし。」

「俺もそう思うけど。でも、気持ち悪くないか?一年だけ、ポンっと抜けているって。お前、コンプリートしたいって思わない?あと、九十七年さえあれば、番号が揃うんだぞ?すっげぇ気持ち悪くてさ、その、無いのが。それで、司書さんに聞いたんだよ?あれって、九十七年だけ無いんですかって?」

「相当、木崎さんも暇人ですね。」

「そうか。照れるな。」

「・・・」

「そしたら司書さんは、驚いた顔もしないで、貸し出し中です、って言うんだよ。」

「貸し出し中?」

「ああ。貸し出し中って事は、明らかに誰かが借りているって事だよな。司書さんが知っているって事は、タウンページを借りていく人がいる事を認識しているって事だ。」

「まあ。目立ちますもんね。あんなもん、借りる人なんていないでしょ?だから余計に目につくんじゃないんでしょうか。」

「俺もそう思った。そん時は、それだけだったんだ。」

「そん時は?っていう事は、違う時もあったんですか?」

「ああ。そうなんだ。その時は、タウンページを借りる人間もいるんだ、程度だったんだけどな。その時に、なんで今のじゃなくてわざわざ古いのを借りているのか?って疑問に思うべきだったが、そん時は、それだけしか思わなかった。」

「確かに、何故、古いタウンページを借りるんでしょうね。気になりますね。」

「だろ?峰、お前も不思議に思ってきただろ?」

「ええ。ちょっとだけ。」

「次に本を返しにいくだろ?四日後ぐらいかな?辞書、返しに行ったんだよ。それで、見るじゃん?タウンページのコーナー。無いんだよ。やっぱり無いんだよ。九十七年が。帰りに司書さんにまた聞いたんだよ。また無いですねって。そうしたら、また借りて行ったって言うんだ。」

「はっ?」

「タウンページを借りて行った人間がいたんだ。」

「へぇ。」

「へぇだろ。俺もへぇ~って思ったさ。また、日にちが空いて、図書館に行く用事があって、気になるからまたタウンページのコーナー、見るだろ?・・・無いんだよ。また九十七年が。」

「・・・ああああ。そうですかぁ。」

「三回目だからさ、やっぱり聞くじゃん。司書さんに。そうすると、パチパチってコンピュータ叩いて、貸し出し中だって答えるんだ。ああ、そういう事もあるんだって、俺もそんなに興味がある方じゃないから、その程度だったんだけどな。」

「興味なくないじゃないですか?完全にその気じゃないですか。」

「司書さんが端末、叩いてたの見てたから、俺も、図書館、行く度、端末、叩いてみたんだよ。図書館じゃなくても、蔵書、調べられるけどな。ネットで。」

「もうやめた方がいいんじゃないんですか。首、つっこむの。」

「でもさ、それがさ、図書館に行くと思い出すんだよ。その程度。行く度に、無いんだ。九十七年のタウンページが。かれこれもう、半年?」

「半年もウォッチングしていたんですか?」

「ウキウキウォッチングだよ。ハゥドゥユドゥだよ?端末で蔵書の確認するだろ?・・・予約はないんだ。予約は。人気のある小説の類は予約、何人って出るんだけど、タウンページは予約はない。だけど、常に、誰かに借りられている。」

「誰が借りているんですか?」

「そこまでは表示されないよ。図書館に行くと無い。返ってきてもすぐ借りられちゃう。・・・不思議だろう?」

「不思議ですけど。そんなに必要なものですか、タウンページって。仮にインターネットが使えない人が借りているとしてもですよ、調べて、メモしたら、それで終わりじゃないですか?なんで、また、借りる必要があるんですか?それに翌年でも、なんなら最新のタウンページでいいじゃないですか?何故九十七年の奴じゃないとダメなんですか?異様ですよ、異様。不思議通り越してもう怖いです。半年も追いかけている木崎さんも異様、いや、異常ですけどね。正直言って。」

「やめろぉよぉ。褒めんなってぇ。」

「・・・」

「司書さんになんとなく聞いたんだよ。いつも貸し出し中ですけど、どういう人が借りているんですか?って何気に、な。平静を装って。そうしたら司書さん。・・・いろんな人が借りていくって言うんだよ。」

「色々な人?・・・同じ人じゃなくて。違う人が、こぞってその九十七年のタウンページを借りていくんですか?しかも、ですよ。しかも、予約している訳でもないのに、戻ってきたら、借りて行くんですか?・・・それ、もう、怖いです。関わらない方がいいと思います。念の為に伺いますが、木崎さんも、もし、あったら借りるんですか?その異常なタウンページを。」

「俺は別にタウンページに愛着がないから借りはしないけど。ただ、どういう人間が借りているか、興味はあるわな。」

「怪しい臭いしかしませんけど。背筋が寒いですもん。」

「そういう不思議体験をしたからさぁ」

「絶賛継続中ですけどね。」

「瀬能さんに話してみたんだよ。」

「瀬能さんに?どうしてです?」

「なんとなく。」

「そうですか。・・・あの人も相当、怪しいですものね。」

「高校生とか中学生が、そういうのを使って、交換日記みたいなのをしていたって話はあるみたいだな。ほら、人気がない本に、ノートの切れっ端を挟んで、誰にも見つからない様に交換日記するんだって。青春だよなぁ。」

「今の子はそういうの、やらないと思うんですよ。スマートフォン持ってるし、SNSは基本でしょ?そんな昭和の奥ゆかしい純愛みたいな事はしませんよ?今の子は。」

「する、しないじゃなくて、そういう事に使われていたって話。図書館あるあるエピソードだよ。あと、スパイ映画なんかだと当然のシチュエーションで、特定の本を通じて、情報をやり取りするなんて話も出てくるって、瀬能さんが教えてくれた。」

「映画とか、そういうのならまだ分かりますけど。タウンページでしょ?」

「瀬能さんが言うには、昔、犯罪に使われたケースもあったらしい。」

「タウンページがですか?」

「タウンページが、って訳じゃなくて、特定の物、特定の大きさ、重さを持つものを利用して、重さを計ったり、大きさを計ったり、するんだそうだ。」

「ええっと、そんな事して何になるんです?」

「浅はかだねぇ、お前は。例えば、水一リットルは重さ一キログラムだろ?丁度、一キログラムの何かを持っていれば水、一リットルを簡単に計れるわけだな。転じて、それが、違法薬物だったり、輸入が禁止されている何かだったり、犯罪に関わるものだったらどうする?その場で、重さを調節できるんだ、売り買いに便利だろ?タウンページじゃなくても、一定の重さ、一定の大きさ、そして、普段、生活の一部にあるようなものでそれが代用されれば、警察の目も欺きやすく、なおかつ、取り引きしやすい。」

「って事はなんですか、その九十七年のタウンページが、何らかの犯罪に関わるような物品の、天秤代わりというか、売買に使われていたっていう事ですか?」

「その線もあるんじゃないかって話だ。」

「頻繁に借りられているのは、確かにおかしいですものね。」

「本当は朝から晩までひっついて、誰が返しにきて誰が借りていくのか、見張っていたいんだけどな。俺もそこまで暇人じゃないし。」

「危ないですよ。非常に危ないですよ。変な輩に目をつけられたら?」

「おおよそ瀬能さんは、中身なんか見ていないだろうから、関係しているのは重さの方じゃないかって。中身が調べたいならお前も言ったように今のを見ればいいんだからな。たぶん、九十七年の頃は、携帯電話黎明期だ。ほとんどの人間が携帯電話なんて持っていなかった時代だと思う。そんな時代のタウンページは今と違って、ジャンプ並みに厚かった。電話帳は厚い、誰しもみんな想像するだろう。電話帖が厚いって事は、峰、どういう事か分かるか?」

「いえ、まったく。」

「バカだなぁ。厚けりゃ重いに決まっているだろう。下手したらジャンプより厚いんじゃないか。実際の九十七年のタウンページが手元にある訳じゃないから分からないけど、前年と後年を比べて、それほど大差はないと思う。けれど、しっかり九十七年だけ抜かれるという事は、そのものズバリの重さだったんだろう。・・・たぶん、紙幣の重さを計る為だ。」

「どうして分かるんですか?お金だって。」

「単純な話だ。お前、タウンページ、持ったことがあるか?まあまあ重いよな。・・・違法薬物をタウンページの重さで取引してみろ?どれくらいの量を取引することになると思う?葉っぱとか粉とか、軽いものはその重さにするのに嵩が必要だ。大きくてかさばってしまう。そんな目立つものを町中で取引すると思うか?」

「・・・しないと思います。」

「町中で取引するとするならば、紙幣だろう。紙の方。二千万か三千万、キリがいいから二千万円と同じ重さなんだろうなぁ、タウンページが。帯付きでだぞ。帯で重さが変わるからな。」

「どうしてお金の重さを計る必要があるんですか?」

「半年もずっと借りたり返したりされているんだ。もしかしたらもっと以前から使われていたかもしれない。峰、この半年。もっと前から。この辺りも当然のように、オレオレ詐欺の被害に遭っていなかったか?オレオレじゃなくても似たような詐欺、それに強盗。一人で行う詐欺じゃなくて、複数人で、分担して行われる類の詐欺だ。いわゆるトクリュウって奴だ。」

「二た月くらい前に市の防災無線で、市役所を語った詐欺が横行しているとか、放送されていた気がします。ただ、もう、そういう犯罪も日常茶飯事すぎて覚えていませんが。」

「下っ端に、金の入った荷物の重さを覚えさせるのにそのタウンページを使ったり、そのタウンページと同じ重さになるまで、金を留保、まぁ、貯金だよな。貯めておけと言われたり、もしくは、金を運ぶダミーに使っていた可能性もある。重さが同じだからな。」

「じゃあ、なんですか、その九十七年のタウンページを使って、詐欺集団が、金のやり取りをしていた、って言いたいんですか?」

「やり取りっていうか、その重さをレートにして、やり取りしていたんだろう。その方が何かと都合がいいし。特に、複数人で犯罪を行う場合、基準が曖昧だ。明確なルールが必要になる。その時、利用しやすかったのがタウンページ。重さが画一だ。そのタウンページと全く同じ重さにすればいいだけ。そうすれば、上の奴等も金が幾ら動くか見当がつく。仮にパクられても、パクられた金額も分かるからな。上の指示する奴は、下っ端の事なんか、これっぽっちも信用なんかしてない。下の奴等は下の奴等で言われたら、言われた通りにするだけ。そういう犯罪で、指示を出すのに都合が良かったのがタウンページだった、って話だ。」

「ええぇ。そう瀬能さんが言っていた、と。」

「まあな。」

「木崎さんが威張らなくても。」

「それで、瀬能さんが、どうしても俺がタウンページを借りたいっていうなら、良い方法があるって言うんだよ。」

「・・・いや、もう、どうでもいいですけど。それより犯罪の臭いがして怖いんですけど。」

「司書さんに、自分は警察の者だけど、捜査の一環で、そのタウンページが見たいから、返ってきたら教えてくれ、って言っておけば、何度も同じタウンページを借りている人達だから、それなりに司書さんも不振に思っているはず。きっと話が漏れて、相手も警戒して借りなくなるっていう寸法だ。」

「木崎さん。それ、普通に、本を予約すれば、貸してくれますよ?」

「?・・・・おおおお!峰、お前、頭、いいな!凄いなお前!俺、瀬能さんが凄えぇと思ったけど、お前の方が頭いいな!じゃあ、早速、俺、図書館に行って、そのタウンページ、予約してくるわ!」

「いやいやいやいやいや。木崎さん。そんな事、しない方がいいですよ。その、あの、特殊詐欺グループに使われている可能性があるタウンページなんでしょ?関わらない方がいいですよ。放っておいた方が。」

「いや、峰、俺はそのタウンページを手に入れ、番号が揃った、コンプリートされたタウンページの壁を見てみたんだよ!」

「・・・ああ、もっと重たい本で、五千万、計れる本にしておけば誰も気がつかなかっただろうに。」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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