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完全歩合制

石畳の上を馬車が進む、左にはレンガ造りの建物が並んでいた。右には大きな水路があり、その先にはまた石畳の道がある。


やがて馬車は中央に大きな時計台のある広場にさしかかった。水路はその手前で左右に分かれており、手前にそれを渡る橋があった。


その大きな時計を見ると地球の短針と長針をつかった時計と同じだった。オレは手元のスマホの時計と見比べる。午前11時5分、うん、あってる。


橋を渡って時計台の広間に入り、馬車はそれに面した大きな建物の前で止まった。


馬車から、オレとリンダが降りる。


「では、クリス、デイジー、馬車と荷物の運搬、まかせたぞ。」


「「はい。」」


クリスさんとデイジーちゃんを乗せて、馬車は建物の裏手の方に回っていった。多分そっちに馬車を停めるスペースがあるんだろうな。


オレは改めて建物を見上げる。レンガ造りの建物は4階建てになっており、学校の校舎くらいある。入り口には天秤が描かれたエンブレムが掲げられていた。


「ここが商業ギルド?」


「そうじゃ、まずは、マサルの登録をするぞ。」


「ああ。」


リンダについて建物に入ると、中はホテルのロビーのようになっていた。


正面にフロントがあり、手前にいくつか机とイスが配置されている。右手には雑貨を販売するスペースがあり、左手にはレストランらしきものがあった。フロントの左横には上へ向かう階段があった。


リンダはフロントに近づき、中にいた亜麻色の髪の女性に声をかけた。


「こんにちは、ジェニー、またよろしくたのむぞ。」


「あら、いらっしゃい、リンダちゃん。いつもの部屋、おさえてあるわよ。」


「ああ、いつもすまんな。それと、新人の登録をお願いしたいのじゃ。」


リンダはそう言って、おれをジェニーさんに指し示した。


「あら?」


そこで、はじめてジェニーさんはオレの方を向いた。目を大きく見開いている。


「男の人の新人? いいの? リンダちゃんのとこ、女性ばかりなのに。」


「いいのじゃ、マサルは男とか女とか関係なく。欲しい人材なのじゃ。」


「リンダちゃんが、そう言うなら、いいけど。ええと、マサルさん? では商業ギルドとキャメロン商会に登録しますから、身分証を貸してください。あと、リンダちゃんもキャメロン商会のカードを貸してね。」


「はい、よろしくお願いします。」「よろしく頼むのじゃ。」


オレはジェニーさんに、門の詰所でもらった身分証を渡した。リンダも懐からカードを出して渡す。


ジェニーさんは、2つのカードを受け取り、フロントのカウンターの下にあった水晶に開いていた2つのスリットに差し込んだ。ジェニーさんが手をかざすと水晶はピカッと光った。


ジェニーさんは、水晶から2つのカードを取り出し、オレとリンダに渡してきた。


「はい、OKよ。確認して。あと、キャメロン商会のチェックインも済ませておいたから。」


改めてオレは自分の身分証を見た。


大きさは日本の免許証よりも少し大きいくらいで、全体的にアルミ金属っぽい感じだ。


左上には天秤のマークとラクダのマークがあった。


「なあ、リンダ。天秤のマークは商業ギルドのマークだよな? ラクダのマークはキャメロン商会のマークか?」


「そうじゃ、かわいいじゃろ?」


そういえば、馬車の側面にもラクダのマークがあったな。しかし、ラクダってキャメロンじゃなくて、キャメルじゃないのか?


「この文字は、マサル・ヒラタケって書いてあるんだよな?」


「そうじゃ。」


「あと、この名前の下にある。数字はなんだ?、」


名前の下に、0表示が2つ並んでいる。ゼロだよな? 数字は日本と同じらしい。


「それは、上が所属するギルドに預けられている金額で、下がこのカードにプールされている金額じゃ。」


「え? もしかして、ここでは、このカードで全て支払いとかするの?」


「そうじゃ。」


なんと、まさかのキャッシュレス社会ですよ。この部分は下手したら日本よりも進んでるんじゃないか?、


「問題ないようじゃな。では部屋に行くぞ。ああ、ジェニー、昼飯を部屋にたのむ。4人分じゃ。」


「わかったわ。ごゆっくり。」


オレはリンダについて階段を上る。


「この商業ギルドの建物は宿泊施設にもなっておっての、ギルド員は安く泊まれるのじゃ。」


4階まで上り、階段のすぐそばのトビラにリンダは自分の身分証をかざした。


ガチャリ、


鍵が開く音がした。


中に入ると10畳くらいの広さのリビングとなっており、その部屋にトビラが4つあった。


「2人用の寝室が2つと、あとトイレと風呂がついておる。寝室は我と一緒じゃからな?」


「わかった。」


どうやら、ここでも幼女と一緒に寝るらしい。いつかクリスさんと同じ部屋にしてもらえる日が来るといいなぁ。


「……どうせ、クリスと一緒がいいとか思っておるのじゃろぅ?」


「な?! そんなことは……」


「…………」


「……あります。」


「ふん、正直なやつじゃ。まぁ、今後のマサルの頑張り次第で考えてやらんこともないぞ。当然、クリスの意思もあるがの。」


リンダは自分の鞄から、結界石を取り出し、間取り全体の四隅に置いた。


「ここにも結界を張っておくのか?」


「ああ、商売人の世界にも敵は多い。特にマサルとの仕事の話は他人に聞かれないほうが良さそうじゃしな。この結界には防音効果もあるのじゃ。さて、雇用契約の詳しい話をしようか。座ってくれ。」


オレとリンダは応接セットで向かい合って座った。


テーブルにはリンダがいれてくれた紅茶がある。


「マサル。キャメロン商会はマサルを雇用するにあたって、三度の食事と寝る場所を提供する。そして専属護衛としてクリスをつける。ここまでは良いな?」


「ああ、オレとしちゃあ。この世界でどこにも頼るところがないから。それだけでも十分なんだが……ちなみにクリスさんとかは、それにプラスアルファがあるのか?」


「ああ、クリスとデイジーは、それに加えて、月20万Gの給料を与えている。」


「20万G?……いまいちピンとこないな。ここの昼飯は1回いくらぐらいなんだ?」


「この世界での昼飯はそうじゃのう。1回、1000Gくらいかのう。」


うーん。なんとなく、1Gイコール1円って感じでよさそうだな。


「それで、どうするマサル? クリスと同じように固定の給料にしても良いが、仕事ごとに歩合制にしてもよいぞ? たとえば、1つの仕事で出た利益の1割とか……な?」


「……3割だ。」


「なに?!」


「出た利益の3割くれ。例のクズ魔石に魔力を補充して儲けようと思ってるんだろ? 本来処分費が発生するところから、たんまり儲けが出るんだ。それぐらい出してもいいんじゃないか? それに今回、ダイダロスから持って来た魔石だけじゃなくて、この街から出る使用済みのクズ魔石を集めればもっともっと利益がでるんじゃないか?」


「そうか!? そうじゃのう。分かった。そのアイデアだけでも、価値がある。利益の3割、くれてやるわ。昼飯をくったら、早速仕事にとりかかるぞ。マサル。」


「ああ、久しぶりに仕事にやる気がでてきた。がんばろう。」

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