海竜討伐
床が激しく揺れていた。
「おうぇえええ!」
海に盛大に胃の中の物を吐き出した。
「大丈夫? マサルさん。」
クリスさんがオレの背中をさすってくれた。
「ダメ、気持ち悪い。」
オレたちキャメロン商会の面々は何故か船で海に出ていた。
「マサル! 漁の妨げになっている海竜を討伐に行くぞ!」
リンダが突然リビングに入って来て叫んだ。
「はぁ? オレたちは商会だろう? そんなの冒険者に任せておけよ。」
オレはウォーターリングのカスタマイズをしながら答えた。
このウォーターリング、USB接続して調べてみた結果、ウォーターの他にアイスなる魔法もあり、なかなか面白そうなのである。
「それが、ここの冒険者は腰抜けばかりで、なかなか討伐されんのじゃ。このままでは漁ができなくて、我らが魚を仕入れることができんのじゃ。」
「しかし、オレたちだけで海竜討伐なんて、無謀だろ?」
「いや、マサルがカスタマイズしてくれた、このロックリングとウィンドリングがあれば、できる!」
先日、ロックとウィンドをカスタマイズ、複合して完成したバレットの魔法をリンダに見せて自慢したら、自分も欲しいとせがまれ、リンダのロックリングとウィンドリングもバレットが使えるようにカスタマイズしたのだ。
「うーん、クリスさん、どう思います?」
「そうねぇ、あたしたち4人全員がマサルさんのカスタマイズしたバリアとバレットが使える指輪を装備したら……大丈夫じゃないかしら?」
そして冒頭に戻る。なんで船ってこんなに揺れるんだよぉ。
「なんじゃ、マサル、なさけないのぉ。」
クリスさんの膝枕で青い顔をしているオレをリンダが見下ろして言った。
オレたちキャメロン商会の4人は海竜討伐の依頼を冒険者ギルドにだしていた漁船の船長の船に乗り、海に出ているのである。
「そろそろ海竜が出る場所だぞ!」
真っ黒に日に焼けた筋肉ムキムキの船長が操舵しながら叫んだ。
遥か先の海面が爆発するように波立った。
「グギャアアア!」
巨大なヘビのようなモノの頭が海面から出た。その頭にはツノがあり、口には長いヒゲのようなものがあった。それは西洋の竜ではなく、東洋の龍のような姿だった。
目視で300メートルくらいだろうか?
「よし、全員、射撃用意!」
リンダが叫ぶと、デイジーちゃんが右手を前に構え、クリスさんが弓に矢を番えた。クリスさんは結局、使い慣れた弓矢を使うことにしたようだ。オレはまだ気分が悪くて動けません。
「撃てぇ!」
海竜があと200メートルのところでリンダが叫んだ。あ、いや、まだ早いだろぅ?
「「バレット!」」
ドドシュウ!
岩の砲弾2つが海竜に向ってすごい速さで飛んでいった。しかし、やはりまだ早かった。
海竜は反応し、横に避けた。
ザシュシュ!
「グギャアアアア!」
岩の砲弾2つは海竜の首を少し抉り、鮮血が飛び散ったが、致命傷にはまだ遠かった。
ドン!
「グアアアアア!」
遅れて、クリスさんの矢が海竜の右目に突き刺さった。流石クリスさんだ。この距離でも相手の動きを予測して、きっちり急所に当てるなんて、すごい。
ドプ!
海竜は海中に潜った。
「くそ、仕留めそこなったのじゃ!」
リンダが海竜が潜った海面を睨みつけている。
ドドン! ミシ!
「「「きゃああ!」」」
船が大きく揺れ、女性陣が悲鳴を上げた。
海竜が船底に体当たりしたようだ。海中から船を叩き潰す気か? 今ので少し船にヒビが入ったんじゃないか?
くそ、船酔いでしんどいなんて言ってられないな。
オレはふらつく体にムチうって立ち上がった。
右手を前に出して海面を睨む。
僅かに海面が盛り上がった。ここだ!
「ブリザード!」
オレの右手に嵌った指輪2つが青と緑に輝いた。
ゴオオオオォオオオ!
右手の先から竜巻が巻き起こり、海面にぶつかった。
竜巻は海面を抉り、大きな穴を開けた。
そこに海竜の頭が飛び出してきた。
ピシ!
竜巻に含まれた冷気が海面ごと、海竜の頭を凍らせた。
「「バレット!」」
リンダとデイジーちゃんの右手から岩の砲弾が飛び出した。
ドドン!
至近距離から叩き込まれた岩の砲弾は海竜の頭を粉砕した。
バシャアア!
海面に開いていた穴に回りから海水が流れ込んで来て塞がった。
プカリ
頭が粉砕された海竜が周りの水を赤く染めて浮き上がって来た。
「やったのじゃああ!」
オレたちはハイタッチして勝利を喜んだ。
「マサル、さっきのあれはなんじゃ?」
「ああ、ウォーターリングにあったアイスとウィンドリングにあったトルネードの魔法をカスタマイズ、複合して開発したんだ。」
「かっこよかったのじゃ、我のリングもカスタマイズしてくれ!」
「はいはい。」
こうして、キャメロン商会は海竜討伐を果たし、貴重な海竜の素材を多く手に入れただけでなく、漁師たちからこの後格安で魚介類を仕入れることができたのだった。




