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聖なる光が街を清める

豪華な馬車がキャメロン商会の本社ビルの玄関に横付けされた。馬車の横には金槌のエンブレムが描かれている。この街の領主であるガロン・ダイダロス所有の馬車だ。


商会の代表である、我、リンダ・キャメロンは護衛のデイジーと共に、領主の馬車に乗り込んだ。


「気をつけてね、リンダ。」


「ああ、マサルもサヨと手はず通りに頼むのじゃ。」


我は馬車の窓ごしに、マサルに声をかけ、出発した。


馬車はゆっくりと走り出した。商業地区を抜け、居住区に差し掛かると、高級そうな住居が軒をつらねた。そして、圧倒的な存在感を示す白亜の領主館が見えてきた。


領主館の玄関に馬車が横付けされると御者がトビラを開けてくれた。我はデイジーと連れ立って馬車を降りる。


使用人が玄関を開けてくれると、メイドが両側に並んで出迎えてくれていた。


「「「「いらっしゃいませ、リンダさま、デイジーさま。」」」」


「ようこそ、いらっしゃいました。リンダ様、デイジー様。ささ、ガロン様がお待ちかねですぞ。」


この館の執事の初老の紳士にエスコートされて、我とデイジーは応接室に向った。





応接室に入ると、半分白くなったブラウンヘアをオールバックにした中年紳士と金髪で小太りの中年男がいた。


ブラウンヘアの紳士はこの街の領主であるガロン・ダイダロス。我とは、父親を通じて親交がある。もう一人の男は見たことがない。


「やあ、リンダちゃん。よく来てくれたね。ささ、こっちへ。」


「ガロンおじ、こんにちは、なのじゃ。して、そちらの紳士はどなたかの?」


「こちらは、ゼータの街の領主、キズモ・ゼータさんだよ。」


「キズモ・ゼータです。はじめまして、よろしくお願いします。」


「我は、リンダ・キャメロン。キャメロン商会の代表にしてキャメロン再生社のオーナーなのじゃ。よろしくなのじゃ。」


「ささ、座って、座って。」


互いに自己紹介を済ませて、応接間のソファに向かい合って座った。ガロンおじとキズモさんは、それぞれ1人用のソファに並んで、我は長椅子ソファに座った。デイジーは何かあった時のために我の後ろに立って控えている。


メイドが、入れてくれた紅茶を一口するる。良い香りじゃ、心が落ち着く。


「リンダちゃん。イナゴ撃退の時には世話になったね。ありがとう。」


「防衛システムの買取りで我らもそれなりの利益をださせてもらったのじゃ。こちらこそ、ありがとうなのじゃ。」


「ゼータの街では、多くの魔人を人に戻しただけじゃなく。その人たちの雇い入れもしてくれたそうだね。街を代表してお礼を言わせてもらうよ。ありがとう。」


キズモさんが深々と頭を下げた。


「いやいや、あれも、我がキャメロン再生社もかなりの利益をださせてもらっておるのじゃ。礼を言われることではないのじゃ。」


「それでね、リンダちゃん。キズモさんからの申し出なんだが、今後は空魔石の回収を街の警備隊に任せてくれないかな?」


「……それは、キャメロン再生社の根幹に関わる仕事ゆえに、ピートも丁重にお断りしたはずじゃが?」


「しかし、魔石の有料回収は警備隊の貴重な収入源のひとつだったんだよ。だから……」


「再生社が出す利益に対する税金で、これまで警備隊が得ていた有料回収の費用の分は、十分まかなえると思うのじゃが?」


「ああ、それもそうじゃないですか、キズモさん。」


ガロンおじは、目から鱗がおちたような顔をしている。まったく、お気楽じゃな。


「警備隊は、その分街だけじゃなく、周辺集落の警備を徹底すれば良いのじゃ。そのあたりの人手は決して十分ではないと聞いておるが?」


「い……いや、しかし……」


キズモさん、いや、キズモは苦虫を噛み潰したような渋い顔をしている。


「はっきり言ったらどうじゃ? 空魔石を食いたいと?」


「な? な、な……なにを言っているのだ?」


キズモは顔から脂汗をだらだら流している。


「どう言うことだい? リンダちゃん?」


ガロンおじは、訝しげな顔をしている。


「ふん、領主様が、ここに居るということは、ゼータの街の警備隊の一部もこちらに来ておるということじゃな? では、ゼータ周辺の警備隊は現在どうしておるのかの?」


「ん? ゼータの街の警備の補填に街に集結してもらっているが?」


「つまり、ゼータの街の警備隊は、ゼータの街とこのダイダロスの街の2箇所に現在集中しておる訳じゃな?」


我は立ち上がり、窓際に寄り、レースのカーテンを開けた。この窓はゼータの街の方を向いている。


「見るがいい。」


ガカカカカカカ!


天空から光の柱が降りてきた。その光は徐々に太さを増して、やがて地上をドーム状に囲んだ。下の様子はここからでは良く見えないが、ゼータの街全域を綺麗に囲んでいるはずじゃ。


「な……あれは、聖なる光?」


キズモが絶望的な表情をして、その光景を見ている。


「我らの星からの聖なる光、ホーリーライトサテライトキャノンじゃ。なに、一般の人には単なる癒しの光じゃ、案ずることはない。魔人となった者も、普通の人間に戻れる。ただし、悪魔人に落ちた者にとっては地獄の業火……その身は焼かれ、やがて消滅することじゃろう。これで、ゼータの街の浄化は完了するのじゃ。」


「素晴らしい。すごい力だね。リンダちゃん。」


「そうじゃろう? ガロンおじ、次はこのダイダロスの街を浄化しようと思うんじゃが?」


「是非頼むよ。」


まったく、ガロンおじは、お気楽じゃな。まぁ、扱いやすくて良いが……


「そうはさせるか!」


ガカ! キン!


「グアアア!」


キズモが突然、我に襲い掛かってきた。それをデイジーが前に出て魔剣で受けて、逆に切り返した。魔剣の刃は白く光っていた。聖なる属性、ライトソードの光だ。


キズモはいつのまにか、肌が浅黒くなり、口が耳まで裂けていた。デイジーに切られた箇所はブズブスと焼けただれ、煙が上がっている。


「やはり、悪魔人じゃったか……」


「おのれ、小娘、もう少し、もう少しで、街を完全支配し、これから人間どもを思う存分食らうことができたものを……」


「やはり、知性を持っているといっても、人を食らう欲求が一番じゃったか、滅びよ、悪魔人!」


柔らかな光がその場全てを覆った。ホーリーライトサテライトキャノンがダイダロスの街に降り注いだのだ。


「ギャアアアアアアア!」


キズモの体全体から煙が出ている。そして、トビラの外側からも、悲鳴が聞こえてきた。キズモについてきた警備隊の連中だろう。


約5分後、柔らかな光が収まると、キズモがいた場所の床には拳大の白い灰の塊が残っていた。


「まさか、ゼータの街の領主が悪魔人だったなんて……」


ガロンおじが呆然と呟いた。


「呆けている暇はないぞ、ガロンおじ、ゼータの街は良くも悪くも領主がいなくなったのじゃ。混乱は免れまい。ダイダロスの街が全面的にバックアップして立てなおすのじゃ。」


「ああ、わかった。リンダちゃんも手伝ってくれるんだろ?」


「勿論、我がキャメロン商会と再生社も全面的にバックアップするのじゃ。」


魔人と悪魔人を一掃できて、スッキリしたのじゃ。それにしても、ご先祖様が作ったサテライトなるものはスゴイ力をもっておるのぉ。

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