一室目 押上家の自己紹介
ようこそお越し下さいました。
マンション、YADOCALIのオーナー兼、管理人をしております、私は押上時士と申します。
本日、貴方様がお越し下さる事は存じておりました。お越し下さり、ありがとうございます。
何となく入ったのでございましょう? どうやら貴方様は……刺激がなく、つまらない日々を過ごしていらして、楽しみがないッ! というお困りを心からお叫びになったご様子……。ですので、私どもで導かせて頂いた次第でございます。あ、どうか驚かれませんよう、どうぞお気を楽にされて、読み進めて頂ければ幸いに存じます。
このマンション、YADOCALIには私の他に、家族である五人の能力者が住んでおります。住人の皆様はご承知の方もいますが、ご存知無い方もいらっしゃいます。
因みに、私の能力は救済者察知の能力と、少しだけ現状と予知の把握能力が出来るのでございます。よく対峙した方々から、〝金髪頭の優男メガネ〟と容姿を揶揄われる事がございますが、決してイキっている訳ではございませんので、誤解なきよう……。
それでは、まず私のスィートハニーである妻の押上桜々をご紹介致します。彼女はクールビューティーという言葉が似合う程の美人さんでして、艶やかで綺麗なダークブラウンの髪をしております。冷たそうに見えるのですが、家族には激甘な一面を見せます。そのギャップがまた良いッッ!! そして四十五歳には見えぬスタイルと美貌ッッ! 弛まぬ努力家で素晴らしいのでございます。
能力としては、指先からコントロールボールを作り出し、相手の頭へと被せ、精神を操作する能力を持っています。彼女の手にかかれば他人の精神を操るなど容易い事でして、クリーンアップにリセット、更には極楽から地獄までのどのレベルでも快楽や苦痛をも与える事も出来るのでございます。凄いでしょ、うちの奥さんッッ。私の永遠の推しでございます!
さて、次に我が愛娘、長女の押上空生をご紹介致します。親バカではございますが、彼女も奥さんと同様のとても綺麗な顔立ちをしていまして、髪は私譲りの漆黒色の美人さんなのですが、こちらは私の前では殆ど表情がなく、なかなか笑ってくれません……そして、会話も少ないのです……。ですので、私は今、非常に扱いに困っておりまして、空生が結婚してからは益々扱いが分からないッッ。この状態は小学四年生の頃からでございまして、二十五歳になった現在まで……まだ反抗期なのでしょうか? 結婚しても同居をしておりますので、洗濯物は今も一緒に洗って貰えていますし、怒ってはいないようなのですが……。「お父さんの物と一緒に洗わないで、臭いからッッ」なんて言われた日には、私はどうしたら良いのでしょうか。日に日に強くなっているのではないかと思われる加齢臭にもかなり気をつけてはいるのですが、そんな日が来るのかもしれないと思うと胸が張り裂けそうになり、それが今は、私にとって何よりも恐ろしいのでございますッッ!!
申し訳ありません、娘を愛し過ぎるあまりに取り乱してしまいました。話を戻しまして、空生の能力は、瞬間移動する能力となります。いきなり移動した時には驚きました。押上家の子どもは十歳で能力が発現致します。能力は一人につきひとつで、ちょうど二分の一成人式と言われる時期辺りに発現を致します。えっ、私の能力が二つですと? それに私譲りの髪色だと違うですと?? ……よくお気付きになられました。詳細は追々わかる事と思いますので、今は省略させて頂きますね。どうぞ悪しからず……。
とにかく空生は十歳になったその日の朝に、何故かある組織へと瞬間移動をしてしまい、一悶着を起こした事がございます。あれは桜々さんと慌てました、ほんと。まぁ、大した組織ではありませんでしたからね、早々に片付けてしまいましたけど。そんな〝じゃじゃ馬〟な一面も隠し持っております。
えっ? 先を見通す能力もあるくせに何故、予知が出来なかったのかですと? それは能力者に能力者の力は使えないからでございます。一般の方でありましたら使える能力も、能力を持った者には効かないからでございます。
次に、憎き婿養子の押上倭久。……栗色の髪にまぁまぁの顔をした小僧はあまり紹介したくはないのですが、一応、今のところ、空生のパートナーでありますからね。結婚……えぇ、結婚はしましたけどね、私は認めてないのですッッ!
この小僧は空生がある組織から助け出した爆力の能力を持つ半能力者。半能力者とは後天的に与えられた能力者であるからございます。後天的というのは、所謂、研究者たちに実験され改造させられた事がある者を指します。そうした研究をしている組織は世界でも数多く存在しますからね。普通の方は知り得ない組織ですが、私たち正統な能力者たちの間では知っていて当たり前の事柄であります。故に、組織も私たちと手を組みたがりますが、正統ではない組織と正統性のない研究はお断りを申し上げている次第です。その為、敵対する組織もありますが、友好的にこちらに協力をしてくれる、もしくは協力するウィンウィンな関係の組織もあるのです。
どうでも良い話で大きく逸れてしまいましたが、引き続き、うちの長男の押上幸雅をご紹介致します。十七歳の難しいお年頃でありますが、髪色は桜々さん譲りの美しいダークブラウンに、顔は父親譲りのイケメン眼鏡であります。難しいお年頃なので、少しキツい言葉や厳しい言葉を使いますが、根はとても思い遣りのある優しい子なのでございます。この不甲斐ない父の味方をし、理解もしてくれる子でありまして、幸雅の優しさに私はいつも救われておるのです。そして何事にも勤勉な息子でもあります。
幸雅の能力としては、記憶の分析と操作の能力となります。相手脳内の中心を捉え、新しい記憶が海馬に到達したものや古い記憶として大脳皮質にファイルとして送り込まれたものを操作をしたり、また相手の過去記憶を読み取り、自身の脳へ映像として送る事も出来るのでございます。記憶の改ざんや塗り替え、消去なども行う事が出来ます。脳の配置や記憶操作方法などを理解し、賢くなければ出来ない能力でございます。うちの長男、素晴らしいでしょう?
最後に、可愛い次男の押上幸慈をご紹介致します。幸慈は十歳の可愛い可愛い盛りの末っ子でございます。漆黒の髪色は私譲りですが、祖父譲りの大きな瞳が綺麗で美しく、いつもニコニコしていて、愛嬌たっぷりのイケメン予備軍であります。幸慈の笑顔はピカイチでして、家族の誰もがこの笑顔を見ると、癒される程の威力を持っているのでございます。十歳にはなりましたが、まだ能力の発現はしていないのであります。桜々さん曰く、能力が現れない事を最近はすごく気にしているようなのです。私たちは慌てなくて良いと思っているのですが、幸慈にとってみたら、そういう訳にはいきませんよね。でも、現れ方もそれぞれですから。幸雅の時には捕まった母を救う時に現れましたから、まぁそうした何かのキッカケで現れるかもしれませんしね。慌てておりません。
以上が押上家の能力者となります。次にマンション内のご説明を申し上げます。こちら二階フロア全てがが押上家の自宅となっており、三階以上の全室は賃貸用のマンションとなります。一階には空生と倭久の二人がジムを経営し、地下にはフフフ……秘密のトレーニング室がございます。こちらは一般の方は立ち入り禁止でございます。地下に下りるルートは二階の自宅からしか行けません。
そして三階以上には、ジム前にあります認証インターホンを使い、ジムの前廊下の奥の、少し分かりづらい場所にありますエントランスにて、認証エレベーターを使わなければ上にはあがれません。必ずジムの前を通らなければ上がれないようになっていまして、セキュリティーは万全となっております。宅配はジム前横にございます置配万全ボックスに入れるようになっており、また各部屋のベランダはサンルーム仕様となっています。最強化網戸に最強化ガラスを使っておりますので、そんじょそこいらの輩では破り入る事は出来ません。このYADOCALIには守らなければならない方々がお住まいになられますから、当然の事であります。
そして、YADOCALIに住まわれる方々には守らなければならないルールがございまして、隣人トラブルは起こさない! お互いを思いやり、気持ち良く過ごす事! そして、各階に住まわれる方々は更新可能な通常の二年契約となりますが、最上階のみ……ずっと住む事は出来ない物件となります。最上階の住まわれる方とは最長一年間のみのご契約、更新は不可となります。空き室は時折ございますが、誰彼と住める階ではないのでございます。
このように一風変わった不思議なマンションですが、住まわれる皆さんはルールをご理解下さり、必ず守って下さいますので、住人同士は仲良く過ごしております。最上階の方との一年後の別れは辛いものですが、出て行かれた皆さんはお元気にお過ごしのようでありますし、安心している次第でございます。
ニャアーん! ゴロゴロゴロ……。
おっと、失礼! これは私とした事が……。そうでしたね、貴方も立派な押上家の一員でございましたね。こちらのお猫様は我が家の愛猫、押上夏丸と申しまして、雄でございます。現在は……多分、三歳くらいでしょうか。精神年齢が高く、詳しい実質の年齢は判りかねますが、落ち着いた雰囲気のある良い子でございます。
普段はこのように普通の猫のフリをして自由気ままに暮らしておりますが、……意思疎通のできる喋る子なのでございます。夏丸がいた組織から押上家への嫌がらせが酷く、最後には押上家の逆鱗に触れてしまいましたので、仕置きへと向かったのでございます。そこでは動物の能力研究や虐待的な躾を行っていたようでございまして、あまりの劣悪な環境と、ある方から瀕死だった夏丸を助けて欲しいとお願いをされ、託されましたので助け出した次第であります。最初は単語程度ではありましたが、今は流暢に喋りますし、激オコしますと……まぁ、世にも恐ろしい姿へと変わってしまうのであります。〝ニャール〟を舐めさせると変化は解ける仕様でございまして、それ以外はこの茶と黒のベンガル模様が愛らしい猫姿であります。
と、まぁこのように六人と一匹の能力者たちで押上家は構成されており、チームワークは抜群な家族なのであります。あ、倭久ですか? まぁ使える程度にはなってきましたからね。そこは認めておる次第であります。ただ、空生を奪っていった憎き小僧に違いありません。私だって、空生と仲良くしたいのにッッ!! 許せないんです、二人でイチャコラと! 永遠に邪魔してやるんですッッ。時々、行き過ぎて、桜々さんに怒られてしまうのですが、その怒る姿もまた良いッッ! 怒られたいッッ!!
……失礼ッ! そのような関係ではありますが、詳細はまた追々と。私と共に読み進めて頂けましたら、ご理解頂けるかとは思いますので、どうぞ末永くご愛読頂けましたら嬉しく! よろしくお願い申し上げます。
お読み頂き、ありがとうございます!
【サンデガール】、【アーティフィシャルヒューマン03〜Artificial human〜】も掲載しております。そちらもお読み頂けたら嬉しいです(^^)
今後ともよろしくお願いします<(_ _)>