開通
やわらかな温もりの中でオレは目が覚めた。
そう大きくはないが確かな膨らみの双丘が目の前にあった。
オレはそれに顔を埋め、その柔らかさを堪能する。
「ああん!」
声がした方を見上げると、切なそうにこちらを見るクリスさんの美しい顔があった。
「もう、マサルさんたら、昨晩、あれだけしたのに足りないの?」
「ああ、ちょっと、スイッチが入っちゃった。」
クリスさんの唇を奪い。舌を進入させて蹂躙した。
「ん、んぅ!」
クリスさんの嬌声を聞きながら、オレは自身をクリスさんに進入させていった。
ここは新しくキャメロン商会の本社となったビルの4階の居住スペースだ。
ゼータの商業ギルドで借りていたのと同じつくりになっている。
リビングではリンダがソファに腰掛け、面白くなさそうに頬杖をついていた。
「朝から、元気だのぉ、おまえたちは……」「ワン!おはよう。」
オレとクリスさんが着替えて、寝室から出てきた途端に、リンダに皮肉を言われた。声、もれてたんだな……
その横でウィングドッグのウィンがパタパタと羽ばたいて飛んでいた。
クリスさんは、真っ赤になって、俯いてしまった。
「あ、ああ、まだまだ若いからな! あ、おはよう、ウィン!」
よってきたウィンを撫でながら、開き直って言ってやった。
「ふん……では、朝食に行くぞ。」
「おはようございます。」
階段で、1階に下りると、受付に黒髪黒目、ハーフカットの美女がいた。サヨさんだ。まだ開発環境が整っていないので、とりあえず受付に座ってもらっている。
「おはようなのじゃ。」「「おはようございます。」」「ワン!おはよう!」
オレたちは、1階の社員食堂に入った。
「おはようお嬢! 朝食の支度できてるぜ。」
食堂の厨房からデイジーちゃんが出てきた。まだオレたちだけだからな、専門の調理スタッフはいない。
朝食はトーストにサラダにコーヒーと、簡単なものだ。ウィンだけは、床で焼肉を豪快に食べている。
「リンダ、例のトビラは設置済みなんだよな?」
オレはトーストにバターを塗りながら聞いた。
「ああ、各所に設置済みじゃ、このあと早速開通させるのじゃ。」
オレたちは朝食の後、再び玄関ロビーに来ていた。
このビルのつくりは、ゼータで買い取ったキャメロン再生社のビルとにている。
つまり、1階は入ってすぐにロビーがあり、食堂と再生作業室がその両隣にある。
そしてロビーには正面入口とは別にもう1つトビラがあった。そのトビラの上には、この国の文字で[魔道具屋リリス]と書かれたプレートがついている。
トビラを引いて開けてみる……が、そこには壁があった。そう、これはトビラが壁にとりつけられているだけのものだ。
オレは自分の魔法袋から直径30センチほどの円形のゴムプレートのようなものを取り出した。転移ドアプレートだ。これを双方のドアに貼り付けることで、離れた場所を繋ぐことができる。
プレートをドアに貼り付けると、プレートが薄く光り、中央のLEDランプが黄色だったものが青色に変わった。
再びドアを開けると、[チリンチリン!]と呼び鈴のようなものの音がなった。
中を見回すと、そこは懐かしい[魔道具屋リリス]の店内だった。
「いらっしゃい。」
中から小さな女性が出てきた。店主のリリスさんだ。
「おはようございます。リリスさん。」
「おはよう。無事ダイダロスと繋がったみたいだね。」
「ええ、これから、またお世話になります。」
「こちらこそ、よろしくね。」
「では、また後ほど。」
「ああ、私もヒマなときは、そっちに遊びにいくよ。」
ドアを閉じて、次の目的地に向った。
再生作業室に入ると学校の体育館くらいある部屋はガランとしており、まだ何もなかった。
右側の壁には、先ほどと同じようなトビラが設置されていた。上には[ゼータ再生作業室]と書かれたプレートがついている。
オレはそこに、また転移ドアプレートを貼り付けた。プレートは薄く光り、LEDランプが黄色から青色にかわり、向こう側と繋がったことを示した。
ガチャリ!
リンダが待ちきれないとばかりに、トビラを開けて中に入っていった。
「ピートおるかぁ?!」
オレたちもリンダに続いて中に入ると、そこには他に誰もいない室内で、抱き合う男女がいた。黒髪の男女、ピートとアカネだ。
ピートたちは、リンダに気付くと、バッと離れて真っ赤になった。
「こ、これは、オーナー、おはようございます。」
「おはようなのじゃ。おまえたち、朝っぱらから、こんなところで、じゃれあっているのではないわ、そう言うのは自分たちの部屋でやれ、よいな? 」
「は、はい。申しわけありません。以後気をつけます。ところでオーナー、ついにダイダロスと繋がったんですね?」
「ああ、ダイダロスの方もこちらと同じ規模がある。早速、準備作業を始めてくれ。」
「わかりました。」
「ここが私の作業室ですか?」
サヨさんが、目を輝かせて聞いてきた。
「ああ、まだこの部屋には机とイスしかないけどね、製図版とか必要なものは、お金を渡すから、自分で買い揃えてね。」
ここは、2階にある個室の1つ。広さは10畳ほどで、空の大きな本棚に、机とイスがある。サヨさんのために用意した部屋だ。
「はい、ありがとうございます。」
そして、ここにも壁にはりつけただけのドアがあった。ドアの上には[遺跡]と書かれたプレートがある。
そのドアに転移ドアプレートを貼り付けた。プレートは薄く光り、LEDランプが黄色から青色にかわり、向こう側と繋がったことを示した。
ガチャリ
「さ、サヨさん。こちらにどうぞ。」
オレはドアを開け、中に入った。
中は10畳くらいの広さで、床も壁も天井もピッカピカの御影石だった。中央に御影石に嵌った80インチくらいのモニターがあり、その手前に石と一体化したキーボードがあった。
「こ、ここは?」
サヨさんが大きく目を見開いて、部屋を見回している。
「ここは、ゼータとダイダロスの中間にある遺跡の中だよ。以前探索した時に転移ドアを取り付けておいたんだ。」
ブウン
オレは机の端にあったボタンを押した。すると画面に[リムルウィンドウズ]なる文字が浮かび上がり、その後、オレが知るコンピュータの画面になった。
「これは、おれたちの前にこの世界に訪れた日本人の転生者が残してくれたコンピュータなんだ。これにオレのノートPCから、CADや3Dのソフトを入れておいたから、開発に使ってね。」
「はい。早速さわってもいいですか?」
「ああ、どうぞ。」
サヨさんは、目を輝かせ、コンピュータ端末をいじりだした。
うん、いい目をしている。これから、この子がなにを生み出してくれるか、楽しみだ。




