新婚初夜?
オレたちキャメロン商会の4人は4階建ての大きなビルを見上げていた。メインストリートにこそ面していないものの、商業ギルドとほぼ同じくらいの規模があった。
「本当にここなのか? リンダ。」
「ああ、大きいじゃろ?」
幼女はない胸を張ってふんぞりかえっている。
正面のエントランスを入ると受付があり、見知った金髪の女の子が座っていた。
「いらっしゃいませ、オーナー。」
「おぅ、ご苦労なのじゃ、リンネ。ピートはおるか?」
「はい、社長は今、再生作業室にいます。」
ここはキャメロン再生社の自社ビルだ。リンダが10億Gを追加出資して、ピートに中古のビルを調達させたのだ。
「そうか、再生作業室はこっちじゃったな?」
「はい。」
エントランスホールには受付だけがあり、奥に階段、左右にトビラがある。
リンダは右側のトビラの上部に自分の身分証をかざした。
カチ
ドアの施錠が外れる音がした。
「このビルの要所要所にはオートロックのトビラがあっての、キャメロン商会かキャメロン再生社の登録がある身分証がないと開けることができないようになっているのじゃ。」
トビラを開けて中に入った。
中は学校の体育館くらいの広さがあり、長机が等間隔で余裕をもっておかれ、その上に魔力補充器が複数置かれていた。そこに魔石を並べて魔石の再生を行う作業員と再生された魔石をチェックする作業員がバランスよく配置されていた。皆、テキパキと魔石の再生作業をしている。
「これはオーナー、よくいらっしゃいました。」
作業を監督していた黒髪黒目の青年がリンダに気付き、話しかけてきた。
「おぅ、ピート、調子はどうじゃ?」
「はい、順調です。空魔石を有料で回収するようになってから、回収量が劇的に上がりました。ゼータだけでなく、周辺の村や町からも大量に持ち込まれているようです。」
「そうか、有料で回収して多少コストがかかっても、供給調節を上手くやって、売値を安定させれば十分に利益だ出るはずじゃからな。作業員の確保のほうはどうじゃ?」
「それも順調です。ほぼゼータ周辺で魔人化した人間は元に戻せたと思います。その殆どがここで働くことを希望し、皆、生き生きと仕事をしていますよ。」
「それはなによりなのじゃ。」
「あ、そうそう、オーナー、魔人化問題に頭を悩ませていた街の領主様が是非お礼をしたいと言っているのですが……」
「うむ、ピートが受けておけ。我はこの姿じゃからな、あまり公に姿を晒すのは良くない。」
「はぁ、わかりました。」
「よし、ではピート、製塩設備に案内せよ。」
「わかりました。こちらへどうぞ。」
ピートは一旦エントランスホールへ出て階段を下へ降りていった。
地下へ降りるとエントランスホールと同じようなところがあった。どうやらこのビルは各階の階段前にこのようなホールがある造りらしい。
1階と同じようにホールの左右にトビラがあり、ピートは階段から見て右側のトビラに自分の身分証をかざした。
カチ
ドアの施錠が外れる音がした。
「どうぞ。」
ピートと共にオレたちはその中に入った。
中は再生作業室と同じくらいの広さがあり、壁に太いパイプがいくつも張り巡らされていた。パイプの材質は見た目は塩ビっぽい。鉄だけでは海水に触れるとすぐに腐食するからってことで職人さんに考えてもらったら、こうなった。どうやら鉄の管に植物のゴムをライニングして作ったらしい。
どうしてそんなこと知っているかって? そりゃあこの設備装置の基本設計をしたのはオレだからな。完成した実物を見るのはこれが始めてなんだか……
「このビルは水路に面していまして、地下のこの部分はその水位より低いのです。それを利用してあの壁にあるパイプで水路の海水を取り込んでいます。」
「パイプから漏水して水没の危険はないのか?」
「まぁ、その可能性はゼロではありません。だから、万一にそなえて、非常時には避難経路に水防結界をはるようにして、作業員の安全を確保しています。」
ピートはパイプが集中している部分に歩み寄り、その一部を指差した。
そこにはY字の継ぎ手のような物があった。中央に六芒星が描かれており、その中にLEDのようなランプが緑に灯っていた。その隣にUSB端子もあるが腐食しないようにフタをしてある。
「この部分が分子分離装置です。ここに液体や粉体などの流体を通すと、主成分とその他に分子レベルで分けることができる……でしたっけ? マサルさま?」
「ああ、リリスさんから買い取った魔道具の中にあったんだ。何故か中途半端にしか分離できないようになってたんだが、オレが調整して、100%主成分とその他に分離できるようにした。海水をこれに通すことによって1回目で水と雑多な塩類に分離。そして雑多な塩類をもう1回これに通すことによって、純粋な塩を取り出すことができるんだ。」
「現在、この製塩装置は3セットあり、1日に30樽ほどの塩を得ています。」
複雑に絡み合ったパイプが3セットあり、それぞれの下に樽が置かれていた。そこに細いパイプからチョロチョロと白い粉が落ちている。
「そうか、魚介類を仕入れた残りの部分にこの塩を満載して持って行こうと思っていたのじゃが、貯めるのにもうしばらくかかりそうじゃな?」
「そうですね、すみません。もうしばらくお待ちください。」
「うむ、まぁよい。では、塩が貯まるまでの残りの日はここの宿泊施設を使うとしようかの。」
オレとクリスさんは、寝室におかれたテーブルを挟んで向かい合って座っていた。
オレは普通のパジャマ、クリスさんは、下着の上に白いスリップを着ている。
ここのオーナー向けに用意された宿泊設備はオレたちが商業ギルドで利用していた部屋と同じつくりになっていた。
リンダが今回の製塩設備におけるオレの実績を認め、部屋割りをオレとクリスさんの同室にしてくれたのだ。
そして、何気に新婚初夜のようなシチュエーションになっているのである。ああ、緊張する。
「あ、あの、マサルさん。ふつつかものですが、どうか、よろしくお願いします。」
「い、いえ、こちらこそ、よろしくお願いします。」
お互い真っ赤になって頭を下げあう。
そして、手をとりあって、ベッドに向った。
先にクリスさんがベッドに寝転がり、両手をひろげて微笑んだ。
「来て、マサルさん。あたしをマサルさんのものにして……」
オレはクリスさんに覆いかぶさり、キスをした。
お互いの舌を絡めあい、口の中が1つになったかのような錯覚を覚えた。
唾液が糸をひくのを見ながら口を離し、クリスさんのスリップと下着を脱がせる。
オレもパジャマと下着を脱いで、クリスさんの胸元に口を這わせる。
引き締まって見えるその体は信じられないくらい柔らかかった。
そして、オレはクリスさんの中に入り、夜遅くまで何度も愛しあった。




