ジョバンニと一緒に(現時点で考えていること)
「ケンタウルス、つゆ降らせ!」
街はお祭り騒ぎだった。みんなあかりを提げて、広場に集まってくる。
ぼくもクラスメイトたちに誘われて人混みの中を歩いていた。
「ジョバンニは?誰か見なかった?」
友人たちは顔を見合わせた。
「どうせ誘っても来ないよあいつ。なあ」
「うん。家のことで手一杯なんだよ。貧乏人だし、誘わなかった」
ひどいな。ぼくは腹がたったが、噂で、ジョバンニのお父さんがラッコの密猟をしてる、悪いことしてる、って広まってたから、迎えに行ってやれなかった。
以前はよく一緒に遊んだのに。
「カムパネルラ!みんな!」
みんなより、ちょっと背の低いザネリが息をきらしてかけてきた。
「そこでジョバンニと会ったよ」
「えっ。一緒に来なかったのかい、ザネリ?」
「どうして?ジョバンニにいってやったのさ、お父さんがラッコの上着を持って帰るよ、って」
「ジョバンニはなんて言った?」
「ただ泣き出しそうな感じでいなくなったよ。ああ、せいせいした」
ジョバンニの胸のうちを思うとやりきれなかった。
「川にあかりを流しに行こう」
誰かがそう言ってぼくらは船着き場に向かった。
みんな楽しそうだ。ぼくは心がモヤモヤしてあんまり楽しめなかった。
ザネリ、バチが当たればいいのに。噂は噂にすぎないし、ジョバンニを傷つけて良いはずがない。
そんなことを考えていたら、ザネリは船をグラグラ揺らして遊んでいた。
「あっ!」
ザネリが川に落ちた。
ぼくは無我夢中で川に飛び込んだ。
ザネリはただ、幼すぎるだけなんだ。神様、ザネリを助けてやってください。
ぼくはザネリを捕まえて、船に向かって押しやった。大人たちがザネリをひきあげるのが見えて、ぼくはほっとした。
そして、なんだか、力が抜けてゆくのを感じた。
ぼくの自業自得だ。ザネリにバチが当たるようになんて、願わなければよかった。
ゴボゴボ。
くるしい。ぼくは死ぬのかな?
お母さん!
助けて!
お母さん。ぼくが先に死んだら、親不孝だって、怒るかな?いや、きっと泣いて悲しむだろう。
ああ。
ずぶ濡れで、ひどい気分でいたら、不思議なことにいつのまにか、列車の座席に座っていた。
緑のビロード張りの座席は、ぼくの濡れた体から滴り落ちる水を吸い取った。
「カムパネルラ!」
懐かしい声がして、ジョバンニが立っていた。
「ジョバンニ」
ぼくはいつのまにか、気分が良くなり、はしゃぐ友人と列車で旅を始めるのだった。