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おしゃべり銀行8

作者: すずめのおやど


 

  千代まま編


「何言ってるの!ちゃんとお葬式やってあげなきゃ駄目じゃない!!」

千代ままは千代ぱぱに喝を入れたが

「家に帰ったならさ、2人で思いっきり泣こう。お葬式で泣かずにすむようにね。」

と、すぐに言い直した。家に帰ると

「こんなことってあるかよ!」

と怒りをどこにぶつけていいかわからなかった。看護師さんも我儘な千代によくやってくれた。先生も日曜返上で頑張ってくれた。こんな哀しいことはない。

 ひとしきり泣いたら、やらなければいけないことが沢山あった。千代ままは千代の友達に会場をラインしなければならなかった。トークバンクのママにもラインで会場を送った。

江東区住吉に住んでいるのに、なぜ桐ヶ谷斎場で火葬して、碑文谷会館でお葬式なんだろう。千代が思い入れがあったのかなと思いながら、病院から持ってきた荷物を片付けた。

千代ままの実家にも連絡をした。

昨日、千代に

「おばあちゃん達に会いたい?」

と聞くと

「哀しくなるからきかないで。」

と、横を向いて答えた。

 おばあちゃん達は可愛い孫が亡くなったということを受け入れることができないようだった。とりあえずお葬式をすることを伝えた。折り返し電話がきて、次の日碑文谷会館までくるから、そこで待ち合わせをすることにした。

もう色々なことがありすぎて、夜はクタクタになって、早めに寝てしまった。

 病院で千代を預かってもらっているので虎ノ門まで出かけて行った。

千代は相変わらず眠っているようだ。

業者さんが千代を迎えにきてくれて、車に乗せると看護師さんや先生方が出てきて見送りをしてくださった。何度も頭を下げてお別れをした。


 ちょうど碑文谷会館に着くと、おばあちゃん達が来ていた。千代を安置させて、おばあちゃん達に面会してもらった。おばあちゃんはすぐに千代にすがりついて、

「千代ちゃん、おばあちゃんだよ。お願いだから目を開けておくれよ。おばあちゃんが来たんだよ。」

と泣きながら何度も頭を撫でて泣いていた。


 千代ままの叔父2人と兄、おばあちゃんと千代ぱぱの弟が泊まることになった。こんなに大勢のお客さんは初めてなのでありったけの布団と毛布、大きなバスタオルも使ってもらった。


次の朝、さあ、お葬式だ!とみんなでバタバタと礼服に着替えた。そして、おばあちゃんの家の車にみんなで乗って碑文谷会館に着いた。

千代は相変わらず眠っているようだ。

千代の会社の方々がみえた。みんな泣いている。千代が生きていれば

「この方がいつも話している美人さんの受付の方だよ。」

とか、そっと教えてくれたのに残念だと千代ままは思った。

いつも愚痴っていた、先輩の方が泣いている。

それから、知らない友達がたくさんきてしまい、担当の益田さんが気を利かせてお料理を増やしてくれた。


千代をお棺にいれて、好きだったフィギュアや本を入れてあげた。友達もそれぞれ入れてくれて、お棺がいっぱいになった。幼稚園から仲良しだった美里ちゃんが立ってられないほど泣いていて気の毒なほどだった。美里ちゃんは美人さんで千代の自慢の友達だった。


マイクロバスで桐ヶ谷斎場に行き、火葬してもらう。ここでは、何をしてもらうにもチップがいるので、みんな業者さんがやってくれて助かった。

和尚さんにお布施を渡すのも作法があって、みんな益田さんが教えてくれた。何もかも知らないことばかりだった。

火葬がすむと、もう千代の顔をさわることもできないんだと、千代ままはとても辛かった。

 碑文谷会館に戻ると食事になった。

喪主の挨拶では千代ぱぱが頑張って挨拶を務めた。

美里ちゃんは千代の霊前でビールを献杯しながら痛々しいほど泣いている。

トークバンクのママが

「和やかないいお式だったじゃない。千代ちゃん喜んでいるよ。」

と千代ままに声かけた。

「きてくれてありがとう。」

「千代ちゃんのおばあちゃん方はいつまでいらっしゃるの?」

「これで一旦住吉に寄って帰っちゃうのよ。」

「そうだ、ママ、よかったらおばあちゃんの車に一緒に乗って行かない?」

と千代ままがいうと快諾してくれた。

式も滞りなく終えて、みんなで車に乗り込み、虎ノ門にある病院の前に行き

「ここで入院していたのよ。」

としばらく眺めていた。

「もう来ることがないんだな。」

と思うと寂しくなった。

ここにくれば

「おかあちゃん!!」

って言って千代が飛びついてきてくれるような気がする。

今度こそだっこしてだっこして、離さないのにな…と千代ままは思った。

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