タイタンへ
やわらかな温もりの中で目が覚めた。
左を見ればクリスさんがいて、右を見ればデイジーちゃんがいた。そして前、上にリンダが乗っていた。
いつの間にかリンダは8歳児の姿に戻っている。おかげでそれほど重さを感じずに済んでいる。
「むにゃむにゃ、マサルぅ、好きじゃあ。ずっと一緒にいてくれぇ。」
全く、オレみたいな男の何処がそんなに気に入ったのか……
ぎゅっ!
たまらなく愛おしくなって、リンダを抱きしめた。
その動きで目が覚めたようでリンダが目を開いた。
「おはよう。マサル。朝から可愛がってくれるのか?」
「おはよう。リンダ。残念ながら、その姿じゃちょっとムリだな。」
「ん? そうか、変身がとけておったか……すぐには変身できんようじゃの。また今晩、可愛がってくれ。」
「ああ、じゃあ、起きて朝ご飯を食べよう。」
オレがリンダを抱っこしながら、起き上がると、その動きでクリスさんとデイジーちゃんも起きたようで、目を開けて抱き着いてきた。
「おはようございます。マサルさん。昨日はとっても激しくて良かったです。」
「おはよう。マサル。あたいも、気持ちよかったよ。もう、あんたなしじゃ生きていけないよぉ。」
2人は激しく体を擦り付けてきた。おぉ、気持ちいい。またオレのビッグマーラが覚醒してしまう。
「2人とも、待つのじゃ。我はしばらく大人の姿になれんのじゃ。お楽しみはまた今晩までとっておくのじゃ。」
「はい、わかりました。」「そか、お嬢も一緒のが楽しいもんな。わかったよ。」
2人はあっさりオレから離れた。おぉ、なにその物わかりのよさ。オレのいきり立ったビッグマーラをどうしてくれるんだ。
……しょうがない。朝ご飯に行くか。
「そういえば、リンダ、ゼータの街の様子はどうなんだ?」
オレたちはキャメロン商会本社ビルの1階の食堂で朝食をとっている。今朝はゼータの街から食事担当のおばちゃんが来て、作ってくれている。こっちの魔石再生ラインも動き出して、オレたち以外にもここで寝泊まりしている奴らがいるからな。ちなみにメニューはトーストとハムエッグにコーヒーだ。
「うむ。思ったより順調じゃ。警備隊は結局、1割ほどしか悪魔人になってなかったからの。ダイダロスからの応援も到着して、治安は前より安定しておる。領主一族はすべて悪魔人になっておって完全に消滅したので、かえって後腐れなく新しい領主が入ってこれそうじゃしな。まぁ、今はガロンおじがここと兼務して政務にあたっておる。ちょっと、ガロンおじが大変そうじゃな。」
「そうか、オレたちは、警備の助けになるように、できるだけ汎用魔法リングをカスタマイズして売ってやるかな?」
「そうじゃの、適正価格で売ってやるのじゃ。」
「ふふ、でもまた儲かっちゃうな?」
オレはニヤリとしてリンダを見る。
「うむ、また儲かってしまうのぉ。」
リンダもニヤリと笑い返した。
「問題はタイタンの街か……」
オレは表情を引き締めてリンダを見る。
「そうじゃの、ガロンおじもタイタンの街のほうまで手が回らないようじゃからな。」
リンダも厳しい表情となった。
「よし、じゃあ、この後様子を見に行ってみるか?」
「そうじゃの。行ってみるのじゃ。」
オレたちキャメロン商会の4人と1匹はダイダロスの街の西の草原に来ている。
「「「「フライ!」」」」
腕の汎用魔法ブレスレットについている無と緑と黒の魔石が光った。強固な障壁が張られ、黒い力場と柔らかな風がオレたちを包みこんだ。
フワリと浮き上がり、そのまま高度を上げて行く。やがてダイダロスの街が一望できるようになった。
「都市計画がしっかりしていたんだろうな。綺麗な街並みだな。」
「そうじゃの。綺麗なのじゃ。」
女性陣はその光景をウットリとした目で見ていた。
「さ、じゃあ、そろろそ行こう。」
「おう。」
ギュン!
急加速して西のタイタンの街の方へ向かう……が、明らかに飛行スピードが違った。
クリスさんとデイジーちゃんのスピードが明らかに早い。オレとリンダとウィンはどんどん遅れて行った。
なんで、こんなにスピードに差がでるんだろう? 魔法ブレスレットの性能は同じはずなのにね、不思議だ。運動神経の差が如実に出ている。
「マサルさん。」「お嬢。」
クリスさんとデイジーちゃんが戻ってきて、オレとリンダにそれぞれ手を差し伸べてくれたので、それをしっかりと握る。リンダはウィンを腕の中に抱えた。
それからは順調に飛行を続けた。
やがて草原は無残に地肌が見えるようになった。イナゴの大群によって食い荒らされた後だ。そこからしばらく元草原の地肌が続き、森になった。しかし、森の木々の葉も全て食い尽くされており、枯れかけていた。
森を抜けると、タイタンの穀倉地帯と思われる場所に出たが、殆どの作物が食い荒らされ、枯れていた。
数キロその光景が続き、街が見えて来た。
タイタンの街はダイダロスの街よりもかなり小さかった。ゼータと比べても1回りほど小さい。造りも雑然としている。ただ、街を囲う壁はしっかりしており、東西南北に1つずつ入口があった。
オレたちは街の西門の前に降り立った。門をみると、開け放たれているが、誰もいない。見張りはどうしたんだろう?
門をくぐり、中に入ると、黒い影が襲い掛かって来た。
「ガウウ!」
それは浅黒い肌をしており、口が大きく裂けていた。魔人だ。
「ホーリーライト!」
クリスさんのブレスレットが白く輝き、その光はあたりを優しく包み込んだ。
光が収まると、そこには人の姿に戻った10歳くらいの1人の少年が横たわっていた。茶色の髪の頭には猫耳のようなものが乗っかっていた。




