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プロローグ




私は命の灯火が徐々に消えていくのを静かに感じていた。私の名前は、夜月(よづき)なぎさ。

今月で18歳になる。だけど18歳にはなれそうになかった。何故なら、私は病気を患っていて、高校3年生の秋に悪化して、病院に入院したからだ。その時に病院の先生からもう半年ももたないと余命宣告されたしまったのだ。

今の私は寝ている時間の方が起きている時間より多くなり、お見舞いに来てくれる人に会えないことの方が多くなってしまった。

だけど、中学の時から付き合っている西野 大河(にしの たいが)は、どうしてかわからないけれど、起きている時間に毎日来てくれて、無口な彼に似合わず、学校での出来事を淡々と話してくれる。でももうそれはないだろう。今日が高校の卒業式の日であるから。でも、今日も来てくれる。私的には、卒業式にちゃんと行きたかった。私は、病気で高校に行けなくなったから、留年することになったけど、大河の制服姿を見たかった。(大河、今どうしてるんだろう。もう、卒業式終わった頃だよね。他の女の子と一緒にいたらどうしよう。はやく会いたいよ、大河…。)私は泣きそうになって、涙を堪えるように目を閉じた。



ガラッ!!



涙を堪えてしばらくしていると扉を開ける音が病室に響いた。

「大河……?なんで…ここに…?」私が大河を涙で潤んだ瞳で見つめながら聞くと大河は相変わらずの無口で無表情のままこちらにやってきた。

大河は制服姿のままで、卒業式のすぐにここへやってきたことがわかった。

「どうでもいいだろ。」大河はぶっきらぼうに言って私の伸びきった髪を手で梳きながら、「なんて顔してんだ。」と言うと目元の涙を繊細なガラス細工でも触れるかのように優しく指で涙を拭ってくれた。「大河、ごめんね。」私が言うと、大河は眉をぴくりと動かした。

「どういう意味だ。」大河はわからないというように言った。

「だって私、大河が来てくれないと思ったの。私より可愛い人はいくらでもいるし、病気で病院からも出ることが出来ないもの。それに…大河は、とても格好いいから、女の子たちからモテるでしょう?私捨てられるかもしれないって…怖かった。私は大河を信用してなかったってことだもの。」私は大河に俯いたまま言うと、

「それは、信用してない訳じゃないだろう。」大河はそう言った。

「どういうこと?」私が大河に聞くと、

「それは、嫉妬というやつだ。たしかに俺は式が終わって何人かの女に告られたがな、俺が好きなのは、お前だけだ。」大河はそう言うと私の髪にキスをして病室を出て行った。

私は、大河が病室を出るとベッドの上で身悶えしてしまった。その日、不安がとれてかぐっすりと眠れた。


次の日、私はなんとも言えない息苦しさを感じていた。しゃべるのもきつくて、しゃべると途切れ途切れになってしまう。先生は、大丈夫だと言ってくれたけど、もう長くないような気がした。

「大…河……た…い…が…来て…来て…お願い…大河…。」私は、途切れ途切れに言うけど、その声は、か細く病室にすぐ消えていく。「最後に…大河……あなたの…声を……聞きたい。」そう呟いた。



ガラガラガラ




ふたたび扉を開ける音がした。

「…たい…が…。」私はちっちゃい声で彼の名前を呼んだ。「僕もいるよ。」そう言ったのは、私の幼馴染。橘 湊(たちばな みなと)。大河と同じ高校の同級生。大河の1番の親友でもある。「俺が呼んだ。」大河は無表情のまま言った。大河なりの気遣いだった。「大河……もし……私が……死んで……生まれ変わっても……また……好きに……なってくれる…?」私は途切れ途切れのちっちゃい声で大河に聞いた。

「どの世界に生まれ変わっても、俺はお前を見つけ、好きになってやる。」大河はそう静かに言った。「ありがとう。…みな…と……あなたも……また………友達に……なってね……。」私は湊ににっこりと微笑んで言った。「も、もちろんだよ。」湊は慌ててそれでもうれしそうに言う。

「大河……一回……歌って……くれた、歌を……歌って?」私は大河に言うと、「ああ。」と言って、歌を歌っている。不思議な旋律を奏でるその歌は病院の病室に静かに響いていく。私は大河の手を握って目をつむり、その歌を聴いていた。

息苦しさは、いつの間か消えていて、そのかわりとても強い眠気に誘われた。

これでこの世と別れるのだと思い、薄く目を開ける。大河と目があった。私は安心して、永遠の眠りについた。







私は、知らないところで目が覚めた。

真っ白な空間にいることは分かるもののそれ以上は何も分からない。

私は、起き上がろうとするけど、起き上がることは出来ない。

私の手が小さい赤ちゃんの手になっている。

どうやら私は、生まれ変わっているようだった。





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