社員旅行
「いけぇ、デイジー、人魚なんぞに負けるなぁ!」
「おうよ!」
リンダを乗せたゴンドラをデイジーが漕いで猛烈なスピードで疾走している。
「アニスさん、このままじゃ負けちゃいますよ!」
「そうね、そろろろ本気だしてやろうかね……しっかりつかまってるんだよ!それぇ!」
ドプ!
アニスさんの姿が一瞬全て水に沈んだかと思うと顔だけ出てきた。
ザパパパ!
「おおおお?!」
猛烈な勢いでオレとクリスさんを乗せたゴンドラは走り出した。思わずオレはクリスさんに抱きつく。そんなオレをクリスさんはしっかり抱きとめてくれた。クリスさんは頼りになるなぁ。
オレたちのゴンドラがリンダたちのゴンドラを追い抜いた。
「なにぃ?! まてぃ! ええぃ、デイジーがんばるのじゃぁ!」
「くっ、流石人魚、お嬢、すまねぇ、ちょっとこれはムリだわ。」
ぐんぐん、オレたちのゴンドラは速度を増し、リンダたちのゴンドラを引き離していく。
「ええい、こうなったら奥の手じゃ!」
リンダはゴンドラの後方に右手を掲げると叫んだ。
「トルネード!」
右手の指輪が緑に光ったかと思うと、そこから竜巻が発生した。
ゴオオオオオオォオオ!
リンダたちのゴンドラは空を飛ぶようにすっとんでいった。……ゴールとは全然違うあさっての方向に……
海側から海岸に近づくと良い臭いがオレたちの鼻を刺激した。
「マサルさま、クリスさま、こっちですよぉ!」
砂浜でバーベキューらしきものを焼いていたピートが手を振っていた。
「あつつ!」
オレはほどよく焼けたエビの殻をむいた。うん、美味しそうだ。
「はい、クリスさん、あーん?」
パク
クリスさんが、オレの剥いたエビにかぶりついた。ゆっくり咀嚼して笑顔になる。
「美味しいです。はい、マサルさんも、あーん?」
クリスさんが、ホタテみたいな貝の身を手に取り、オレに差し出してくる。
パク!
「きゃ!」
オレはクリスさんの指ごと口にいれた。
キュポン!
クリスさんの指をなめまわしたあと、貝の身をゆっくり咀嚼する。
「うん、美味しいよ、クリスさん。」
「もう、マサルさんたらぁ。」
クリスさんは、オレがなめまわした指をくわえて真っ赤になっている。
ザパ!
大量のワカメを身に着けたなにかが海から現れた。
「あいかわらずじゃのぉ、このバカップルどもが!」
「うわぁ、海坊主?!」
「我じゃ、リンダじゃああ!」
「ああ、リンダたちか、無事でよかった。」
後ろには同じくワカメまみれのデイジーちゃんがいた。
「……マサル、お主、本当に心配しておったのか?」
「も、もちろんだよ、ねぇ、クリスさん?」
「ええ、本当に皆、心配してたのよ、ねぇ、ピートさん?」
「はい、もちろん、心配してました。無事でなによりですオーナー」
オレたちキャメロン商会の4人とキャメロン再生社の創業メンバー6人、それに人魚のアニスさんは、ゼータの港の沖にある無人島に来ていた。
オレが社員旅行なるものを提案したのが実現したのだ。
やっぱり、社員同士のコミニュケーションは大事だよ、うん。
「うまい、うまいのじゃああ!」
リンダは海鮮バーベキューを口いっぱいに頬張っている。
「お嬢、そんなに慌てて食べると喉につまるよ?」
「大丈夫なのじゃ……むぐ、むぐっぐぐぐ!」
「いわんこっちゃない。ほら、水だよ。」
「んぐんぐ。ぷはぁ、すまん、デイジー。」
「どうですか?マサルさん。」
テントで着替えたクリスさんが出てきて、オレの前に立つ。
真っ白なワンピースの水着に身をつつんだクリスさんは水の妖精のようだった。この世のものとは思えない美しさがある。ああ、このひとがオレの彼女なんだと思うと涙が出てきた。
「きれいだよ、本当にきれいだクリスさん。」
「ありがと……ちょっと、なに泣いてるのよ、マサルさん。」
「マサル、我の水着も見るのじゃ!」
リンダは何故か紺のスクール水着を着ていた。胸には[りんだ]と書いてある。
「…………」
「ふむ、我の美しさに魅了されて言葉が出ぬか。」
「いや、違うから! ってかなんでスクール水着なんだよ!? なんで日本語で名前書いてあるんだよ!」
「マサルのPCの中にあった画像を参考にしたのじゃ、日本語はマサルが教えてくれたではないか。」
「…………」
クリスさんが、ジトっとした目でオレを見ている。
「あ、いや、クリスさん、違うからね、単なる資料としてもってただけだからね。」
「マサル、海に入るぞ! 我に泳ぎを教えてくれ!」
「え、でも、オレはクリスさんと……」
「あたしのことは、あとでかまってくれればいいから、お嬢様に泳ぎを教えてあげて……ね?」
「はい……」
「ほれ、いくぞ、マサル!」
オレはリンダに強引に手を引かれて海に入った。
「よし、上手い上手い。その調子だリンダ。」
オレは浅瀬でバタ足をするリンダの手を引いていた。泳ぐのは前世もあわせて初めてらしいが、もともと運動神経は良いほうみたいで、リンダはすぐに泳げるようになった。
勝手に泳ぎ始めたリンダを横目にオレは海岸の方を見た。
クリスさんとデイジーちゃんはビーチパラソルの影でブルーシートの上に寝転んでくつろいでいた。
デイジーちゃんは、赤いビキニを着ていた。相変わらず、ボン、キュ、ボンのナイスボディだ。
「マサル、どこを見ておる。クリスに言いつけるぞ?」
気がつくと、リンダが横でジトっとした目で見ていた。
「え? いや、デイジーちゃんの水着なんて見てないよ?」
「ふん、まぁよいわ、もう少し我につきあえば、黙っててやる。」
「はいはい。」
(この調子ならまだ我にもチャンスはありそうじゃな、今にみておれよ。)
「ん? なんか言ったか?リンダ。」
「いや、なんでもないのじゃ、今度はさっきマサルがやっていた。上を向いて泳ぐやつを教えてくれなのじゃ。」
「はいはい。」
このあと、再生社の皆も交えて、ビーチバレーをやったりして夕方まで、楽しくすごした。




