妹たちもお救い下さい
タイタンの街に入って、すぐに魔人に襲われた。ホーリーライトで元に戻すと10歳くらいの猫耳の少年だった。
猫耳の少年をデイジーちゃんが背負って街を散策してみた。
街中は閑散としており、ほんの僅かに人が歩いていた。
「なんか閑散としているね。」
「うむ、畑がイナゴに全滅させられたからの。街から出て行ったり、出稼ぎにでていったりしているんじゃろう。」
街の中央にあるメインストリートを歩いて探し、やっと1軒の宿屋らしきものを見つけた。二階建ての建物でベッドらしきものが描かれた看板が掲げられている。
「畑の宿屋?」
「そうじゃ、マサルもやっと、こっちの文字が読めるようになってきたの。」
「ああ、リンダ先生のおかげでな。しかし、今となっては、この名前はむなしいな。」
「そうじゃのう。入るぞ。」
宿屋に入るとロビーと受付があったが誰もいなかった。リンダは受付にあった呼び鈴を鳴らした。
チーン!
奥からマッチョでスキンヘッドのおやじが出てきた。
「いらっしゃい。畑の宿屋へようこそ。」
「おやじ、5人以上泊まれて、ゲストも招けるできるだけ良い部屋を貸してくれ。」
「うちは、自分で言うのもなんだが、安宿だからな。そんなに良い部屋はない。ただ、ごらんの通り今は閑古鳥が鳴いているからな、大部屋を1つ貸切にはできるぞ。それでいいか?」
「間取りはどんな感じじゃ?」
「30畳の部屋にトイレが1つついているだけだな。」
「ふむ、1泊いくらじゃ?」
「5万Gだ。」
「よし、ではとりあえず。2泊お願いするのじゃ。」
「あいよ、じゃあ、これに支払いをたのむぜ。」
おやじは支払い水晶を差し出してきた。リンダはそれにキャメロン商会のカードをかざす。シャリーン! 軽快な音がして支払いが完了した。
「……キャメロン商会さんね。じゃあ、部屋はそこの階段を上がって右にいった一番奥だ。」
おやじが水晶に表示されている内容を読み取って告げた。
「わかったのじゃ。いくぞ、皆。」
ロビー横にあった階段を上って2階に出ると左右に通路が分かれていたので、右に行き、トビラの前を3つ通り過ぎるとその奥に他より少し大きいトビラがあった。
リンダが商会のカードをトビラにかざすとカチリと音がしてロックが外れた。
中に入るとガランとした広い部屋があり、隅に布団がまとめて積んであった。小さなトビラが奥に1つあった。
「なんとも殺風景な部屋じゃのう。」
「まぁ、雑魚寝の大部屋らしいからな。」
「ふむ、マサル。あの奥のトビラをダイダロスの我らの部屋とつないでくれ。」
「わかった。」
オレは自分の魔法袋から直径30センチほどの円形のゴムプレートのようなものを取り出した。転移ドアプレートだ。これを双方のドアに貼り付けることで、離れた場所を繋ぐことができる。
プレートをドアに貼り付けると、プレートが薄く光り、中央のLEDランプが黄色だったものが青色に変わった。
ガチャリ
ドアを開くとそこはダイダロスのキャメロン商会ビルのオレたちの居住スペースのリビングだった。横を見ると同じく転移ドアプレートが貼り付けられたドアが4つほど並んでいる。その内1つはゼータの街のキャメロン再生社ビルのオレたちの部屋に繋がっている。残り3つは、まだどことも繋がっていない。
中に入り、デイジーちゃんが猫耳少年を長椅子ソファーに寝かせた。
「まだ目が覚めぬか、どれ、ヒール!」
リンダの魔法ブレスレットが白く光り、その光が少年を包み込んだ。
光が収まると少年の瞼がピクリと動いた。ゆっくりとそれが開かれる。
「大丈夫か?」
少年の手がリンダに伸ばされる。リンダはそれを両手で掴む。
「お……お……」
「お?」
「おなかすいた。」
グウウウウウ
少年の腹の虫が盛大になった。
キャメロン商会1階の食堂では、猫耳少年がオーク肉のチャーハンを涙を流しながら豪快にかっ込んでいた。
「うまい、うまいよぉ。……うぐ!」
「ほれ、水じゃ。メシは逃げんから落ち着いて食え。」
少年はリンダから水の入ったコップを受け取り、飲んだ。
「んぐ、んぐ……ぷはぁ!」
そして少年は再び、チャーハンをかきこみ出した。
猫耳少年がリビングでリンダの前で土下座をしていた。
「この度は、魔人から元に戻してもらったばかりでなく、美味しいご飯を食べさせていただき、ありがとうございました。」
「うむ。我はリンダ・キャメロンじゃ。お主、名はなんと言う?」
「はい、ダルです。ダル・グラビルです。」
「そうか。ダル、タイタンの街はいまどのような状況なのじゃ?」
「はい。イナゴの来襲によって、畑の作物だけでなく。倉庫に備蓄してあったものまでかなり食われて、酷い食料不足の状況です。……リンダ様! どうか、僕の妹たちもお救いください!」
「……いいじゃろう。ダル、案内せい。」
ダルの案内で訪れたのは、タイタンの街の隅、廃墟のような住宅がひしめき合う場所だった。
スラム街ってやつかな? そこにいる人たちの目は皆虚ろで生気が感じられなかった。
路地裏に入ると雰囲気が一段と暗くなり、そこかしこに魔石を貪り食べる魔人がいた。




