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インターミッション 夏丸の日常

押上家の愛猫〝夏丸〟目線でお楽しみ下さい(^^)

 俺は押上夏丸。雄三歳で、猫種はミックスだ。お前だろ? 時士たちが言ってた押上家の内情を詳しく知る人間ってのは。まぁ少しだけ、俺目線で話を聞かせてやるよ。

 

 昔、俺は最悪な組織施設から時士に助け出してもらい、この押上家に迎え入れてもらったって経緯は知っているよな? 押上家は居心地がとても良いんだ。部屋は臭くないし、飯もちゃんと食わしてくれる。時々、シャンプーとかいうのと、爪を切られるのがスッゲェ嫌で、全力で逃げ回るけれど、桜々と空生に必ず捕まえられてヤラレてしまう……。隠れても、擬態しても、全力で外へ逃げても、暴れまくってもッ……何をしてもダメだった……。さすが押上家の最強ツートップだッッ!! 最近は諦めて素直に従った方が良いんじゃないか……その方が疲れないかもしれないと思い始めている。

 

 その疲れた俺を幸慈がドライヤーやブラッシングをして癒してくれるんだ。あれは気持ちが良い。何かの能力がかかってんじゃねぇかと思うくらい痒い所に手が届くというか、何処もかしこもブラッシングして欲しくなる。だから、俺はついつい腹を出して寝てしまうんだ。幸慈のブラッシングはめちゃくちゃ最高だ!

 

 それから倭久と幸雅は全力で俺と一緒にトレーニングをしてくれる。普通の飼猫になるのは俺のプライドが許さねぇから、それを理解してくれて、日々鍛える為に二人がよく付き合ってくれるんだ。気持ちの良い男二人でさ、友だちのように接してくれるから、素直に胸を借りてトレーニングできる。でも敵わなくて、悔しさで時々変化してしまって怒られるけど、まぁ何とかやっている。トレーニング後に食べる三人での間食は美味い! 桜々が用意してくれんだけどな。これがまた理に適ったモノを用意してくれるからありがたい。お陰で筋肉はモリモリだッ! 普通の猫たちとは筋肉の質が違うって、俺の獣医が褒めてたな。

 

 そして時士は俺の命の大恩人だ。時士に困る事がないよう、俺に出来る事があるのなら力になりたいと思っている。それはここに置いて貰える限り、生涯変わることはない。金髪の眼鏡で、話し方もバカ丁寧で頼りねぇ感じだと……最初はそう思っていたけれど、今では時士に一目置いている。

 理解出来ないって? あー……まぁ普段は桜々に怒られてるし、なんかそれを気持ち悪い顔で嬉しそうに喜んでるし、空生にはしょっ中無視されて、倭久にはハードに絡むし。そんな時士を幸雅と幸慈が(なだ)めたり、(なぐさ)めてたりして、ひとっつも良いところが無さそうには見えるんだが……、時士はこの押上家の柱であり、大切な司令塔なんだという事が俺は徐々に分かっていったんだ。それは時士の人となりがそうさせているんだろうなと思った。不思議なヤツだよ、ほんと。まぁ俺もその時士という人間に魅せられた一匹なんだけどな。そんな感じで日々を充実して過ごしてる。

 

 あぁん、(あん)だとォ? 俺と一緒に縄張りをいろいろ見てまわりたいって? ったく、面倒くせぇなぁ……。縄張りは回らねぇけど、任務はあるからな……ついてこれねぇんなら、置いてくからなッ!! 今日はYADOCALI周辺の他に、隣町の羽柴小葉が勤める会社近くにも行かないといけないんだから、マジで邪魔すんなよッ!

 とりあえずYADOCALI周辺をパトロールするから、ついてこいや……。どっちの奴が居るのか分かんねーけど、ちょっくら脅して逃げ帰らせたらまぁいいだろう。お、居た! 時士から教えて貰った特徴と一致するな。……なんだ、コイツッ……見た目がセバスチャンそっくりじゃねぇかッ!! その場をウロウロして……鎖に繋がれたヤツに本当に似てるなぁ……。あ、セバスチャンってのはな、YADOCALIの近所にいる犬で、俺一番のお気に入り犬なんだ。コンクリートの塀の上で、俺が最初に揶揄うのがお決まりのパターンでな、威嚇から始まって、届きもしない癖にジャンプしながらよく吠えてくるんだよ。毎回飽きもせず、付き合ってくれてさぁ、嬉しいもんだよ。んで、一時して俺が塀から降りてヤツのテリトリーへ入ると、「ギャッヒィン、ギャッヒィン」言いながら、ダッシュで小屋へと逃げ帰るんだ。俺的にはその姿も好きなんだが、一番は逃げ帰った小屋から毎回ケツだけ出してプルプルしてる姿なんだ。隠れているつもりなんだろうけど、その後ろ姿がなんか可愛くてよー……一番好きなんだよなぁ。まぁ、そんなんで威勢だけは良い小心者なんだけど、すげぇ面白いヤツでもあるんだ。お互い今はまだ若いから譲れないものを張り合ってしまうけど、いつかアイツと日向ぼっこしながらゆっくり話でもしてみたいなぁなんて思ってはいるんだ。おっと、任務中だったな……さぁて、こっちのヤツはどうしてやろうかなぁ。

 

「あー蓮織も取られて腹立たしいわぁ。反抗的になってきたから離婚する方がいいと思ったけれど、あたくしがまた大変になったじゃないッッ。戻ってきても許してあげるとまで言ってあげたのにッ! 素直に言う事聞けばいいものを歯向かうなんて、何を考えてるのかしらッッ。これだから何処の馬の骨とも分からない子は困るのよ。今日こそとっ捕まえて、引き摺ってでも連れ返さないと身が保たないわッ! あたくしにもやっと自由な時間が出来て、好きな事が出来ていたのに、全くッ……」


 あー……残念。セバスチャンとはちょっと違う感じかなぁ。コイツって、嫁は奴隷だと思う典型的な嫌な姑のようだな。俗に言う嫁姑戦争……いや、違うな。この場合は、確か桜々が言っていた……嫁いびりっていうやつか! あ? ボコボコにしてやれってか? 済まんな、俺は暴力的な事はあんまり好きではないもんでね。相手が攻撃してこない限り、なるべく穏便に済ませるタイプなんだよ。脅かしてやる方が面白いと思わねぇか? だろッッ!? ヒーヒー言わせてやるから、まぁ見てなよ。ククッ……。


「ニャアーン……ゴロゴロゴロ……」


「まぁ可愛らしい……毛艶の良い子ねぇ。どこのお家の子かしらぁ。こちらにいらっしゃいな」


「ニャアーン」


「あらっ、お返事してくれたの? まぁー賢い子だわ! 何か持ってたかしら……」


「野良猫に餌付けすんなや……」


「へっ? ……今……何処から……」


「ニャアーン」


「き、気のせい……かしら。あ、あったわ! 飴ちゃんが!!」


「碌なもん持ってねぇな……」


「えっ……? 誰よッッ! ……空、耳かしら……。……今日は変な日だわぁ……」


「ニャアーン」


「あ、はいはい! あげましょうねぇ」


「要らねぇっつってんだろーがッッ」


「ヒィッッ!!」


「猫に飴とかあげてんじゃねぇよ! 碌なもん持ってねぇ癖に、野良猫に餌付けすんじゃねぇッッ!!」


「ヒッ……ヒッ……」


「馬鹿か、お前は。今までもそうやって飴を与えてたんだろうがッ! 聞いてるぞォ……お前の与えた飴で糖尿病や肝不全で亡くなった仲間猫がよォ……。その怨み……俺がッッ!!」


「ば、ば、化け猫ォオオーッッ」


「そうさ、俺は化け猫だッッ! 仲間の怨みを晴らす為に遣わされたッ……」


「ヒッ……ヒィイイイーッッ!!」


 腰を抜かしてた癖に、すげえ速さで逃げ帰っちまったよ、くそッ! 俺の考えた物語は最後まで聞いていけってんだッッ!!

 な? 見たろ? ヒーヒー言わせながら平和的に解決できる事もあるんだ。え? 平和的じゃないって? へ、平和的じゃねーかッッ!! ……ったく、飴なんか猫に与えようとするからだ。これに懲りてヤツも飴を与えるなんてしなくなるだろうよ。まぁそんなんでさ、必ずしも力でねじ伏せる必要はねぇんだよ。じゃあ、任務も無事に遂行できたし、とりあえず帰るか!


 帰ってから、時士にセバスチャンだった旨を伝えると味噌汁を吹き出してたけど、任務としては成功したんだろう。成功報酬の〝ニャロン〟を貰えたからな。


 ニャロンってのは筒状の形をしてて、外側はカリカリ、中身はクリーミィな高級猫用オヤツになんだよ。桜々が言うには帆立の貝柱とササミ、それに栄養価の高いものまで入ってて、一袋十三gで三百五十円する高級なモノらしい。これを買うに値する事を引き受けてくれるんだから当たり前の事だと言って、任務後は必ず用意してくれているんだ。なんか……そういうのって、嬉しいじゃんな! いつもありがたく思っているよ。だから、押上家は好きなんだ。ここに貰われて、最初は反抗的にしていたけれど……今はとても幸せだと感謝してる。だから俺に出来る事があるならば、力をいつでも貸したいと、そう思ってるんだ。


 少し……また押上家の内情が分かったか? いつまでもこの押上家の一員でありたいと思う俺の気持ちを理解してくれたのなら、ありがたいな。良い人間ばかりなんだよ。その代わり、外から悪党の攻撃があるもんで、大変っちゃ大変なんだが……、絶対に守りたい俺の大切な家族なんだ……。


 んぉ? あ、帰るんか? ……またな! 次も……気が向いたら、また少し話をしてやるよ。じゃあ、気ィつけて帰れな! シーヤ!!

お読み頂き、ありがとうございます!

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