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魔人へ転落、そして大逆転

ドカン!


爆発音が響き渡った。


僕が働いていた工場で突然爆発が起きた。次々に誘爆が起こり、こちらに近づいてくる?!


「逃げろ。ここも爆発するぞぉ!」


班長が叫んでいる。


僕は作業を投げ出し、出口に走りだした。


ドガガアン!


すぐ後ろで爆発が起こり、体が宙に浮いた。


気がつくと僕は工場前の石畳の道路に倒れていた。


起き上がり、体を確認する。幸い怪我はないようだ。


僕はピート、港町ゼータの化学工場の作業員……だったのだが、たった今無職となってしまったようだ。


工場には隣接して独身寮もあったのだが、そこも爆発に巻き込まれたようで、火の手が上がっている。


まいった。給料日直前だったので、身分証にほとんどお金がない。寮が健在なら、まかないの食事があったのに……





工場が爆発して3日、路頭に迷った僕は飲食店の路地裏で残飯をあさっていた。


ゴトン! ガラガラ、


ゴミ箱の横に積んであった箱が崩れて中身がこぼれ出た。


赤、青、緑の玉だ。これは魔石……か?


ゼータでは多くの店、工場、一般家庭で、魔道具が使われ、そのエネルギー源として魔石が消費されている。魔力が空になった魔石は砕いて処理しなければならないのだが、量が多いため、こういった路地裏の箱なんかに一時的に貯め置かれているのだ。


これまでは、空の魔石なんかを見てもなにも思わなかったが、極限の空腹状態にある今、何故かそれから目が離せない。


僕は赤い魔石を手にとり、口に入れた。


甘い……なんて甘いんだ。


そして僕は夢中でそこにあった魔石を口に入れた。


「があぁ、はあああ!?」


いくつ、魔石を口にしたろう。突然、胸が苦しくなった。喉が焼けるように熱い。頭が割れるようにイタイ。頭を抱え、蹲り、目を閉じた。そして僕の意識は途切れた。





「ホーリーライト!」


幼い女性の声が耳に響いた。目の前が真っ白になっている。体が熱い。しかし、何故だろう、この熱さは悪くない。心地よい熱さだ。


視界が戻ると、目の前には左手をこちらに翳した。プラチナブロンドで120センチくらいの身長の幼女がいた。


「どうやら、元の人間に戻れたようじゃな。」


「僕はいったい……いたっ!」


腹に痛みを感じてそこに目をやると、大きな切り傷があった。ただ、今できた傷ではないようで、出血はすでにしていなかった。


「この前、馬小屋の横でした傷じゃな。どれ、」


幼女は、僕の腹を確認すると、その左手を傷にかざした。


「ヒール」


ソフトボールくらいの光がその手から生み出され、僕の腹の傷に覆いかぶさった。その光が消えると傷はすっかり消えていた。


「ありがとう。僕はもしかして、魔人になっていたのだろうか?」


「そうじゃ、我がホーリーライトで元に戻してやったのじゃ。」


「ありがとう。本当にありがとう。」


僕は深く頭を下げた。


「お主、名は?」


「ピートです。」


「そうか、我は、リンダ・キャメロン。キャメロン商会の代表じゃ。ピート、魔人になるぐらいじゃ、行くところがないのじゃろ? 我のところに来い。飯と仕事をやるぞ。」


「はい。よろしくお願いします。」





商業ギルドのビルに連れて来られた僕は、その宿泊設備の一室でシャワーを浴びて垢を落とし、ボロボロになった服も着替えさせてもらった。


そしてレストランでお腹いっぱいご飯を食べさせてもらった。何日魔人になっていたのか記憶がないが、かなり久しぶりにまともなご飯を食べた気がする。


ご飯を食べて少し落ち着いた後、僕は同じビルの商業フロアの一室に連れてこられた。


トビラを開けて中に入ると、見知った顔がそこにあった。


黒髪のショートカットの女の子だ。


「アカネ!」


「ピート! 無事だったのね?」


同じ工場で働いていたアカネだ。僕はアカネに少なからず好意を持っていた。


アカネは僕に抱きついてきた。僕もそんなアカネを抱き返す。


「なんじゃ、お主たち、知り合いか?」


リンダさまが、訝しげな表情をして聞いてきた。


「はい。同じ工場で働いていたんですが、工場が爆発して、はぐれてたんです。もしかして……アカネも魔人化していたんですか?」


「ああ、そうじゃ。うむ、丁度良い。では、お主たちでチームを組め。」


「分かりました。それで、僕たちは何をさせられるのでしょう?」


「空になった魔石の再生作業じゃ、」


「な?!」


空になった魔石の再生。本当にそんなことが可能なのか? 最初は半信半疑だったが、魔力検知器で確かに魔力が空だったと確認した魔石に魔力が補充される様を目の当たりにして僕は胸が高鳴った。


これは、凄いことだ。ゼータでは慢性的に魔石が不足している。十分な魔石の供給はゼータに住む者全ての願いなのだ。


それから、僕はアカネとチームを組んで、魔石の再生に必死で取り組んだ。


その内、僕と同じように魔人になっていた者が続々と連れてこられて、再生のラインが増えていった。





「よし、終わった。そっちはどうだリンダ?」


「こっちも終わったのじゃ。」


「ピート、ライガ、リンネのほうはどうだ?」


「こっちも終了です。」「終わりです。」「あ、ちょっとまってください。……はい、OKです。終わりました。」


「よし、じゃあ、これで、ゼータの街中の魔石、50万個全て再生完了だな。皆、おつかれさん。」


「「「「おつかれさまでしたぁ!!」」」」


商業ギルドのオフィスフロアの1室で、僕たちは大仕事1つをやり遂げた。





仕事が終わり、僕たちにはこの仕事の給料が支給された。なんと1人100万Gだ。前の工場では1月の給料が10万Gだった。たった1週間でその10倍だ。


しかし、この仕事はこれで終わってしまうのだろうか?この仕事をもっと続けたい……そう思っていると。


「さて、皆、ゼータの街は、まだまだ魔石に飢えておる。この仕事はこれからも街の皆に求められるものとなるじゃろう。どうじゃ? お前たちで、この仕事を続けていかぬか?」


「リンダさま、それはどう言うことですか?」


僕は代表して、リンダさまに質問していた。


「これからは、お前たちだけで、空の魔石を集め、それを再生し、商業ギルド等に納品してはどうかと言うことじゃ。その意志があるなら、キャメロン商会は魔力補充器を必要な数だけ整備してレンタルし、1億Gを当面の運転資金として出資してやる。どうじゃ?」


「………………」


部屋を静寂が支配した。


「……やります。いや、やらせてください。」


気がつくと僕は承諾の意志を示していた。この仕事はやりがいがある。続けていきたい。


「オレも、やります。」「僕もやります。」「あたしもやります。」「オレもやる。」「私もやるよ。」


他の5人も同じ気持ちだったようだ。


「よし、決まりじゃな。ピート、お前が社長となって、新会社を立ち上げるんじゃ。」


「はい。」


「頼んだぞ、これからのゼータの魔力エネルギーはおまえたちが担っていくんじゃ。そしてホーリーライトが使えるリングも必要な数だけ用意してやる。おまえたちのように魔人となっていたやつが他にもいれば、全て救ってやれ。」


「ゼータだけじゃなく、アバタール王国中、いや、世界中の魔力エネルギーを担ってみせますよ。そして世界中の魔人化した人を元に戻してやります。」


「ああ、その意気じゃ。がんばれよ!」


こうして僕は、大きな仕事をやり遂げた仲間たちと共に、キャメロン再生社を設立することになった。


僕の横では、アカネが微笑んでいた。

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