スライム討伐
階段を下りて、本格的にダンジョンに入った。
入口のあった地上の階は天井にLEDの灯りがあって室内が見渡せるようになっていたが、地下は壁の御影石っぽいもの全体がうっすらと光っている感じだ。
ここで各自の装備を確認しておく。
クリスさんは皮鎧に背中に弓矢を背負っていて、短剣を両側に佩びている。デイジーちゃんは皮鎧に長剣を左に佩びている。
リンダは動き易い布の服を着て短剣を左腰に佩びている。オレもリンダと同じ。リンダはそれに魔法袋を右側に提げており、オレは左肩にPCバッグをかけている。
後、皆、左腕に魔法ブレスレットとその小指に翻訳リングをつけている。
ウィンは左腕に翻訳リングだけをつけている。
スマホのブラウザを開くと、この階層の様子が分かるマップが表示された。
「うわ、なんかいっぱいいる。」
「ん? どれどれ?」
リンダが横から画面を覗き込んできた。
「ああ、もう、見難い。リンダにはこっちのスマホを貸してあげるから。」
オレはPCバッグから、もう1台スマホを取り出して、リンダに渡した。
「おう、すまんのう。使わせてもらうのじゃ。」
え? スマホを複数台、3台くらい使ってるなんて……普通だろ? 仕事用に、個人用、あと予備ね?
リンダに渡したのは、勿論、予備のなんの個人情報も入ってないやつだ。
「ここを、タップすると、この階層のマップがでるから……」
「ほほう。なるほど……なんか、いっぱい動いておるの。この青い点は我らかの?」
「うん、階段スグのとこにいるから、多分そうだ。んで、この黄色い点が他の人たちだろうね。」
「では、赤い点がモンスターかの?」
「そうだろうね。しかし……」
「うむ、どれも、黄色い点が張り付いておるの。戦闘中ということか……」
「最初の階層だけあって、人が多いね。こりゃ、魔石を集めるの大変そうだなぁ。お? 端っこの方に隠し部屋らしきとこがある。」
「うむ、そこに赤い点だけがいっぱいあるの。行ってみるのじゃ。」
地下1階の左端のほうに行くと、地上のブリーフィングルーム手前の小部屋と同じように巧妙に分かりにくくされた通路があり、その先に広間があった。小学校の体育館くらいの広さがある。
中に入ると床一面に様々な色のブニョブニョした直径2メートルほどの物体があった。
「「!!??」」
オレとリンダがそれを見て固まっていると、それらが一斉に飛び掛ってきた。
「お嬢、下がって!」「マサルさん、こっちへ!」
ザシュ! ザザシュ!!
デイジーちゃんとクリスさんが前に出て華麗に敵を切り刻んだ。
「こいつらが、スライムか……」
「そうみたいじゃの、しかし、最初の敵だけあって、ザコみたいじゃの。」
スライムたちは、クリスさんの二刀短剣とデイジーちゃんの長剣によって、全て一刀両断にされ、次々に光の粒子となって消えていっている。消えた後に、それぞれの色の魔石がコロンと出現し、転がっている。
「リンダ! 僕も戦って良い?」
「そうじゃな、バリアを張っておるし、大丈夫じゃろ、やってみろ、ウィン。」
「わかった! ワオン!!」
ドン! パリン!
ウィンは上空から急降下して、赤いスライムに突っ込んだ。そのまま噛み付き、中の核らしきものを噛み砕いた。すると、スライムは光の粒子となって消えていき、赤い魔石が後に残った。
「やるではないか、ウィン。よし、マサル、我らも戦うぞ?!」
「おう!」
オレとリンダは、ブレスレットのついた左腕を突き出し、構えた。
「「バレット!」」
岩の砲弾が出現し、それぞれの方向に飛んでいった。
ドゴゴーン!
岩砲弾はスライムを数匹まとめて吹き飛ばした。オレとリンダは時々、魔力補充器で魔力を補充しながら戦った。
広間の床一面にいたスライムたちは、瞬く間に掃討され、二十分後には全ていなくなっていた。
魔石を全て回収すると、128個あった。
「これで、魔石は十分だね。早速ボス部屋に行こうか?」
「うむ、ボスに挑戦なのじゃ!」
スマホのマップを見ながら右奥の部分に来ると、やはりここも巧妙に見難くされていた。
細い通路を通って行くと4畳半くらいの小部屋があり、壁の一面に渦巻き状に魔石と同じくらいの穴が14こあった。
「ええと、ここにリムルが言っていた順番通りに2順、魔石を嵌めこんでいけばいいんだな……」
水、火、風、土、光、闇、無、水、火、風、土、光、闇、無、と魔石を外側から順番に嵌めこんでいった。
全ての魔石を嵌めこむと、魔石が一斉に光り、そしてその壁が消失した。
後には奥に続く通路があった。
オレたちが中に入ると、後ろには再び壁が出現していた。
閉じ込められた? でもまぁ転移石があるから大丈夫だよな?
通路の先は広間になっており、中に巨大なスライムがいた。
「……でかいな?」
「うむ、30メートルくらいあるかの?」
広間は小学校の体育館くらいあるのだが、その半分くらいを、そのスライムは占めていた。全体的に透明っぽくて、中に大きな核らしきものが見える。
「はああ!!」
ザシュ!
デイジーちゃんが突っ込んで行って、スライムを切り付けた。
しかし、表面がわずかに削れただけで、スグに元にもどっていた。逆にスライムの一部が触手のように伸びて、デイジーちゃんを捕らえようとした。
「ちっ!」
デイジーちゃんは、これをバックステップして避けた。
バシュ!
クリスさんが、弓矢でスライムを撃つ。
ドシュ!
放物線を描いた矢はスライムの核を目指して、それに食い込んだが、途中で止まってしまった。
ジュウウ!
スライムに入った矢は溶解されて、吸収されてしまった。
「「バレット!!」」
オレとリンダは同時に岩砲弾を放った。
ドププ!
岩砲弾はスライムに命中したが核に到達する前に止まってしまい。矢と同じように吸収されてしまった。
「攻撃が通用せん? これはムリかの?」
「いや、リムルさんが言ってたじゃないか、攻撃が通用しないなら、通用するようにするんだって!」
「でも、どうするのじゃ?」
「こうするんだよ!」
オレは左手を構えて叫んだ。
「ブリザード!」
左手から極寒の冷気を含んだ竜巻が飛び出した。
ピキキキキ!
巨大スライムは綺麗に凍結された。
「なるほど、これならいけそうじゃな! デイジー! クリス!」
「おうよ!」「はい!」
デイジーちゃんとクリスさんが、それぞれの剣で凍結したスライムを削りだした。
ガガガガガガガガ!
やがて、核が剥き出しになった。
「お嬢! 今だ! やっちまえ!」
「バレット!」
リンダの伸ばした手の先から岩砲弾が飛び出した。
ドゴーン! パリーン!
巨大スライムの核は砕け散り、光の粒子となって消えていった。後には様々な色の数百個もの魔石があった。
「やったのじゃあ!」
こうして、オレたちは、スライムのボスを倒した。




