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とある盗賊たちの悲劇

小高い丘の上で下の街道を通る馬車を見つめる男がいた。ボロボロの布の服に皮鎧を着ている。彼は最近この周辺を荒らしている盗賊の頭だ。


「頭、馬車が弓の射程内に入りましたぜ。」


後ろから、これまたボロボロの服を着た薄汚い男が声をかけた。


「よし、予定通り、馬を狙って撃て、足を止めるんだ。」


「へい!」


部下の男がハンドサインで指示を出した。


ビュンビュン!


馬車の馬に向けて10本以上の矢が飛んだ。


それは、ほぼ全て馬に命中するかに見えた。


カンカカカン!


しかし、矢は馬の手前5メートルくらいのところでなにかに弾き返されて地面に落ちた。


2頭の馬は何事もなかったかのように歩みを進めている。


「なに? 結界か? 移動中に結界を張っているのか?」


「おそらく……どうします?頭?」


「ええい、ちょこざいな!ありったけの矢を放って結界を壊すのだ!」


「へい!」


部下の男が大きな身振りで全ての矢を撃てといった感じのサインを下に送った。


ビュビュビュビュビュン!


大量の矢が降り注がれた。もう馬だけじゃなく馬車全体が標的にされている。


カカカカカカカカカカカカン!


しかし、矢はことごとく弾かれ、地面に落ちていく。


ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュン!


カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカン!


弾かれた矢が馬車の結界の周りを囲い、矢の道のようになっていた。それでも結界はびくともしていないようだ。馬車は優雅に矢の道をゆっくりと進んでいた。


「頭、矢がつきました。」


「なに? おのれぇ、なんて丈夫な結界だ。こうなったら仕方ない。先生、お願いします。」


「うむ、まかせるがいい。」


後ろから黒いローブを着て、木の杖を持った男が出てきた。いかにも魔法使いっぽい姿だ。


「頭、でもそれでは荷物が……」


「多少は仕方がない。今はとにかくあの馬車を止めねばならん。」


「いくぞ? ……『自然に散らばりし火の意志たちよ、我に力をかしたまえ、焼き尽くせ、ファイヤーボール!』」


ローブの男が木の杖を前に掲げ、呪文らしきものを唱えると、その前にバレーボールぐらいの火の玉が現れ、馬車に向って飛んでいった。


ゴゴゴオオオオオ!


火の玉はまっすぐに馬車に飛んでいった。


パアアアアン!


馬車の手前で火の玉は大きく弾けて広がり、それを覆い尽くしたかに見えた。


「……やったか?」


しかし、炎が収まると馬車はなにごともなかったかのように、優雅な歩みを続けていた。


「なんなんだ、あの結界は! もういい! 全員に正面から突っ込んで攻撃させろ!」


「へい!」


部下の男は横の木に繋げていた馬に飛び乗った。


「全員、突撃!」


そう叫んで、大きく手をふって、丘を馬で駆け下りて行った。


盗賊頭も木に繋げてあった馬に飛び乗る。


「先生、オレの後ろに乗ってくれ!」


「うむ。」


ローブの男が盗賊頭の後ろに乗る。


「いきますよ! はぁ!」


盗賊頭の馬も丘を駆け下りていった。


「「「「「「わあああああああ!」」」」」」


馬車の手前の茂みに潜んでいた薄汚い男たちがいっせいに姿を現し、槍を手に馬車に突撃していった。


その数は50人くらいだろうか? バラバラに馬車に群がっていった。


「いけぇ、馬車をつぶせぇ!」


丘を馬で駆け下りて追いついてきた部下の男がその集団の中心あたりで叫んでいた。


バチチチィバチィ!


「ぐあ!」「ぎゃあ!」「げふ!」


馬車から5メートルくらいのところで、盗賊たちが雷に打たれたように光を発し、次々に倒れていった。


「な? なんだ? 結界があるだけじゃないのか?」


部下の男が疑問に思う間も次々に盗賊たちは光を発し、倒れていった。


「く、なんなんだ。これは……ぐべべ!」


そして部下の男も馬ごと光を発し、馬と共に倒れこんだ。


盗賊頭が現場に来た時には、50人以上いた盗賊たちが全て倒れて白目をむいて、体をビクビクと痙攣させていた。


「お、おい! どうしたんだ?」


この惨状を尻目にターゲットの馬車は今尚、何事もなかったかのように、ゆっくり優雅に進んで、盗賊頭から離れて行こうとしていた。


「おのれぇ、なめやがってぇ! 先生、オレが馬で近づきますから、とっておきのやつをお願いします。」


「わかった。」


盗賊頭が馬で馬車を追いかけだした時、馬車後ろの幌がめくれ上がり、プラチナブロンドの幼女が姿を現した。


「いいかげん。しつこいのぅ。このクズどもが……」


幼女はめんどくさそうに、盗賊頭たちを見て言った。


「それは、こっちのセリフだガキが! 馬車を止めてその中の荷物をよこせ!」


「いやじゃ、おまえらクズにやるような荷物はひとかけらも積んでおらんわ!」


「後悔するなよクソガキ!先生、やっちまえ!」


「うむ、『大いなる火の意志たちよ……』」


「これでもくらえ! ブリザード!」


幼女はその右手を盗賊頭たちに向けたかと思うと、その手が緑と水色に光り、そこから極寒の冷気を含んだ竜巻が巻き起こった。


ゴオオオォオオ!


「な、なにぃ! 高度な複合魔法をこんな幼女が詠唱なしでだとぉ?」


カチーン!


盗賊頭とローブの男は驚愕の表情をしながら、馬ごと凍りついた。


バサ!


幼女が後ろの幌を閉じると、馬車はまた何事もなかったようにゆっくりと去っていった。


「アオオーーン!」


草原に潜む狼の遠吠えが近くでした。動けなくなった男たちはそれらの肉食獣たちのかっこうのエサとなるだろう。

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