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魔力補充

「アバタール王国?」


「そうじゃ、ここはアバタール王国。そして我らはダイダロスの街を出てゼータの街に向かう途中なのじゃ、ここはほぼ中間点じゃな。」


ピカ!


オレはリンダと焚き火をはさんで向かい合って座っている。クリスさんとデイジーちゃんは、横でオレを襲っていた狼の解体をしている。2人は昼食用の獲物を狩っていたところで偶然オレを発見し、助けてくれたらしい。


「聞いたことない国だなぁ。大陸の名前とか星の名前とかは分かる?」


「アバタール王国はカシス大陸にある。星とは夜になると空で輝いているものではないのか?、無数にある星の名前など、よく覚えていないが?」


ピカ!


「あ、いや、星のことはいいや。大陸の名前も全然聞いたことがないなぁ。」


「うむ、やはり、マサルは異世界から転移して来たようじゃの。」


ピカ!


「そうみたいだね。はぁ、これからどうしよう。」


「まぁ、これもなにかの縁じゃ。ゼータの街までは連れて行ってやる。そこでどうするか考えるんじゃな。」


ピカ!


「うん。ありがとう。ところでさっきから、手元でピカピカしてるのはなに?」


「ん? これか? これは魔石の魔力検知器じゃ。これに魔石をこんな風に触れさせるとな……」


リンダは医者が使う聴診器の先だけみたいな物を手に持ち、ビー玉くらいの赤い石をそれに触れさせた。


ピカ!


それについていた4つのLEDランプみたいなものの内、3つが光った。


「こんな風に光って、この魔石に含まれる魔力量が分かるようになっているのじゃ。これは3つじゃから、この袋にいれてと。こうして魔石を仕分けしておるのじゃ。魔力検知器はいっぱいあるから、マサルも手伝え。」


「あ、はい。」


オレはリンダから魔力検知器を受け取り、まじまじと見る。あ、これにもマイクロUSB端子がある。


「狼、解体できたわ。食べる分、ここで焼くわね。」


クリスさんとデイジーちゃんが狼の解体を終えたようで、その肉を鉄串に刺して4本持ってきた。焚き火の上に金網を置き、その上て焼きだす。


「あたいたちも、魔力検知するから、検知器ちょうだいリンダ。」


「ああ、たのむのじゃ。」


リンダが2人に検知器を渡して、4人でしばらく黙々と魔石を検知しては、仕分けする作業をした。


「なぁ、リンダ。」


ピカ!


「なんじゃ? マサル。」


ピカ!


「これって当然、魔力量が多い方が高く売れるんだよな?」


ピカ!


「勿論じゃ、魔石はダイダロスの街で魔力量が分からない雑多なものを安く仕入れて、魔力量が多いものだけを仕分けしてゼータの街で売るのじゃ、例えば10このうち、2つ以上3か4の魔力量があれば、そこそこ儲かるのじゃ。」


ピカ!


「そうか、もしかして魔力が全然ないものは売れないのか?」


オレは検知器がまったく光らなかった赤い石を見ながら聞いた。


「そうじゃ、魔力が全然ないものはお金を出してひきとってもらうか、粉々に砕いて埋めるなり、海にまくなりして処分しなければならん。そのまま外に放置しておけば野生動物が食べて魔獣化してしまうかもしれんからの。」


ピカ!


「ふーん、そうかぁ。」


オレは魔力ゼロの魔石を仕分けの袋に入れる。そこそこ袋には入っている。全体の3分の1くらいだろうか。


肉の焼ける良い臭いがしてきた。


「お肉焼けたわよ。」


「よし、ではお昼ご飯にするのじゃ。マサルも遠慮なく食うのじゃ。」


リンダに焼けた肉がついた鉄串を渡された。それをじっと見る。


これって、狼の肉だよな? 食べられるのか?


横を見るとリンダもクリスさんも美味しそうに食べている。


パク!


思い切ってかぶりついた。


あ、ケッコウ美味い。鶏肉みたいな味がする? そこそこ腹が減っていたこともあり、あっと言うまに食べてしまった。


「ごちそうさまでした。」


「どうじゃ、狼肉、美味かったじゃろう?」


「うん、美味かった。」


「よし、じゃあ、そろそろ出発するぞ。」


火を消し、四方に置いてあったピラミッドみたいな石をリンダが回収していた。


オレたちが乗り込み、馬車は出発した。太陽が沈むのとは逆の方だから東に進んでいるのかな?





夕方になり、昼に休んだのと同じような道の休憩所みたいなところで馬車が止まった。


「今夜はここで野営するのじゃ。」


リンダはピラミッドみたいな石を四方に配置する。


「リンダ、それってなんだ?」


「これは結界石じゃ、我らが首にかけているこの黄色い石のついたネックレスをしているか、その者の3メートル以内にいないと、この結界石で囲んだ部分には入れんようになっているのじゃ。マサルはネックレスをしていないからの、勝手に出るなよ、戻れなくなるぞ。」


「わかった。」


晩御飯は、狼肉の串焼きにパンと野菜スープがついた。そこそこ美味しかったけど、流石に狼肉ばかりだと飽きそうだなぁ。


「ところでマサル、SEとはどんな仕事なのじゃ?」


ピカ!


オレたちは、食後、また魔石の仕分け作業をしている。


「コンピューターのシステム構築や、管理なんかをする仕事なんだけど……」


ピカ!


「コンピューター? なんじゃそれは?」


「やっぱりこの世界にはコンピューターってないのかな?、……あ、でも……」


オレはPCバックからノートPCを取り出し、電源を入れた。


「なんじゃ、それは?」


「これがコンピューターなんだ。」


オレはノートPCにUSBケーブルを接続し、その先を魔力検知器のUSB端子らしき物にさした。


自動再生のウィンドウが開いたので、[フォルダーを開いてファイルを表示]をクリックした。


新たなウィンドウが開き、その中には、[readme][config][analyze][charge][log][autoexec]の6つのファイルがあった。


[readme]をダブルクリックしてみるとメモ帳のウィンドウが開いた。

===============

魔力検知及び魔力補充器


[analyze]で魔力を検知します。

[charge]で魔力を補充します。

魔石を検知部に近づけると[autoexec]に書かれた命令を自動で実行します。


ダイダロスダンジョン

アクセスキー:12346789

===============

ん?、補充?、これって魔力の補充もできるのか?


オレは今度はあらかじめメモ帳の空ウィンドウを開き、そこに[autoexec]をドラッグしていれた。ダブルクリックするとそのまま実行しちゃうかもしれないからね。

===============

analyze

===============

メモ帳ウィンドウに表示されたこれを

===============

charge

===============

と書き換えて、上書き保存した。


オレは検知器からUSBケーブルを抜き、魔力ゼロの魔石を近づけた。


検知器の4つのLEDが一瞬全部光ったかと思うと、全て消え、1つ目のLEDが点滅しだした。そして1つ目のLEDが点灯しっぱなしになり、2つ目のLEDが点滅しだす。


「な、なんじゃとぉ?」


リンダは目を見開き、その様子を見ている。


やがて、全てのLEDが点灯した状態となった。その魔石をオレはリンダに渡した。


リンダは自分の手にある魔力検知器にそれを近づけ、全部のLEDが点灯することを確認した。


「ゼロだったはずの魔力が補充されておる……マサル、SEと言うのは、魔道具を自在に操ることができるのか?」


「ああ、このUSBって端子のついたものだと、ある程度制御できるみたいだね。」


ガッ!


リンダは凄い勢いでオレの前に来て、オレの左手を両手で握った。


「マサル! キャメロン商会で働かぬか?」


「え?、」


「今なら、クリスを専属の護衛としてつけてやるぞ!」


「え?! ちょっとリンダ、なに勝手に!」


クリスさんが真っ赤になって反論しているが、満更でもなさそうだ。


「働きます! 是非、雇って下さい!!」


オレはリンダの手を両手で握り返す。


「よし、契約成立じゃな。これからよろしくたのむぞマサル。」


「はい! クリスさんも、よろしくお願いしますね。」


「……もう、しょうがないわね。わかったわ、これからよろしくねマサルさん。」


こうしてオレはキャメロン商会で働くこととなった。

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