エルフの領主
タイタンのスラム街の路地裏に入ると魔人が多くいた。
魔石を貪り食っていた魔人がオレたちに気付くと、飛び掛って来ようとしたが……
「グガガガ、」
「なんか、やつら、苦しんでるな?」
「うむ、まだ自我が残っておって、暴力欲求に抗っておるのじゃろう。デイジー、早く楽にしてやるのじゃ。」
「あいよ、ホーリーライト!」
デイジーちゃんの腕輪から白い光が広がり、あたりを包んだ。
光が収まると、犬耳や猫耳をした青年たちがいた。
「人間に戻れた?」「おお、元に戻れたぞ!」
「我はリンダ・キャメロン。キャメロン商会の代表じゃ。お主ら、我らについてこい。美味い飯と仕事をやるぞ! とりあえず、これを食べておけ。」
リンダは魔法袋から、オニギリ出して、それぞれに渡した。
「こ、これは……うまい。」「美味しいよぉ。」
彼らは涙を流しながら、オニギリを食べた。
青年たちは、リンダに跪いた。
「「「我ら、リンダ様についていきます。なんなりとお申し付けください。」」」
「うむ、では。これを授けるので、皆を元にもどして、我らの元に連れてくるのじゃ。我らはダルの妹のところにおるからの。やり方は指に嵌めて[ホーリーライト]と唱えるのじゃ。ああ、この指輪は4回しか使えんからな。使いきったら指輪を交換にくるのじゃぞ?」
リンダは青年たちにホーリーライトを使えるようにカスタマイズされたヒールリングを渡した。
「「「はっ! お任せください。」」」
青年たちは、ヒールリングを嵌めると、魔人化した仲間を救うべく。走り去っていった。
ダルはその様子をポカンと口を開けて見ていた。
「ほれ、ダル。行くぞ、案内せい。」
「は、はい。こちらです。しかし、すごいですリンダ様、あの荒くれたちを一瞬で従えるなんて……」
ダルは、尊敬の眼差しでリンダを見ていた。
スラムの路地裏を進むとドアが壊れた廃墟があり、ダルはそこに入っていった。
乾いた土の床にボロ布が敷かれたところにやせ細った少女が2人、荒い息をしながら横たわっていた。2人とも薄い茶色の長い髪をしており、頭にダルと同じような猫耳があった。双子だろうな、よく似ている。6歳くらいかな?
それにしてもダルの妹たちは魔人になっていた訳ではなく、病気で臥せっていたのか、オレ勘違いしていたぞ。恐らくリンダも……そう思ってリンダの方を見ると、案の定、目をパチクリさせている。そしてしょうがないなあって表情にになった。
「ミル、チル、帰ったぞ。」
手前の子がうっすらと目を開け、起き上がろうとした。
「……お兄ちゃん。おかえり。」
「ああ、いい。そのままでいい。リンダ様、お願いします。」
「うむ。」
リンダは進み出て、少女たちを見た。おでこに手をやったり、口や胸に耳をあてた。
「熱があるのぅ、息も荒い。ただの風邪じゃと思うのじゃが、これで治ってくれ……エリアヒール!」
柔らかな白い光がリンダの腕輪から出て、2人の少女をまとめて包み込んだ。
光が収まると、荒かった少女たちの息が穏やかなものとなり、パッチリと目を開けた。
グゥウウウウ
少女たちのお腹が揃って空腹を訴えた。
「「お兄ちゃん、お腹すいた!」」
ちょうどお昼の時間、ダイダロスのキャメロン商会本社ビルの食堂で元気にチャーハンを食べる2人の猫耳少女がいた。
「「美味しい! 美味しいよぉ!……うっ」」
双子の姉妹はそろってのどを詰まらせた。
「ほれ、水じゃ。飯は逃げんから落ちついて食べるのじゃ。」
「「んぐ、んぐ……あ、ありがとうございます。リンダ様。」」
姉妹は再びチャーハンを食べだす。その隣ではダルもまた元気に食べていた。
「それにしても……ずいぶん。集まったなぁ。」
オレは食堂を見渡して言った。
食堂には魔人から人に戻った人々が皆、元気にチャーハンを食べていた。ほぼ満員だ。この食堂の定員はたしか100人だったよな。
「リンダ。この人たち、皆、うちで雇うのか?」
「うむ、仕事はいくらでもあるからの。それに一度、魔人になって、人間に戻った奴らは、邪気が抜けきっておるから、信用できる。そのことはピートたちで実証済みじゃしな。この姉妹も良い子そうじゃし、大丈夫じゃろう。」
「……そうだな、確かにピートたちは良くやってくれている。」
「あの……リンダ様、オレたちのような子供も雇ってもらえるのでしょうか?」
いつのまにか、ダルと妹たちが食べる手を止めて、リンダを見ていた。見た目通り、ダルは10歳、ミルとチルは6歳だった。
「ああ、勿論じゃ。こき使ってやるから、今のうちにしっかり食べておくのじゃ!」
「「「はい!」」」
ダルたちは、元気に返事をすると、再びもりもり食べ始めた。よっぽと腹へってたんだな。
オレたちキャメロン商会の4人は他の住宅よりも、ちょっとだけ豪華なだけのタイタンの街の領主館を見上げていた。リンダは何故か変身して大人の姿になっている。
表には門番が居なかったので、勝手に門をくぐり、玄関扉を開けて、中に入った。
中には、タキシードを着た執事らしき若い紳士がいた。引き締まった体に緑がかった金髪をしており、そこからピョコンと長い耳が飛び出ていた。……もしかしてエルフか?
「どなたですか? 領主様はただいま大変ご多忙なのですが……」
「領主殿にリムル・キャメルが来たと伝えてくれんかの?」
「リムル・キャメル?……ま、まさかあの?!」
執事は、まじまじと変身したリンダを見た。
「た、確かに、そのお顔立ちとオーラはリムル様! しょっ少々お待ちください。」
あわてて、執事は中に駆け込んで行き、すぐに1人の女性を伴って、戻ってきた。
20代半ばに見える女性は緑がかったプラチナブロンドをアップにしており、スリーピースの紺のスーツを着ていた。顔は驚くほど整っており、尖って細長い耳がエルフであることを主張していた。
「私がこのタイタンの街の領主、ディード・パーンです。」
手短に自己紹介をすると、ディードさんは、いきなり土下座をした。
「リムル様、どうか、どうか、このタイタンの街をお救いください。」




