キングコボルト
カチ!
岩壁に10個目のコボルトの牙を嵌めこむと壁はフッと消えた。ちなみに、穴にはめちゃくちゃな順番で漢数字が横に書いてあった。漢数字の意味が分からないと開けられないな。
「いくのじゃ!」
「おう!」「「はい!」」「ワン!」
オレたちはボス部屋への道を進む。後ろが少し暗くなった。おそらく入口の壁が復活したのだろう。
先に出口らしきものが見えた所で立ち止まって、スマホを取り出し、マップを確認する。
「リンダ……」
「ああ、見事に出口を囲んで待ち伏せておるな。」
リンダも自分のスマホでマップを見ていた。
出口付近に10を超える赤い光点がある。それと奥に1つだけ赤い点、これが親玉かもしれない。
「ここは、オレに任せてくれ。」
「ふむ……わかったのじゃ。何か新兵器があるのじゃな?」
「まあな……いくぞ!」
オレは魔法のブレスレットがついた左手を前方の出口に向ってかざした。
「クラスター!」
ブレスレットに嵌った黄と緑と赤の魔石が輝いた。
バレットの砲弾より一回り大きいものが、ややゆっくりと前方に向って飛んでいった。
それがボス部屋と思われるところに出たところで亀裂が入り、中から光が溢れた。
ドガガガーン!
パチンコ玉くらいになった破片が四方八方に飛び散った。
[クラスター]の魔法はバレットの砲弾を火の属性の魔法で爆発させることによって、その破片を周囲にばらまくようにカスタマイズして作ったものだ。これにより、ザコを効率的に殲滅できる。
「「「「グギャアアアア!」」」」
広間の出口付近で待ち構えていたザココボルトたちの断末魔の悲鳴が聞こえた。
オレたちがボス部屋の広間にでると、合計15ものザココボルトたちが光の粒子となって消えていくところだった。あとには魔力検知器と牙が残った。広間は学校の体育館くらいの広さだ。
「ゴガアアアア!」
奥に1匹待機していた一回り大きく、金属製の鎧を着たコボルトが怒りの咆哮をした。手には短剣らしきものを持っている。
「くっ!」
オレはその咆哮で体が硬直してしまった。横を見るとリンダも同じような状況らしい。しかし、クリスさんとデイジーちゃんは、なんともないようで、スラリと各々の得物を抜いていた。
「「ファイヤーソード!」」
その掛け声と共にクリスさんの2つの小太刀とデイジーちゃんの長剣の刃が赤く輝いた。
勢い良く飛び出した2人はあっというまに、鎧コボルトの所に到達し、斬りかかる。
ビシュ! ガカ!
驚いたことに、鎧コボルトは2人の初撃をかわし、逆にデイジーちゃんに斬りかかった。しかし、デイジーちゃんはこれを長剣で受け、得物の差で、鎧コボルトの短剣が刃こぼれした。
でも良く刃こぼれしただけで済んだな。とっさに剣を引いたのかな? あのコボルト、かなり腕がたつのかもしれない。しかし、せいぜい1人と互角程度だな。そして、得物の差は歴然。
ドン!
「グガアア!」
ザシュ!
2人がタイミングをずらして、斬りかかると、鎧コボルトは裁ききれず、クリスさんの小太刀に腹を刺され、デイジーちゃんの長剣に首を切り落とされた。
鎧コボルトは光の粒子となって消えて行き、あとには魔力検知器が10こ残っていた。
「やりました。マサルさん! 撫でてください。」
クリスさんがオレに駆け寄って来て、屈んで頭を差し出してきた。
「うん、良くやったね、えらいえらい。」
オレはそれを撫でてやり、ついでにギュっと抱きしめた。キスをするとリンダがうるさいからな、これで我慢しよう。
「あ、あの、あたいも撫でてくれないかい?」
「え?」
デイジーちゃんが真っ赤になって頭を差し出してくる。
普段男勝りのデイジーちゃんが妙にしおらしくて可愛く見えてしまった。でもいいのかな?
オレはクリスさんの方を見た。
「マサルさん。デイジーも頑張ったので、撫でてあげてください。」
「あ、ああ、クリスさんが、そう言うのなら。」
オレは、デイジーちゃんの頭を撫でてやる。
「えへへぇ。」
デイジーちゃんは気持ち良さそうに目を細める。
「我もぉ! 我も撫でるのじゃあ!!」
リンダが叫んで抱きついてきた。
「え? 今回リンダは何もしてないだろ?」
「だったら、我がマサルを撫でてやるのじゃ。ほれ、頭を下げるのじゃあ!」
「はいはい、お願いします。ボス。」
オレは素直にかがんで頭をリンダに差し出した。
「うむ、良くやったのじゃ。えらい、えらい。」
リンダはオレの頭を抱きかかえ、撫でてくれた。あ、ケッコウこれ気持ちいい。
「どうじゃ、マサル? 我も少しはオッパイあるじゃろ? 気持ちいいか?」
「うん。やわらかくて気持ちいい……はっ!?」
思わず本音が漏れてしまった。クリスさんの方を冷や汗を流しながら振り返ったが、いつも通りニコニコしていた。大丈夫なの……か?
「よし、元気も補給できたし、先に進むのじゃあ!」
ガー!
ドロップ品を回収し、ボス部屋の奥のトビラに近づくと自動で開いた。
先に続く通路は緩やかにカーブしており、やがて10畳ほどの部屋に出た。
上部には、80インチのモニターがあり、その下には点滅するLEDとUSB端子があった。スマホと繋いだUSBコードを接続すると画面にリムルが映し出された。
『遅いのじゃあ! いったい何をしておったのじゃああ!!!』
画面のリムルは突然怒りだした。
ええ? これって記録映像じゃなかったの?




