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ダイダロスに迫る危機

ダイダロスの街の壁は5メートルくらいあり、ゼータのものよりも高い感じだ。


長さ、街全体の規模も恐らくダイダロスの方が上だろう。


門の手前で、クリスさんがイーグルを馬車から切り離した。荷台にあった鞍を載せて固定する。


クリスさんがヒラリとイーグルの上に跨る。


「お嬢様、お手を!」


「おぅ!」


クリスさんの手に捕まり、リンダが引き上げられ、クリスさんの前にちょこんと座る。


「マサルさんも!」


「う、うん。」


オレもクリスさんの手に引き上げられ、馬上の人となる。うわ、思ってたより、高くて怖いよこれ。


「マサルさん、しっかり捕まっててね。」


「はい!」


オレは後ろからクリスさんの腰をしっかり抱きしめる。


しかし、クリスさん男前だなぁ、それに比べてオレのなさけないこと……いやいや、オレは頭脳派なんだ。頭脳を使った活躍でクリスさんにいいとこみせちゃる!


「では、デイジー、荷物の方はたのんだぞ。」


「あいよ、任せておきな。」


デイジーちゃんは、ホークだけとなった馬車をゆっくりと動かし、荷物チェックの行列の方に行った。


「よし、じゃあ、いそぐのじゃ、クリス。」


「はい。」


オレたちは、ほぼノータイムで人が通過している街門に向う。


身分証を見せて、滞りなく、街中に入った。





馬で街の中心のメインストリートを疾走する。


ダイダロスの街の道はゼータと同じように全て石畳が敷かれている。道幅はゼータと違って水路がない分広い気がする。馬で走るには良い道だ。


建物はレンガ造りのものと木造のものが、半々といった感じだ。


商店などが立ち並ぶ道を通り過ぎ、中心に噴水がある広場を過ぎると高級住宅街のような感じになった。


やがて正面にホワイトハウスのような立派な建物が見えて来た。


門の手前で、オレ以外の2人はヒラリと馬から飛び降りた。オレ? オレはまぁ、のてのてって感じだった。


リンダが番兵らしき金属鎧を着た男に話しかける。


「我はリンダ・キャメロン、ラルフ・キャメルの娘だ。至急、ガロン・ダイダロス殿にお目通り願う。緊急事態なのじゃ!」


「キャメル財閥のご令嬢?!すみません、身分証を提示願います。」


リンダは番兵に身分証を見せる。


「……確かに、少々お待ちください。」


番兵の男は門の中に駆け込んでいった。そして3分ほどで戻って来た。


「お待たせしました。ガロン様がお会いになるそうです。こちらへどうぞ。」


番兵の男の先導で門を通過し、ホワイトハウスのような建物の前まで来た。


「どうぞ中へ。馬は私が預かっておきましょう。」


クリスさんが引いていたイーグルの手綱を番兵の男に渡し、オレたちはトビラを開いて中に入った。


「ようこそ、お客様。こちらへどうぞ。」


入ってすぐの所にいかにも執事といった感じの初老の紳士がいた。


執事さんの案内で、オレたちは応接室らしき一室に連れてこられた。広さは12畳ほどかな?華美な装飾はないが、センスはいい。


部屋にあった長椅子ソファにリンダとオレで並んで座る。クリスさんは、オレたちの後ろに立つ。


「どうぞ。」


メイドさんが紅茶をテーブルに出してくれた。


オレはそれを一口すする。


いい香りだ。ちょっと焦っていた気持ちが沈静化されていく気がする。


執事さんとメイドさんが出て行くと、ほぼ同時に中年の紳士が部屋に入ってきた。半分くらい白くなったブラウンの髪をオールバックにしている。この人がガロン・ダイダロスか?


オレたちは立ち上がって出迎える。


「リンダちゃん、よく来たね。2年ぶりくらいかな?」


「ガロンおじ、久しぶりなのじゃ。」


2人はがっちりと握手した。どうやら知り合いらしい。


「今日はラルフはいないのかい? ま、座ってくれ。」


皆でソファにかけなおす。


「失礼しますのじゃ。我は今、親から独立してキャメロン商会なるものを経営しておるのじゃ。」


「ほう、その歳で経営者とはたいしたもんだ。」


「世辞はよい。それよりガロンおじ、大変なのじゃ! マサルあれを……」


「リンダ、あれを見せるのは相当信用できる人でないと……ガロンさんは大丈夫なんだね?」


「ああ、ガロンおじは信用できる。」


「よし、じゃあ、皆で見るために、プロジェクターを使うか、ガロンさん、カーテンをしめますよ?」


「ああ、それはかまわんが、君は?」


「ああ、紹介しとくのじゃ。ガロンおじ、この男はマサル・ヒラタケ、我がキャメロン商会のSEじゃ。」


「マサル・ヒラタケです。よろしくおねがいします。」


オレはガロンさんに深々とお辞儀した。


「ああ、私はガロン・ダイダロスだ。この街の領主をしている。こちらこそ、よろしく頼む。」


挨拶を済ませたオレはカーテンを閉めて薄暗くなった室内で、PCバッグからスマホより少し大きいくらいの携帯プロジェクターを取り出した。


スマホと接続して、応接室の白い壁に映像を映し出す。


「こ、これは!?」


そこには、作物を食い荒らすイナゴの大群が映し出されていた。


「今、現在のタイタン周辺の畑の様子です。」


「何?! タイタンだと? この街の隣じゃないか、じゃあ、このイナゴの大群が我が街周辺の畑にも来る可能性が……」


「はい、残念ながら、もう一部は、この街の方向を目指して進行しだしています。」


「これは本当なのか? 俄かには信じられない。いや、信じたくない。ちょっと失礼するよ、魔道具でタイタンの街と連絡をとってみる。」


ガロンさんは、足早に部屋を出て行った。そして3分ほどして青い顔で戻って来た。


「君たちの言う通り、タイタンの街周辺の畑はイナゴの大群に襲われ、壊滅状態だそうだ。対応に追われ、こちらに連絡するどころではなかったらしい。まぁ、連絡を受けたところで、被害を防ぐ手段は皆無なんだが……このダイダロス周辺はアバタール王国随一の穀倉地帯なんだ。ここの作物がやられたら国中の食料が不足することになってしまう。」


ガロンさんは頭を抱えて蹲ってしまった。


「ガロンさん、顔を上げてください。オレたちは悪い報せを持ってきただけではありません。対応策はあります。ここは我がキャメロン商会に任せてください。」


「ガロンおじ、マサルは凄腕のSEなんじゃぞ!とってもたよりになるのじゃ!」


リンダはガロンさんに、ニカッと笑いかけた。


「リンダちゃん……ありがとう。分かった、君たちに任せる。」


「おぅ、任せるのじゃ!」


「……ところでリンダちゃん、SEってなんだい?」

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