6.冒険者になろう 前編
私は、ムエルトス様の洞窟の中で目を覚ました。
ムエルトス様は、すでに隣にはおらず、洞窟の中は、がらんとしている。
私はムエルトス様の足音が聞こえてくる洞窟の奥へと視線を向けた。
ムエルトス様は、口に風呂敷のような布を咥えてこちらまでやって来た。
ムエルトス様は、無言でその風呂敷のような布を私の目の前に置いた。
中からは、様々な種類の洋服と金貨、銀貨、銅貨が数十枚が出てきた。
「……お金?」私がポツリと呟くと、『ああ』とムエルトス様は答えた。『銅貨の名は、ルイスト銅貨。十ルイストとも言われる。そして、十ルイストが千ルイストになると、ルイスト銀貨になる。そして十万ルイストになるとルイスト金貨になる。ごく稀に千万ルイストをルイスト白金貨にすることがある。俺の洞には、山ほどあるんだが、使うことはないだろう?溜まっていく一方なんだ。』そうムエルトス様は言ってため息をついた。『これを持って町に行け。暮らすことぐらい出来るはずだ。そのかわり、俺も連れて行け。』ムエルトス様の言葉に私はびっくりした。「で、でもムエルトス様、大きいです!」私は反射的にそう言った。するとムエルトス様は、徐々に体を小さくさせて最終的には両手で持てる大きさになった。『これなら問題あるまい?』ムエルトス様は、ニヤリと笑って言った。
『ああ、それと俺のことは、ロディアスと呼べ。敬語もなしだ。それでは、俺が町には入れない。俺は、町に入るためにお前のテイムモンスターになるんだからな。』ムエルトス様、ううん、ロディアスはそう言った。
「ロディアスって言うから、私のことをナギサって呼んで!」私がロディアスにそう言うと、『なぎさ、か。懐かしい名だ。いいだろう。なぎさと呼ぼう。』ロディアスは、そう言ったのだった。
やけに流暢な日本語のようになぎさと言ったことで、私は大河を思い出し喜びに心が震えた。大河が久しぶりに名前を呼んでくれたように感じてしまったから。
「私が出来るような仕事ってある?」私はロディアスに聞くと、『冒険者はどうだ?なぎさは、Aランク冒険者の実力はありそうだからな。』とロディアスは私に提案してくれた。
「いいわね、私、冒険者やるわ。」私は、そうロディアスに宣言した。