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インターミッション 夏丸とおかゆ

夏丸目線でお読み下さい(^^)

 おう、また来たのか! 俺、今から待ち合わせなんだよォー……。今日は友だちっつーか、俺の新しく出来た弟と待ち合わせしてっからなぁー……。まぁせっかく遊びに来たんだから、仕方ねぇかぁ……。その代わり、黙って見守っとけよ? おかゆがビックリするかもしれねぇからな。野良時代の癖がまだ抜けきれてなくて、知らない人間には威嚇するかもしれねぇから許してやってくれな。

 

「夏丸にいやーん」


「おう、おかゆ! 来たか」


「ギニャッッ!? そ、そいつは?」


「あー……まぁ俺の知り合いっつーか、何もしねぇ人間だから動かないし安全だ。気にするな。それよか、おかゆ、この前は話を聞かせてくれてありがとうな! お陰で事がうまく運びそうだ」


「にいやん、うまくいったの? 良かったぁ。……でも、あんな事で良かったの?」


「おう、バッチリだったよ。しかし、佳乃子ってヤツは分っかんねぇヤツだな。假谷のどアップスマイル写真眺めるとか……。普通に……」


「『良い女は磨いて待つのよッッ!』ってこの前は言ってました」


「ブフォッ……クククッ。い、良い女か……」


「鏡を見て、睨めっこしながらでしたけど……、僕に言ってたんでしょうか……?」


「んグゥッ……ブハッ、アッハッハッ! 自分に言い聞かせてたんだよ、そりゃ。なるほどなぁ、時士が可愛らしいって言う訳だ! アハハハ」


「そうなんです! 佳乃子さんは本当に可愛らしい方なんですよ。僕にも優しいし、ぶっきら棒だから、ちょっと誤解される事もあるんですけど……」


「おかゆは佳乃子が好きなのか?」


「はい!」


「そうか……。あ、そうだ! 今日はお前が情報をくれたお陰で、成功報酬を貰えたから、お裾分けに来たんだ」


「成功報酬って、もしかしてッッ!? あのッ幻の高級……」


「ああ、ニャロンだ!」


「夏丸にいやぁーん!!」


「そんなに嬉しいか?」


「うん!! 前はカリカリとか……昔を思い出すから嫌だったんだけど、夏丸にいやんが美味しそうに食べるから、僕も欲しくなっちゃって……。一粒貰って、最初は恐る恐るだったけど、エイッて食べたら口の中がパァアアーッって!」


「美味さが広がっていったってか?」


「そうなの! あれは何が入ってるの?」


「桜々が言うには、帆立の貝柱とからしいぞ?」


「帆立?? それが美味しい理由なの?」


「俺も詳しくは分からないけれど、おかゆが気に入ってくれたんなら嬉しいよ。カリカリ系の食べ物も口に出来るようになったしさ」


「夏丸にいやんが食べているものに間違いはないから、安心して食べられるもん! あの後も夏丸にいやんの分まで僕にくれてありがとう。いっぱい食べれてすごく嬉しかった! でも、アレ高級って言ってたから……僕はなかなか貰えないし。夏丸にいやんは凄い猫だから、僕は多分、買ってもらえないんだろうな……」


「それは違うんじゃないか? お前がカリカリ系が嫌だと分かっているから、出そうとしないんだよ。家に引き取られた時、出されたキャットフードとかには全く手を付けなかったんだろう?」


「……苦しくなった時と同じ臭いだったから……」


「だからな、假谷や佳乃子にも分かってもらう為に今日、持って来たんだ!」


「え? それはどういうこと??」


「この後、袋は破って渡してやるから、假谷や佳乃子の前でニャロンを食べる姿を見せるんだよ」


「でも……これは夏丸にいやんの物で成功報酬って……」


「任務が成功したのもお前のお陰だからさ! それに俺がこれをどう使おうと、俺の勝手だろ? ……おかゆにもたくさんの美味しいものがあるんだと知って貰いたいんだ。そしてたくさん食べて欲しい。お前はまだ若いから分からないかもしれないが、猫人生ってのは短い……それこそあっという間なんだよ。この世に美味しいものはまだまだたくさんあるのに、それを知らないままでなんて、いて欲しくないんだ……。お前にはたくさんの美味しい物を知って、幸せに過ごしていって欲しいんだよ……」


「夏丸にいやん……。なんで僕にそこまでしてくれるの?」


「なんでかなぁー……。昔、俺が助けて貰った(ひと)におかゆが似ているからかなぁ。……それと俺の可愛い弟だからかなッ!」


「夏丸にいやぁん……。僕……、僕、夏丸にいやんが大好きィー」


「わーかってるよ! たくさん食べて、大きくなるんだぞ? また違うものも持って来てやるな! 今度は〝ニャール〟ってのを持って来てやるよ」


「うん! うん!! ありがとう、夏丸にいやんッッ」


「じゃあ、ホレッ! 破ってやったから、必ず家に持って帰って、假谷や佳乃子がいる前で食べるんだぞ? 良い匂いがするから、我慢するんだぞッッ!? ……ってオイ、ヨダレが出まくってんじゃねぇか……」


「……夏丸にいやん……僕……僕……、もう無理かも……」


「オイオイ、待て待てッ! だぁーッ!! ヨダレが垂れすぎだッッ!! 分かった、ちょっと待っとけッ! 袋を折って匂いを閉じてやるから、ちょっと待て!!」


 そうして俺は破れている所を被せるようにして、折って渡してやったのだった。


「これなら大丈夫だろ?」


「……まだ……良い匂いが……」


「それは我慢しろッッ!!」


「でも……でもォ……」


「おかゆ、お前は出来る子だッ! 家までちゃんと持ち帰るんだぞッ!! 必ず任務を成し遂げろ。假谷家でもニャロンを買って貰えるようにする為だッッ、分かったかッ!?」


「うっ……ハイッ、頑張りますッッ!!」


 そうしてヨダレを横から少し垂らしながらも、必死に持ち帰っていったよ。あの我慢する顔も可愛いんだよなぁー……。

え? それは分かるって? だよなぁー……あのクリクリした大きな目を見開いて潤ませながら、鼻穴が全開の……フフッ、必死に我慢してる状況がヒシヒシと伝わってくるからな。可愛い顔をしてくれるよ、ほんと……。……さて、俺たちも帰るか! 他の人間に見られないように、少し後ろを歩いて来いな。


 俺は帰りの道すがら、見覚えのある後ろ姿を目にした。


「オイ! 倭久か?」


「おー夏丸! 散歩の帰りか?」


「あーまぁ、そんなとこだ。お前は?」


「俺は墓参りからの帰りさ」


「墓参り?」


「ああ……」


「誰の?」


「……俺の母さん……かなぁ」


「はぇ!? お前、母さんがいたなんて……」


「猫のね……」


「ああ、そういう……」


「お前、小さかったから覚えてるかな? 夏丸を助け出したあのクソ施設にいた白猫のミーヤさん……」


「ミー母さんッ!?」


「覚えてたか?! 三ヶ月くらい前かな。偶然再会してさ。彼女は賢かったし喋れていたから、時々彼女のところへ行ったりして、いろいろと話をしていたんだよ。それこそ、人間も猫も分け隔てなく接してくれて、威厳があって、でも穏やかで心温まる良い(ひと)でさ……」


「ミー母さん、亡くなってたのか……」


「二ヶ月前に病気でな。再会した時にはもう……あまり具合も良くなくてな。病院にも行こうって何度も言ったんだけど、ここを離れたくないって……。それ聞いてさ、なるべく過ごしやすくなるようにと思って、寝床を作ったり、ご飯を持って頻繁に会いに行ったりしててさ。……亡くなった後は俺が墓を作ったんだ……」


「……そうか。……今度行く時は俺も一緒に行ってもいいか? ……俺、世話になったんだよ。実験でいろいろな所を傷付けられたんだけど、実験後に必ず檻越しに舐めに来てくれてたんだよ……」


「彼女は優しかったもんなぁ……。あの施設から逃げ出していたミーヤさんはそのまま外の世界で暮らしてたらしくてさ……ここいら近くで再会したんだけどな」


「そうなのか!? 俺は連れ出された後は意識がなくて、暫くはケージから出なかったから……周りにいた仲間たちがどうなっていたかなんて知らなかったよ……」


「プッ、確かにッ!! お前は暫く……五ヶ月くらいか? 俺がいくら呼び掛けてもケージからは出て来なかったもんなぁー」


「嫌いだったんだよ、人間がなッッ」


「まぁ……その気持ちは分かるさ。だから、時士さんも待ってたんだろ?」


「……まぁな。そういやお前、……時士からしょっ中ハードに絡まれてるけど、大丈夫なんか?」


「あー……あれは本気じゃないよ。猫の戯れ合いと同じようなもんだよ」


「お前……時士をナメてんのか?」


「何言ってんだよ! 違うよ、違う。時士さんはさ、本気でそんなふうには思って絡んではいないって事だよ。きっと分かってくれているとは思うんだ。それこそ嫌なヤツならさ、無視しといて追い出せば良いのに、それは絶対にしないもんね。だからコミニュケーションを取ってくれてるんじゃないかってさ」


「分かってんなら、お前も対処とか対応とかをもう少し考えろや……いつも怒らせてばっかりでよォ……」


「空生と結婚するまでは比較的優しかったんだけどなぁ。十年も居候でいたのにおかしいよねぇ」


「確かにな。お父さんって言葉が嫌なんじゃねぇか? 倭久もさ、わざわざ怒らせると分かっているのに、なんでいつもお父さんって呼んでるんだ? 名前で呼びゃいいんじゃねーか」


「俺……最初に時士さんを『お父さん』って呼びたいんだ。そして返事をして貰いたい。俺……お父さんなんて居なかったし、そう呼べる人も今までいなかったからさ。俺がいた施設から引き取って、生まれ変わらせてくれた恩人だから……。これから生きていく中で、俺がお父さんと呼びたい唯一の人で……でも、そう呼んで許して貰えるにはどうしたらいいのか、全く分からなくてさぁ……」


「あー……んー……そうだなぁ、お前がアンサーを間違えないように気を付けて喋っていったらいいんじゃねぇか?」


「アハハ、そうだな! 考えなしで喋ってるから、そうなるのかなぁー」


「笑い事じゃねぇっつーの。周りの迷惑とかも考えろよ?」


「ごめんなー! 俺には何が正しい態度で言葉なのか分かってなくて。かといって考え過ぎて反応出来なくなるのもの違うしさぁ……」


「空生はなんて言ってんだ?」


「あー……何も言わないけど、なんか不安そうにはしてるかな。俺が離れていっちゃうんじゃないかって感じでさ。そんな事は絶対ないのにな?」


「馬鹿か、お前は! 惚れた女を不安にさせんじゃねぇよッ」


「えっ!? そうなのッッ!? 世間ではそうなの!?」


「ダメだ、こりゃ……。お前がしっかりしねぇと、空生の方が離れてくんじゃねぇか?」


「えッ!? それはヤダッッ」


「だったら、お前がしっかりと考えなきゃダメだろうが! 自分ばっかの事を考えんじゃなくて、たまには空生を思いっきり甘やかせてやれよ? アイツ、結構、気ぃ強そうに見えるけど、意外と脆そうだから心配でよ……」


「あー確かに。涙もろいとこもあるから……」


「んおぁッ!? 泣くのか、アイツッ!」


「おー……部屋ではよく泣いてるけどな……」


「そ、そうなんか……。意外だわ……」


「空生も俺との事を気持ち良く認めて欲しいんだろうけど、……俺、半能力者だからさ。時士さんがなかなか認めてくれないのは、……そこもあるのかなぁってな」


「そんな事……時士は気にするかぁ? 逆にいつまでもその事に引け目を感じて、気にしてる倭久を見透かしてんじゃねぇのか?」

「えっ……」


「時士ってさ、半能力者だろうが、一般人だろうが気にしてねぇ感じだけどな。嫌がらせとかハードな絡みはまぁお前の言う通り戯れ合いかもしんねぇけど、〝お父さん〟って呼ばせねぇのは、今のお前がそういう引け目が見えるせいで、その引け目が無くなったと感じた時に許すんじゃねーのか?」


「あー……なるほど。……思い当たる節があるわ、俺」


「じゃあまずは、まぁその引け目を無くす努力をしてみろや」


「そうだなぁ……。まだまだ押上家のメンバーには敵わないからな……」


「何を言ってる、馬鹿か、お前はッ! 倭久ももう押上家の立派なメンバーだろうが!! 今、言ったばっかじゃねぇかッ、引け目を感じるなと……ったく! ……そういう所だぞ、多分ッ!!」


「あい! ご忠告ッ……ありがとうな、夏丸!」


「全く世話が焼けるよ、お前はッ」


「済まんねぇ、兄弟よ!」


「ハハッ、仕方ねぇなぁー」


 そうして二人して並んで自宅に帰ったんだ。久しぶりにゆっくりと倭久と話せたから面白かったけど、ミー母さんの事は残念に思った……。空生が泣くのも意外だったけど、弱みを見せる事の出来る相手がいるのなら、少し安心したかな……。


 お? もう帰るか? 今回は長く連れ回して悪かったな! こんな話で良ければ、また聞きに来いや。じゃあ、またな! シーヤ!!

お読み頂き、ありがとうございます!

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