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入門手続き

ドカ!


頭に強い衝撃を受けてオレは目が覚めた。


目の前には小さな足があった。リンダの足だ。


キャメロン商会には野営用のテントは2人用のが2つしかなく、成人女性とオレが同じテントで寝るわけにはいかなかったので、仕方なく幼女のリンダと同じテントで寝ることになったのだ。


リンダにはなんと前世の記憶があるそうだ。


前世でもこの世界で商人をしていたそうで、6歳の時にその記憶を取り戻した彼女は7歳の時にそこそこ商人として成功していた父親から暖簾分けをしてもらってキャメロン商会を作ったそうだ。


しかし、この幼女は寝相悪いな。こんなんじゃ嫁の貰い手がないぞ。


「うるさいのじゃ、我は嫁になどいかん!」


「はい、ごめんなさい!」


「ぐぅうううう……」


ん?、なんだ寝言か、びっくりさせやがって。





テントから出ると東? の空から太陽が昇るところだった。スマホの時計を見ると午前6時12分となっていた。時間あってるのかな? そもそもここは地球と同じ1日24時間なのだろうか?


「おはようございます。マサルさん。」


クリスさんがすでに起きて朝食の準備をしていた。


「おはようございます。クリスさん。」


クリスさんの笑顔が眩しい。可愛いなぁ。かっこいいなぁ。これからこの人にずっと護衛してもらえるんだよなぁ。なんだかわくわくしてきたぞ。


朝食は狼肉と野菜のスープとパンだった。狼肉はスープに入れても良いダシが出て美味しかった。





「マサル、これを渡しておくのじゃ。」


移動の馬車の中、リンダが黄色い石のついたネックレスを渡してきた。確かこれは野営の時に張っていた結界に入るためのものだな。


「ありがとう。」


「おまえを信頼してこれを渡すのじゃ、裏切ってくれるなよ?」


「わかりました。お姫さま。」


「うむ!」


そう言うとリンダはオレの膝に頭を乗せてきた。


オレはそんなリンダの頭を軽く撫でてやると、気持ち良さそうに目を細め、そのまま目を閉じた。


すぐに寝息が聞こえてきた。


寝顔だけ見てると普通の幼女だなぁ。





風にかすかに潮の臭いがしてきた。


「ゼータの街が見えたわよ。」


御者台からのクリスさんの声を聞いて、オレは馬車から身を乗り出し、前方を見た。


街を覆う3メートルくらいの高さの石の壁が見え、その先に水面のきらめきが見えた。この潮の臭いはあれか、ゼータの街は港町なんだな。





街に入るための手続きをするための行列に並んで待つことしばし、オレたちの番が来た。


荷物のチェックとリンダ、クリスさん、デイジーちゃんの身分証のチェックは滞りなく終わった。


「身分証がない?」


門番の兵隊が訝しそうにオレを見る。


「はい、気がつけばオレは草原にいたんです。一応、免許証はありますが…」


オレは財布から免許証を出して門番に見せる。


「……ふむ。何が書いてあるかさっぱり読めんな。もしかして、お前は異世界からの転移者か?」


「たぶんそうです。いま会話ができているのも、この翻訳リングのおかげですし。」


オレは左手小指の翻訳リングを門番に見せる。


「そうか、じゃあ、一応確認してから、身分証の発行をしてやるから、詰所まで来てくれ。……おい、ここをしばらく頼む。ああ、他の者はもう中に入っておいていいぞ。」


門番さんは、代わりの兵隊を呼ぶと、詰所の方にオレに来るように促した。


「はい、じゃあ、リンダたちは先に街の中に入って待ってて、」


「うむ、門の横で待っているぞ。」


門横の詰所に入ると机の上に置かれた大きな水晶の前に立たされた。


「その水晶に両手を置いてくれ。」


オレは言われるまま水晶に両手を置いた。すると水晶は黄色く光った。


「確かに未登録だな。じゃあ、名前をここに……ああ、文字が分からないんだったか、お前名前は?」


「マサル・ヒラタケです。」


「マサル・ヒラタケと……ちょっとまってろ。」


門番さんは奥の部屋に引っ込むと2分ほどして戻って来た。手には免許証よりも一回りほど大きいカードを持っている。それをオレがさっき手を触れた水晶の下のほうにいつのまにか開いていたスリットに差し込んだ。水晶がピカッと光った。


「よし、できたぞ。ほれ、もっていけ。」


門番さんはカードを水晶から引き抜き、オレに手渡した。


「あの……手数料とかは?」


この世界のお金とかないけど……


「ああ、新規のカード発行は無料だ。ただし、紛失した場合の再発行は所持金の1割をもらうことになるから気をつけろよ。」


「はい、ありがとうございます。」


「じゃあ、早くいけ、お嬢ちゃんたちが待っているんだろ?、」


「失礼します。」


オレは軽く頭を下げて、詰所を出て、門を今もらったカードを見せて通った。





門の内側には幻想的な風景が広がっていた。


道は全て石畳が敷き詰められ、レンガ造りの建物が立ち並び、そして、いたるところに水路が張り巡らされていた。イタリアのベネチアを思わせる町並みだ。これが港町ゼータか。


「おーい、マサル、こっちじゃ。」


リンダが馬車の横で手を振っていた。

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