魔道具屋リリス
「人魚さん、いいかな?」
オレは、広場横の水路の桟橋で休んでいた緑のロングヘアーの人魚さんに声をかけた。
「アニスよ、いつまでも人魚さんじゃ、なんかむずがゆいわ。新婚さん。」
「そか、じゃあアニスさん。ゴンドラお願いできる?あと、俺たちまだ結婚してないけど……」
「いいわよ。あら、ずっと一緒にいる約束してたじゃない。新婚みたいなもんよ。」
「そ、そうかな? それじゃあ、アニスさんお勧めの魔道具屋に行ってくれるかな?」
隣のクリスさんを見ると真っ赤になって俯いている。相変わらず可愛い。
「いいわよ。じゃあ、乗って。」
オレはゴンドラに片足を乗せて固定し、クリスさんに手を差し出す。
「どうぞ、お嬢さん。」
「ありがとう。」
クリスさんは、オレの手をとり、軽快にゴンドラに乗り込む。それを確認してオレも乗り込む。
「じゃあ、アニスさん。お願いします。」
「はあい。」
ザブン!
アニスさんは桟橋から水路に飛び込み、ゴンドラの前に回りこみ、牽引バーを持って軽快に泳ぎだした。
水路をいくつか経由して幅の広い水路に出た。水路のメインストリートだろうか?多くのゴンドラが行き来している。多くは人が漕いでいるが、アニスさんみたいな人魚が引いているゴンドラもかなりあった。
肉の焼ける良い臭いがしてきた。水路脇にとまっている屋台付きのゴンドラで串肉を焼いていた。
横をみると、クリスさんがその屋台を見ていた。目が合う。
「食べて行こうか?」
「はい。」
「アニスさん、あの屋台につけて」
「はあい。」
屋台に近づくと臭いがさらに高まる。ごついおっちゃんが魔道具らしきものの上で串肉を焼いていた。
「おっちゃん。その肉なに?」
「ああ、これはツナフィッシュのオオトロだ。美味いぞぉ。」
ん? ツナ? もしかしてマグロ? マグロのオオトロ?なんか高そう……
「いくらだい?」
「1串300Gだ。」
あら、意外とお安い。
「2串くれ。」
「あいよ、熱いぞ。」
オレは、おっちゃんから串焼きを2本受け取り、差し出された支払い水晶に自分の身分証をかざす。シャリーン! と軽快な音がして600Gがプール部分から引かれた。
「はい、クリスさん。」
1本をクリスさんに渡す。
「ありがとう。じゃあ、マサルさん、あーん?」
クリスさんは受け取った串焼きの先をオレの口に持ってくる。
パク、美味い、まさにトロトロのオオトロだな柔らかくてジューシーだ。塩だけの味付けがまた素材の味を良く引き出している。
「じゃあ、クリスさんも、あーん?」
パク、クリスさんがオレの差し出した串焼肉を口に含む。ゆっくり咀嚼して、笑顔になる。
「美味しいですね。」
クリスさんの笑顔が眩しい。可愛い。もうホントにこの子と結婚しちゃおうかな?
「……まったく、あいかわらずおあついことで……じゃあ、いくよ。」
オレとクリスさんが楽しく食べさせあいっこをしているなか、ゴンドラは進みだした。
その後、中くらいの水路をいくつも経由して、いつのまにかぎりぎりゴンドラが通れる細い水路にいた。これもう、オレたちだけじゃ戻れないんじゃないかな?
「ついたわよ。」
オレたちは水路横にある階段を上って、石畳の道に出る。振り返って叫ぶ。
「アニスさん、待っててくださいよ。帰っちゃやですよ?」
「はいはい。」
改めて水路を背にしてそこにある建物を見る。
レンガ造りの2階建てのかなり年代物の建物だ。看板がかかっているが、読めない。
「クリスさん、看板、なんて書いてあるの?」
「魔道具屋リリスね。」
「そか……入ろうか……」
カランカラン!
ドアについていた鐘が鳴った。
「いらっしゃい。」
中から赤くて長い髪の小さい女の子……いや女性が出てきた。
身長120くらいか? たぶんリンダと同じくらいだ。ただ、顔つきは大人だ。子供じゃない。こう言う種族なんだろうな、ホビットかな?
「こんにちは、何に使うか分からなくて、安い魔道具あるかな?」
「え? 何に使うか分からないのに欲しいのかい?」
「ああ……で、ある?」
「まぁ……あるよ、こっちだ。」
店員さんは、様々な魔道具が陳列してある中を通り、部屋の隅にオレを案内すると乱雑に置かれた箱を示した。1辺1メートルほどの木箱が3つあり、中にはイロイロな魔道具? が入っていた。
「ここにあるのが、ダンジョン産の雑多なものをまとめて仕入れて、用途別に分類していく中で、結局何に使うか分からなかった魔道具だよ。」
「ほほう。」
オレは魔道具を数点手にとって確かめる。
よし、全部USB端子がある。オレならこれらが何なのかが分かる。
「えと、リリスさん?」
「ああ、店主のリリスだ。よろしくな。」
「あ、はい。オレはマサルです。よろしく。で、リリスさん、これ、おいくらですか?」
「ああ、何に使うか分からないものばかりだ。まぁ、1箱まとめて10000Gでどうだ?」
「3箱まとめてで、少し負かりませんか?」
まあ十分お金はあるが、こう言うのはお約束の駆け引きをした方が良い。値引き交渉も大事な相手とのコミュニケーションだ。
「じゃあ、3箱で27000Gでどうだ?」
「買った。」
よし、これで様々な魔道具が手に入ったな、帰って調べるのが楽しみだ。




