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いきなりピンチ

気がつくとオレは草原に寝転んでいた。


起き上がって体に異常がないかを確かめる。


オレ、確か駅のホームに落ちて……電車に轢かれたよな?


しかし、体には打撲の跡も傷の跡もない。助かった……のか?


横に落ちていたPCバッグを肩に下げなおし、周りを見てみる。


一面の草原だ。様々な高さの草があり、時々2メートルほどの木がちらほら見える。TVで見るキリンなんかがいるアフリカの草原みたいな感じだ。


ここは何処だ? アフリカの草原? もしかしてあの世?


ホッペタをつねってみる。イタイ、痛覚はあるので夢とは考えにくい。


スーツの内ポケットからスマホを取り出して確認してみる。


時刻は午前8時35分。電波は圏外。GPSも使えない?!


オレは空を見上げる。雲ひとつない快晴だ。これでGPSの電波がキャッチできないなんてありえない。


ここは地球じゃないのか?


とりあえず上りと思われる方向に歩き出した。遠くを見渡せる場所に出れば状況を少しでもつかめるかもしれない。





ガササ!


歩き始めて30分、そろそろ革靴で草原を歩くのにうんざりしていたところで、少し先の草が揺れた。


ガサ、ガササ、


後ろや左でも草が揺れた。


なにかに囲まれてる?


背中に冷たい汗が流れた。


ノソリ、


草陰から大きな狼のようなものが現れた。


大型犬を凌ぐ大きさがある。鋭い牙があり、その口から涎がたれている。


やばい、やばい、やばい!


「うわあああああああああぁぁああ!」


オレは音が唯一しなかった右へ大声を上げながら駆け出した。


「ガウゥ!」


「ぎゃあああ!」


正面にいた狼はオレにあっさり追いつき、飛び掛ってきた。右足に食いつかれ、やつの牙が食い込む。


イタイ、イタイ、イタイ!


狼が草陰から2匹追加で現れ、そいつらも飛び掛って来た。


もうだめだ。オレは両手を顔の前にもってきてブロックして身構えた。


「「ギャン!」」


腕にも食いつかれると思って身構えていたが、その予想は外れた。


ブロックを緩めて前を見ると2匹の狼の背中に矢が突き立って、地面に縫い付けられていた。


「ギャン!」


オレの右足に食いついていた狼の背中にも矢が突き立った。


狼の口の力が緩んだので慌てて足を抜いて抜け出し、後ずさって距離をとった。


「……………………!」


知らない言葉でオレに呼びかける声が聞こえてきた。なんだこれ、英語じゃないし、ヨーロッパ系の言葉でもない?


声がした方を見ると人影が2つ、近づいてきた。


近づくと2人とも皮鎧を着た女性だと分かった。1人は弓を持っていて、金髪をおさげにした身長が180くらいあるスラっとした美人さんだ。もう1人は赤髪ショートヘアのグラマーさんでこの子は170くらいかな? 腰には長剣らしきものを佩びている。


まぁ、オレの身長が150しかないからね、女性でも成人していればだいたい見上げることになる。


金髪おさげの子が心配そうに膝をついてオレのことを覗き込んできた。


この子が矢を撃ってオレを助けてくれたんだな。


「ありがとう。助かった。」


とりあえず、日本語でお礼を言った。


「……………………」


やはり、オレにはサッパリ分からない言葉で話しかけてくる。


「すまない。分からない。……いた!」


オレは首を横に振り、立ち上がろうとしたが右足に激痛が走り、再び倒れこんでしまった。


「………………!」


おさげの子が叫んでオレに駆け寄り、右足を掴んで状態を確認してきた。


「ウォーター」


オレの右足の傷に左手をかざしたと思うとその手の中指にあった指輪が水色に光った。


空中に水が現れ、オレの足の傷に降り注がれた。なんだこれ?魔法?


血と汚れが洗い流されると折れた狼の歯が3本突き刺さっているのが確認できた。


彼女がその1つを掴むと勢い良く抜いた。


「いてえええええええ!」


「………………!」


「は、はい!」


男でしょ、我慢しなさい! って言われた気がして、思わず返事をしていた。


のこりの2本も、彼女は容赦なく抜いたが、オレは叫び声をあげずに我慢した。


「………………」


「ええ、男ですから、」


えらい、よく耐えた、って言われた気がしたので、そう答えた。


彼女はそう答えたオレにニコリと微笑んだ。あう、可愛い、かっこいい。惚れてしまいそうです。


「ウォーター」


再び空中に水が現れ、傷口の血が綺麗に洗い流された。あれ、これは英語?


「ヒール」


これも英語かな? 今度は彼女の左手の人差し指にあった指輪が白く輝いた。


空中にソフトボールくらいの光の玉が現れたかと思うと、それがオレの傷口に覆いかぶさった。


痛みが急速に引いていった。光の玉が消えると傷は綺麗に治っていた。


やっぱり魔法だよな。オレは魔法がある世界に来てしまったのか?


オレは立ち上がり、右足を確認する。全然痛くない。治った?


「治ったよぉ、ありがとう!」


オレは、おさげの子に思わず抱きついた。


バチン!


彼女は顔を真っ赤にしてオレの頬っぺたを叩いた。


オレの左頬には綺麗な紅葉マークができていた。


すみません、調子にのりました。

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