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聖 ひじり  作者: 雨世界
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1 なかなかあなたに会えないな。……、会いたいな。

 聖 ひじり


 なかなかあなたに会えないな。……、会いたいな。


「お師匠さま。お腹が減りました」幼い弟子の女の子、白鹿の姫が彫刻家のお師匠さまである若い女性の彫刻家、聖にそう言った。聖はごそごそと旅の荷物の中から残っていたお饅頭を取り出した。

「これを食べなさい。お饅頭です」とにっこりと笑って聖は言った。「ありがとうございます」と嬉しそうな顔をして白鹿の姫はお饅頭を受け取るとぱくりと大きな口を開けて一口で(ちょっとだけ無理をして)食べてしまった。

 ざー、という静かな雨の音が聞こえる。聖は今お弟子の小さな童の女の子、白鹿の姫と一緒に深い森の中にある古い捨てられた神社の中で雨を凌いでいた。今朝は深く濃い霧も出ている。まだ外を歩き出すことは危ないだろう。森の中で迷ってしまうかもしれない。

 聖は荷物の中から銭の入った袋を取り出すと中身を確認する。するとそれは雀の涙ほどの銭しか中に残っていなかった。それを見て、はぁー、と聖はため息をついた。

「都についたら、まずはどこかで彫刻の仕事を探さないといけませんね」と聖は言った。

「お仕事ですか。お師匠さま。わたしもお師匠さまのお仕事をお手伝いします!」ととても元気な声で、嬉しそうな顔をして、白鹿の姫は聖に言った。(きっと餡子がいっぱいに入ったお饅頭が美味しかったのだろう)

 白鹿の姫のさっきまでお餅のように膨らんでいた口元にはお饅頭がちょっとだけくっついていた。そのお饅頭を摘んで聖はぱくっと食べた。

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