実は生きていました
コボルトのボスを倒して進んだ先の部屋で、モニターに出てきたリムルに怒られた。
「これって、記録映像じゃなかったのか?」
『うむ、記録映像を演じていたが、実は違ったのじゃ。』
「じゃあ、リムルは生きているのか?」
『……いきなり呼び捨てとは、失礼なやつじゃな。』
「だって、そのリンダと同じ喋り方……他人のような気がしないんだよ。」
『うむ、我も同じ感じがするから、まぁ、いいか……我もマサルと呼び捨てにするからの?』
「ああ……で、リムルは生きているのか?」
『生きている。我と同じ転生者か転移者の出現を待って、意識をコンピュータに移しておいたのじゃ。』
「体は?」
『この上の部屋に保管してある。我はこの時を心待ちにしておった。もう、1秒たりとも待てん。早く来て我を解放してくれ。』
「自分じゃ解放できないのか?」
『ちょっと事情があってな。できれば、そこの我の姉の子孫に協力してもらいたいのじゃ。』
「やはり、リムル殿は我の先祖の血筋じゃったのか……」
『そうじゃ、キャメル家の今の繁栄は我が作ったと言っても過言ではないのじゃ。だから協力してくれなのじゃ。』
「……わかったのじゃ、できる限りのことはするのじゃ。」
『よし、ではまず。ここのクリア報酬を授けるぞ。受け取れ。』
モニターの下に、二振りの短剣が現れた。1本は煌びやかに装飾がされているが、もう1本はそれなりだ。勿論どちらもUSB端子がついており、唾の部分に8つの魔石がついている。
『汎用魔法短剣じゃ。基本的な使い方は長剣と同じじゃ。煌びやかな方がリンダの分じゃからな。』
「おお、かっこいいのじゃ。ありがとうなのじゃ、リムル殿。」
リンダは早速その短剣を抜き、かざして眺めている。なんか魔法少女のステッキみたいに見えるのは、オレの気のせいだろうか?
オレも残った短剣を拾う。リンダのに比べれば質素だが、それなりにカッコイイ、オレはこっちのが好きだな。……負け惜しみじゃないからな。
「ありがとう。リムル。」
『うむ、これで全員に魔剣が行き渡ったの?』
「ワン! ボクのは?」
『おお? ウィングドッグがしゃべった? ……ああ、翻訳リングをしているのか。流石にウィングドッグ用はないのぉ。そのうち考えてやるから、待っているのじゃ。』
「わかったワン!」
『さて、次の階層の相手はオークなのじゃ。オークはとにかく、タフで力が強い。じゃが、今のマサルたちの装備なら問題あるまい。ボス部屋へ入る小部屋は同じく右奥にある。そこの壁にはダイヤルが5つついているので、[88951]と番号はあわせればよいのじゃ。』
「はやくこい……か、わかった。」
『では、上で待っているぞ。早く来てくれよ?』
プツン…… ガー!
画面が消え、横の壁がスライドして開いた。外に出ると、ボス部屋に入る手前の小部屋だった。
第4階層の壁は再び御影石っぽくなっていた。ただ道の幅が若干広くなり、見通しが良くなった。
オレとリンダはスマホでマップを確認した。
「うーん。今回アイテムを集める必要ないから、敵とは戦いたくないけど。そうもいかないようだね。」
「そうじゃのう。他の冒険者の数も少ないし、2回くらいは戦闘になりそうじゃの。」
通路の先に大きな人影らしきものが現れた。高さは180センチくらい。でっぷりと太っており、顔はブタ。ボロボロの布の服を着て、手に抜き身の曲がった剣を持っていた。シャムシャールってやつかな? とにかく、こいつがオークだな。
「ファイヤーアロー!」
クリスさんが弓を引き、炎の矢を放った。
ビシュ! ドン!
「プギイイ!」
炎の矢が見事にオークの腹に命中した。しかし、やつは少し悲鳴を上げただけで、こちらを睨み、駆け寄ってきた。
ドシュ!
「プギギギギイ!」
ドドーン!
2つ目の炎の矢がオークの頭に命中した。脳天を貫いて焼かれては流石に致命傷になったようで、前のめりに倒れこんだ。やがて、光の粒子となって消えていき、後には豚肉の塊があった。
「どうやら、オークは頭を重点的に狙わねばいかんようじゃのう。」
「そうだね。クリスさん、良くやったね。えらい、えらい。」
オレはクリスさんの頭を抱きしめて、撫でながら答えた。
「よし、次に行くのじゃ。今度は我が倒すのじゃ!」
リンダは豚肉の塊を拾って、魔法袋に入れて、ズンズン歩き出した。なんかムキになってる?
その先にまたオークが現れた。しかも2匹。
「わわ? バレット! バレットぉ!」
リンダはつづけざまにバレットを放った。
ドシュシュ! パアン!
1匹の頭部を粉砕することができたが、もう1発はハズレ、その残ったオークが怒りの顔をして、こちらに駆け寄って来た。
「プギィイイイイ!」
「くるなぁ! ブリザード!」
ゴオオオォォオ!
リンダの手から極寒の冷気を含んだ竜巻が飛び出した。
ピキン!
オークは見事に凍りついた。
「……冷気は思ったより効いたな。」
「……そうじゃの、とにかく倒したのじゃ。マサル撫でてくれ!」
「はい、はい。よくやったなリンダ。えらい、えらい。」
「えへへぇ。」
オレはリンダの頭を抱きかかえて、優しく撫でてやった。リンダは気持ち良さそうに目を細めている。
「よし、ボス戦でも、冷気を多用して行こうか?」




