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救世主リムル

遥かなる昔、エルフを中心にした獣人の国があった。


ある年、その国を飢饉が襲った。十分に雨が降らず、作物が殆ど実らなかった。


人々の心は荒み、互いの争いが絶えなくなった。


やがて、異形なる者が現れ出した。


突如、肌が浅黒くなり、口が大きく裂けた魔人となる者が続出したのである。


魔人は人々を襲い、魔石を奪って貪り食った。


魔石を動力とした魔道具による生活を営んでいた人々の暮らしは益々貧しくなった。


そこに救世主が現れた。


救世主は聖なる光をもって魔人となった人々を瞬く間に戻していった。


急場を凌ぐ食料も人々に与え、救世主はやがて去っていった。



□□□□



「……といった言い伝えが我らエルフの間にはあるのですよ。」


ここは、タイタンの領主館のリビングだ。オレとリンダは長椅子ソファに並んで座って、領主のディードさんと向かいあっている。クリスさんとデイジーちゃんはオレたちの後ろに立っている。


「なるほど、その救世主がリムルだと?」


「はい。その容姿と体から発するオーラも代々エルフの間に語り継がれています。我らエルフは人々が発する生命力の波が見えるのです。その形は様々で、人によってまったく違う。今、目の前にいるリムル様は髪色が違いますが、それ以外は語り継がれているものとほぼ一致するのです。」


「エルフは長寿じゃからの。人間の間では我の存在は忘れ去られておったようじゃが……」


「我らエルフは義理堅い種族です。恩義は決して忘れません。本来であれば、再会したこの場で恩返しをしたいところなのですが……」


「よいよい。我が訪れたのは、恩を返してもらうためではないのじゃ。我の髪色が昔と違うのはな、子孫の血筋の者と一体化したためなのじゃ。そして、現在の意識はどちらかというと、その子孫よりでな。名をリンダ・キャメロンという。これからは、我のことはリンダと呼んでくれ。」


「分かりました。それで……リンダ様。現在、このタイタンは未曾有の災害に見舞われています。」


「うむ、イナゴの襲来による作物の壊滅と食料不足。そして魔人化の問題じゃな?」


「はい。恥ずかしながら、街に魔人が多く出現したため、その捕縛、取締りだけで手一杯で、街の出入りのチェックもできていない状況なのです。」


「やはりそうであったか、安心せい。スラムの奥にいた魔人はほぼ元の人にもどしたのじゃ。」


「流石リムル様! いや、今はリンダ様でしたか。」


「そして、これを授けるのじゃ。」


リンダは魔法袋から、カスタマイズしたヒールリングを数十個取り出してテーブルに置いた。


「これは……ヒールリングですか?」


「うむ。ヒールリングじゃ、ただし、我の隣にいる優秀なSE、マサルがカスタマイズしたものじゃ。 これはな、ホーリーライトが使えるのじゃ。」


「おぉ! これを使えばホーリーライトが誰でも使えるのですか?」


「そうじゃ、これを使って魔人と化した者たちを速やかに元に戻してやるがよいのじゃ。そして魔人から人に戻った者に仕事がなければ、我のところに連れてくるのじゃ、雇ってやる。」


「仕事まで与えてくれるのですか? ありがとうございます。」


ディードさんは深く頭を下げた。


「うむ。では、ここからは商売の話じゃ。我らは今、子会社で魔石の再生事業をしておる。」


「なんと、魔石を再生できるのですか?」


「そうじゃ、空の魔石も魔力を補充して再利用できるのじゃ。空魔石を1つ10Gでキャメロン再生社が買い取るので、周知徹底して欲しいのじゃ。」


「分かりました。助かります。いくら取り締まっても違法投棄される空魔石が後を絶たず。魔人が発生する原因となっていましたので……」


「それとな、スラムの一角に廃墟が集まる場所があるじゃろ?」


「はい、正直、あのあたりは、我らではもう手がつけられない状態です。」


「あの一帯を買い取って、キャメロングループのビルを建てたいと思うのじゃが? 権利関連はどうなっておるのかの?」


「あのあたりの土地建物の権利は持ち主が放棄し、現在名目上は領主、つまり私の管理地となっております。あそこを再開発していただけるなら、喜んで権利を無償でお譲りします。」


「では、ありがたくいただくとするのじゃ。あと、イナゴにやられた畑の状況はどうなのじゃ?」


「全体の三分の一が耕作放棄され、管理者がいない状況です。残りはなんとか、次の作物を作ろうとしているようです。」


「そうか、では、その耕作放棄地を我に任せてくれんか?」


「あの、あの場所で農業以外のことをしていただくのはちょっと……」


「勘違いするな。勿論農業をするのじゃ。キャメロン農業社をこの地で立ち上げ、食料事情を改善してやるのじゃ。」


「おぉ! 分かりました。喜んでお任せします。」


「うむ、任せておけ。たっぷり収穫して、たっぷり税金を納めてやるからの。もちろん、我らもたっぷり儲けさせてもらうがの。よし、マサル、話はついた。早速動き出すぞ!」


「わかった。」


こうして、オレたちによるタイタンの街の再生事業が始まった。

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