プロローグ
「よし、デバッグ終了!」
画面の中で正常に動作する管理システムを見ながら、オレは安堵の声を上げた。これで今晩は久々にゆっくり眠れるな。
オレは平茸 勝、33歳、某大手の子会社のSE、システムエンジニアだ。入社して早10年、開発3課の課長になっている。髪の毛の心配はないが、身長が低いのがずっと気になっている。
課長とは、悲しき中間管理職、僅かな手当てで多大な責任を背負わされ、残業はあるのに残業代は出ない。ゆとり世代の部下は文句は言うが責任感を持って仕事をしない。通常勤務時間に仕事が終わらずに、ダラダラと残業をする。そして残業予算がつきるとその部下はまったく動かなくなる。しかし仕事は当然のように残る。
結果、オレが残務全てをしなくてはならなくなる。おかげでプライベートな時間はまったくなし。彼女はいたが逢う時間がとれなくて先月ついに別れてしまった。
「はぁああ」
出っぱった中年太りのお腹を見下ろしながら溜息をつく。オレ、このまま馬車馬のように働いて人生終わるのかなぁ。
バタン!
帰り支度をオレがしている時に、営業の田中が青い顔で部屋に入ってきた。いやな予感がする。
田中は足早にオレの机の前まで来て、頭を下げた。
「平茸すまん。明日納入予定の管理システム、顧客側の社長がやっぱりQRコード入力も欲しいって聞かないんだ。」
「それで、納期は延ばしてもらえるのか?」
「いや、それが、そのままで……」
「……はぁ、わかったよ。なんとかする。」
やっぱり今夜も徹夜かぁ、オレは自分の席に座りなおし、再びPCの電源を入れた。
そうだ、こんな会社、いまやってる仕事が終わったら辞めればいいんだ。今のオレの腕なら、フリーでもやっていける。仕事ごとに各会社と契約すれば仕事をした分だけお金をもらえる。ただ残業させられる正社員なんかクソくらえだ。
そう思うと気が楽になった。
東の空が白みはじめる頃、オレはPCバッグを肩に下げ、会社を出た。目の前の仕事は片付けた。今日来る仕事なんかもう知らん。限界だ、帰って寝る。
ふらつく足で駅の階段を上る。
ホームを歩いていると眩暈がして、よろめいた。
気がつけばホームの端にいて急に足元になにもなくなった。
プアアアアアン!
回送電車が猛スピードでホームに入ってきた。
そこでオレの意識は途切れた。




