ビッグマーラ
誰も命中させたことがない1000メートル先の的の真ん中に、クリスさんは炎の矢を命中させた。
そして、振り返り、オレに輝く笑顔を見せてくれた。
「ありがとう。マサルさんの調整のおかげで、思い通りに命中させることができるようになったわ。」
「いや、オレなんて……」「見事だ! 金色弓姫。」
突然オレたちの間に巨漢の男4人が割り込んできた。そろいもそろって全員モヒカンヘッドで、頑強そうな鉄の鎧を着ている。
クリスさんの顔が曇り、鋭い目つきになる。
「おい、あれって、Bランク冒険者パーティのモヒカンヘッドのやつらじゃ……」「ああ、強引な勧誘で女を無理矢理仲間にしては食い物にしているって……」
野次馬どもの話が耳に入ってきた。どうも、こいつら碌なやつらじゃなさそうだな。
「気に入ったぜ、金色弓姫。オレたちの仲間にしてやるよ。」
「お断りします。そもそも、あたしは冒険者じゃありません。」
「なにぃ? それだけの腕をもってて冒険者じゃないだと? じゃあ、なんだってんだよ?」
「あたしは、キャメロン商会の護衛です。」
「はっ! ケチな商人の護衛なんかやめて、オレたちの仲間になれよ。たーっぷり稼がせてやるぜぇ。夜もたーっぷり楽しませてやるからよぉ。げへへへ。」
リーダーらしき、金髪モヒカンがクリスさんに手を伸ばそうとしたので、オレはたまらず飛び出した。
「おい。やめろ! クリスさんは断っているじゃないか!」
「チビはひっこんでろ!」
ドガ!
オレは、そいつに顔面をパンチされ、吹っ飛んだ。
ドサ!
尻餅をついたオレの顔に、ツーっと何かがつたった。手で拭ってみると、血だった。鼻血かな? あたた……
「ファイヤーソード!」
ババババババ!
弓を2つの小太刀に分割したクリスさんが、それに炎を纏わせ、華麗な舞を見せた。
周りの男たちは一瞬呆けたように、それに見とれた。
バラバラバラバラ……
突然、モヒカンヘッドたちの鉄鎧が粉々に砕け散り、下に落ちた。中に着ていた下着も綺麗サッパリない。
「「「「なっなっ? 」」」」
鋭い目つきで、そいつらを見回した後、クリスさんは目に蔑みの色を宿して言い放った。
「はん! あたしの大事な旦那様のことをチビ呼ばわりしたくせに、あなたたちの物の方が、よっぽど小さくて粗末じゃないの。 あたしの旦那様のは、その3倍はあるわよ!」
「おっおい、あいつらのって、そこそこ大きいよな?」「ああ、少なくともオレのよりは……あれの3倍以上って、金色弓姫の旦那のって……化け物? ビッグマーラ?」「ビッグマーラ!?」「ビッグマーラだ!」
なんか、野次馬どもが、妙なことを呟きだした。ビッグマーラってオレのことか?
モヒカンヘッドたちは、赤くなったり、青くなったりして、股間を押さえている。
シュババ!
クリスさんが、小太刀を一閃した。
途端に、モヒカンヘッドたちのモヒカンが宙に舞った。
ブスブス……
「「「「あちちちちぃ!」」」」
モヒカンヘッド……じゃなくなったハゲ頭のやつらの頭から煙が出ていた。頭頂部の皮1枚も焼かれたようだ。
「今回のことは、それで勘弁してやる。うせな! 二度とあたしたちの前に現れるな!!」
「くっ! 覚えてろよ!!」
モヒカンヘッド改め、スキンヘッドどもは、全裸で走り去っていった。
ガバ!
地面に尻餅をついていたオレはクリスさんに抱き上げられた。
「マサルさん。ごめんなさい! あたし護衛なのに、守れなくて……」
「いや、大丈夫だよ。少し鼻血が出ただけだから。」
「いえ、頬も赤くなってます。」
クリスさんは、そう言うと、泣きながらペロペロとオレの頬を舐め出した。
ペロペロペロ……
「あ、クリスさん。くすぐったい。ちょ……あ、気持ちいい。」
顔中をクリスさんに舐め回され、思わず気持ちよくなってしまったオレは下半身にテントを張ってしまった。
「おっおい。やはり奴のは普通じゃないぜ。ビッグマーラだ。」「ああ、あの体でなんて大きさだ。正にビッグマーラだな。」
野次馬どもが、また変なことを言って騒いでいる。もしかして、このままオレの二つ名がビッグマーラになっちゃうの?
気がつくと、クリスさんが、オレのテントをじっと見ていた。そしてオレの顔を見てニヤリと笑って上唇を舐めた。
「ふふ、マサルさん。元気になっちゃったわね?」
なんとなく、猫科の肉食獣が頭に浮かんだ。モヒカンどもを撃退したことで、なにかのスイッチがはいっちゃったのかな?
「う、うん。ごめん。」
「じゃあ、今日はもう帰って、ベッドで休みましょ!」
クリスさんは、オレをお姫さまだっこして、PCバッグを拾い上げ、そのまま歩き出した。
「ちょっ! クリスさん! 自分で歩けるよ! 流石に恥ずかしいよ。降ろしてぇ!」
「だあーめ! しばらくは心配だから、このまま移動します。」
すっかり男前スイッチが入ったクリスさんは、楽しそうにオレを抱っこしてキャメロン商会のビルまで帰った。
道中、野次馬どもの刺すような視線がすさまじかった。
そして、オレはそのまま、男前のクリスさんに食べられちゃいましたとさ。




