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大空への挑戦

「フライ!」


オレの左腕に嵌められたブレスレットの無色の魔石が輝き、柔らかな光りが障壁を張った。黒い魔石が輝き、体が空気に溶け込んだように軽くなった。最後に緑の魔石が薄く輝き、オレの周りに柔らかな風が吹く。


よし、行くぞ。オレは上を見上げて上昇するように念じた。


バビュン!


高速で上昇したオレはあっと言うまに雲を突き抜けた。


わわ、下降、下降!


ドカン!


途端に急降下し、激しく地面に激突し、人型の穴が開いた。


「マサルさん! 大丈夫?!」


「ああ、大丈夫、このバリアは強力みたいだから。」


オレはクリスさんに手を引かれて穴から抜け出した。


遺跡でもらった汎用魔法ブレスレットには飛行を可能にするフライなる魔法が最初から組み込んであった。


これは、安全のために無属性でバリアを張り、闇属性によって体重を限りなくゼロ近づけ、風属性によって推進力を得ると言った複合魔法だ。


闇と風をバランス良く使うことで、一回の使用で約1時間の飛行を可能とするものだが、この制御がむずかしい。


ダイダロス郊外の草原で30分ほど訓練し、オレはやっとそれなりに飛べるようになった。


「わはは、ほれ、ウィンこっちじゃ、追いかけてこい!」


「ワン! リンダまてぇ!」


オレがふらふらと飛んでいる横でリンダはウィンと変幻自在に飛び回って鬼ごっこを楽しんでいた。


ビュビュン!


2陣の風が通りすぎた。


クリスさんとデイジーちゃんは急上昇したかと思うと、急降下し、地面スレスレで2手に別れて反転上昇した。


あれって、下向き空中開花!? ブルーインパルスかよぉ! なんで、あんなことがスグに出来ちゃうわけ?


くそ、天才どもめ!


凡人のオレは、それから残りの30分を費やして訓練し、少しだけ上達した。





30分後、オレたちは谷川を見下ろす崖の上にいた。ここはダイダロスとタイタンの間にあり、ダイダロスからだいたい100キロくらいだ。ここからタイタンまでは更に800キロほどある。フライの魔法を使いこなすことができたからこそ、この短時間でここに辿りつけた。


魔法ブレスレットには指輪と同じく、LEDによる魔石の残存魔力を示すインジケーターがついている。これは指輪と同じく、魔石1つにつき4つあり、8つの魔石があるブレスレットには合計32ものLEDインジケーターがついている。


フライの魔法は無属性と闇属性と風属性の魔石の魔力を1回につき1つずつ消費する。つまり、1セットこれがあれば、1時間×4回の飛行が可能になる。


オレたちの魔法ブレスレットには今、7属性全ての魔石と風属性の魔石が1つ予備でセットされている。


「よし皆、オレが最初に撃つから、後から同じとこに集中して、撃ってくれ。」


リンダ、クリスさん、デイジーちゃんが頷くのを確認して、オレは谷の反対側の崖に向けてブレスレットのついた左手を伸ばした。


「バレット!」


目の前に岩の砲弾が現れ、勢い良く射出された。


ドカーン!


崖が少し崩れ、岩が下の谷川に落ちていった。


「「「バレット!」」」


ドガガガーン!


3発の岩砲弾が放たれ、更に崖が崩れ、岩が下に落ちて行く。


「もう1度だ。バレット!」


「「「バレット!」」」


ドガガガガガーン!


もう4発の岩砲弾が放たれ、反対側の崖は完全に崩壊し、岩の雪崩が谷川を襲い、それによって谷川は完全に塞き止められた。崩落によって形成されたダムに水が徐々に貯まっていっている。これでイナゴの大群が到達する頃には、それなりのダム湖になっていることだろう。


「よし、成功だ。次はイナゴのサンプリングだ。」





更に30分後、オレとクリスさんはタイタンの街に近い上空にいた。


下の畑には黒い雲みたいなものが気持ち悪く蠢いていた。


オレは恐る恐る高度を下げていく。


ビシ! ビシ! ビシ!


バリアにイナゴが3匹が張り付いた。


オレはそれに手を伸ばし、用意した袋に回収する。


ふぅ、なんとかサンプルを回収できた。さて、帰るか。


ビビビビビビビビビビビビシ!


気が緩んでもう少し高度が落ちた途端にイナゴが大量にバリアに張り付いてきた。


「うええええ?」


バランスを崩したオレはパニックとなり、そのまま墜落してしまった。


ドゴーン! ブワワ!


墜落した場所にはイナゴが雪のように降り積もって、蠢いていた。うええええ、気持ち悪い!


オレはさらにパニックになり、頭が真っ白になってしまった。


「マサルさん?! トルネード!」


パニックになったオレをクリスさんが助けに来てくれた。


オレの周りのイナゴをトルネードで吹き飛ばす。


クリスさんは飛行中にトルネードを使ったことで、大きくバランスを崩すが、スグにたて直し、オレを抱き上げて急上昇した。


500メートル以上の高度になると、イナゴもすっかりいなくなった。


「もう大丈夫よ、マサルさん。」


「うう、クリスさん。怖かったよぉ。」


オレはクリスさんに強く抱きついていた。くそ、この皮鎧、邪魔だなぁ。


「マサルさんたら、本当に、あたしがいないとダメなんだから。」


「うん、オレは、クリスさんがいないと、ダメダメだから、しっかり守ってね。」


「はいはい、じゃあ、このまま、ダイダロスに帰るわよ。」


「お願いします。王子さま。」


クリスさんてば、本当に男前、オレの王子さま!


オレはクリスさんに、お姫さま抱っこされながら、空を飛んでダイダロスに帰った。

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