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スキル クラス オンライン   作者: ARS
俺の目標とは…
15/15

波乱のボス戦

なんか、ようやく書けた。

木々に遮られて分からないはずの空が暗転したのが分かる。

それだけこの環境が暗くなっている。

そう、目の前にいるのは…


現在、このゲーム内には設定としてあっても普通の手段では見ることのできない【狂化】という状態異常になったボス【ハイフォレストベア】が目の前にいた。



『ガルルル!』



唸り声を上げてハイフォレストベアは立ち上がる。

そして…



『ガァァァァァ!』



叫ぶ…それだけで俺たちの身がすくむのが分かった。

ミミカとカスミの二人は完全に状態異常として『怯み』と『すくみ』が出ている。

要するにこれは精神的にだけではなくゲーム的にも効果を表す咆哮なのだ。

そして、ハイフォレストベアは腕を振り上げて怯んだミミカとカスミに視点を合わせる。


俺は瞬間的にヤバいと悟る。

例え、前衛職であるミミカでさえ今の攻撃に当たれば一撃でHPはゼロだろう。

俺の見通しが甘かったとにかく今勝つ最前を尽くさなくては…



俺はそう思うと自然と地を蹴る。

どうやって二人をこの状態から救うか…。

ハイフォレストベアに攻撃を仕掛けて逸らしても都合のいいように逸れるとは思えない。

かと言って何もしなければ二人は確実に負ける。

別にしに戻りして次にすれば良い。

しかし、俺がいる以上また起きないとは限らない。

ならば、ここで勝つしかないのだ。

それにはこの二人の協力が必要不可欠なのである。



「間に合え!」



俺はそう叫んで二人に向かって走り出す。

しかし間に合う訳もないハイフォレストベアの腕が振るわれる。

無情にも放たれる風の斬撃は二人に向かって飛ぶ。



一瞬の判断、それだけだ。

俺は咄嗟に魔法陣を空中に強制展開する。

魔力の消費が激しいがもう気にしてる暇もない。


その瞬間、ガラスでも砕けたかのような音ともに俺たちに衝撃がぶつかる。



俺たち三人は僅かにダメージを受けながらも耐えた。


しかし、いくら自分のレベルが低いとは言えでも俺のMPの半分を使うだけの障壁魔法を砕かれたのは驚いた。

とりあえず、この状況はやばい。


敵mobの狂化状態なんて初めて見る。



「あの、これって…」



カスミは赤く目を光らせるハイフォレストベアを指差して僅かにそう言葉をこぼす。

そうなるのは当然だろう。



「とりあえず、ミミカの方は大丈夫そうか?」


「え…あ、はい。

少し驚いただけです」


「それなら、今からあの状態のハイフォレストベアに時間稼ぎはできるか?」



俺はそれだけ言うと剣を握り直してハイフォレストベアに向く。

正直、あの防御だけなら出来る。

しかし、スピードにはついていけない。

おまけに今状態のハイフォレストベアに魔法なんて慣れないものを使っても勝てない。

付いても離れても勝てない状況なのだ。

そして、この状況で鍵を握るのはミミカとカスミである。

俺とは違い通常状態であれにダメージを与えることが出来る。

おまけにそれぞれ特化している。

勝てなくても決定打を作る手段はいくらでもある。



「出来ますけど…どうするんですか?

あれに勝つことなんて…」


「そうだな、正直言えばここは逃げてやり直せばあんな状態のボスと戦うことはないだろう…それでもやってくれるか?」


「それは…」



ミミカは悩んだ様子で俯くがそんな時間はない。

ハイフォレストベアが再びもの凄い速さでこちらに向かってきている。

狂ったまま叫び倒してもう少し話す時間が欲しかったが仕方ない。

俺だけで今は出来るとこまでやるしかない。



その瞬間飛んでくる風の刃。

俺はそれを予め話しながら準備していた魔法で逸らす。

正直、受け止めるのは自殺行為だ。

しかし、どうやらMP高速回復が狂化の敵mobにはあるようで何度も放ってくる。

防げて四十くらい、後ろには二人がいる。

俺は一か八かで障壁の外の方向へ走り出す。

勿論、速度強化の魔法を付けてだ。

それはうまくいったようで敵はしっかりと俺を狙ってくれるがその代わりにある物を喪う。



「チッ、やっぱりこれは一朝一夕じゃ構築できない」



俺は作り途中だった魔法陣を握り潰して別の魔法を構築しながら風の刃を避け続ける。

その構築方法は即時構築の応用…いや、即時構築の方が応用なのだが非常に特殊な方法である。

MPを使用して魔力の線で魔法陣を組み立てていくと言う方法である。

その方法だとMPが少し減るがしっかりとした構築をすれば消費量なんて一回につき1未満になる。

即時展開はすぐ構築できる代わりに鮮明に魔法陣を覚える必要と大雑把な構築になるので魔法にもよるが大量のMPが消費される。



「よし、発動」



丁度避けられなくなるタイミングで構築が完成してすぐに発動させる。

これは地面を隆起させる魔法。

ふつうに複雑な魔法の為、MPは少し痛いが時間を稼ぐには丁度いい魔法である。



「そして『マジックシールド』」



隆起した地面が崩れるまでに即時展開出来るだけ鮮明に記憶していない魔法専用障壁を張ってさらに時間を稼ぐ。

正直、さっきからこの魔法を使って時間を稼ぎたかったがどれだけ時間が確保できるか分からない以上、使えなかったのだ。



「とりあえず一息つけるな」



俺はそう呟いてMP回復薬を飲む。

俺はそうしてる間に二つの魔法陣を構築していくが恐らく間に合わないだろう。

しかし、これしか勝つ方法が思いつかない。



ミシリッ



と聞こえてくる。

やはり、無理だったようだ。

ここまで時間が稼げないようだと近づいて隙を突くしか方法はないようだ。

正直、先ほども言ったように防御なら出来そうだが攻撃には移れそうにない。

第一、狂化の影響か少しずつHPが回復していってるようだ。



「仕方ない…十倍どころじゃないがやるしかないか」



俺は『マジックシールド』が崩れると共に走り出す。

剣の耐久を信じてるぞあいつがもし作ったならな!




**



一方、その頃二人はどうするべきか悩んでいた。

今の状況で手を出すには危険すぎる。

コシキはなにかを狙っていたように見えたがそれを諦めたようで今現在、防戦一方ながら直接戦闘を行なっている。



「すごい…あんなにもスピード差があるのに防げるのか…」


「すごいよね…あれにどう介入すればいいんだろう」



そう、目の前にある光景は一種の次元の違う戦い。

圧倒的な剣技と圧倒的なスペックで暴れる存在。

しかし、例え僅かな予備動作で分かったとしても速さが違いすぎて普通は追いつかない。



「なぁ、カスミ…あそこに行って私はあんな風にできるかな?」


「分からないよ…でも、いざという時は私を頼ってミミカが無理なら私が弾くよ」



僅かな間、お互いに決意を固めるように息を吐く。

元より、二人にとって諦めるなんて選択肢はない。

そもそもがゲームだ。

一か八かで試すのも一興なのである。



「よし!」


「いくよ、ミミカ!」



「「後ろは」」

「任した!」

「任された‼︎」



**



限界ギリギリだ。

一か八かで試してみたもののこれはそろそろやばいかな?

せめて別の人からの援護があれば…いや、弱音は吐くな!

もっと、ギリギリまで行けるはずだ。



何度も何度も打ち付けられる衝撃をいなして軽くする。

そう言った作業は単純に見えてかなり精神的な消耗も肉体的消耗も激しい。

ていうか、肉体的消耗まで…ここまでリアルに作り込む必要あったか?


魔法陣の構築は少しずつ実は進めてるがやはり、戦闘しながらだと遅い。



「まだまだ!」



俺はギリギリで避けて逸らして反撃する瞬間を待ち続ける。

親父の方が速かったと思い直してさらに集中する。

それは最早反射に近い領域で防ぎ続ける。

そして、見える。


目の前にある隙…


ここだ!



心の中で最も大きい叫びとして叫ぶ。

そして、ようやく一撃を…


その瞬間、映るハイフォレストベアの腕。

避けることも防ぐことも間に合わない。

動こうにも無理に動けば体崩れる。

一度体制をリセットしようにももう既に遅い。



負けを覚悟した。

流石に今のは自分のミスだと思い心の中で苦笑した。



その瞬間、研ぎ澄まされた感覚が音を捉える。

僅かな音が拡大されて聞こえてくる。

ハイフォレストベアに迫る切っ先は俺を捉えようとしている腕に向かい、さらに炎の槍までもが向かってきている。



一瞬だけだ。

しかし、それによる僅かな間を取り逃がす訳にはいかない。

諦めていた体を次の動作に移す。

剣を戻して攻撃をいなす。



「時間稼ぎをしてくれるのか?」



俺の呟きミミカは僅かに頷くのが見える。

なら、信じるしかない。先ほどに比べれば魔法もあり、時間かければいずれ倒せる。

しかし、俺はここで確実に倒す一手を打つ。


俺は戦前から離れて先ほどから構築していた二つの魔法陣に集中する。

さて、この二つの魔法陣の説明の前に狂化について説明しようと思う。

と言ってもあくまで自分の知る限りの認識である。

狂化というのは一種の特殊な状態異常でありふつうにプレイしていれば掛かることはまずない。

そして、その効果というのは感情が昂り無差別に攻撃するというのが主な効果であるがその副次的な効果としてHPスリップ、AGI.STR.INTの超上昇という迷惑極りない効果である。

敵mobは少し違うようだがかなり危険な効力なのである。

しかし、実はこれにはある裏がある。

耐性を持ってると緩和される効果というのが無差別攻撃という点だけである。

そう、耐性得ることによって僅かに感情の昂りを抑えることができ、自制が少し効く。

それでもまだほぼほぼ無差別なのだが、無効状態になるとそれは圧倒的に変わる。

たしかに感情が昂り好戦的にはなるが無差別に攻撃しようとは思わなくなる。

そして、更にステータス上昇効果やHPスリップはそのままなのである。


そう、これは一種の強化状態異常なのである。



そして、現在構築している魔法陣は普通の付与魔法と狂化効果を引き起こす魔法陣である。

しかし、狂化を引き起こす魔法陣はかなり複雑で中々完成しない。

まぁ、それも仕方ないのだがな。



なぜならこれは『魔術陣』



要するに重なった魔法陣である。

しかし、その重なった魔法陣と言うのは魔法陣とは全く違った法則故に未だこの狂化の魔法しか無いのである。



「そろそろだな…」



とっくに付与魔法の方は完成してるが狂化魔術は未だ完成してない。

少しでも間違えればやり直しになってしまう上にとんでもなく複雑な為、簡単には完成しないのである。



「よし!」



そして、その時が来た。



「二人とも!反撃の時間だ」



俺は狂化魔法で自分を狂化状態にする。

そして、次に二人を付与魔法で強化する。


そこまでして俺は剣を握り走り出す。

先ほどまでは違う感触…圧倒的な速さで風を切る感触がある。

感情が昂ぶる。

目の前に敵を倒せと本能が叫ぶ。


もし、ここで理性があればMP回復薬を飲んで魔法も使用していただろう。

しかし、本能がそんな暇を与えないと言わんばかりに戦えと刺激する。


俺はその本能に従い剣を振るう。

その剣は今までになく風を切り、敵を切り裂く。

今までの差がひっくり返るように状況が一転する。

ステータス上では未だハイフォレストベアの方が速いのだろう。

しかし、ただ暴れるだけの相手に負ける訳がない。

そもそもが十倍程度の速度ならギリギリ無傷で勝てるのだ。

同じレベルになった時点で目の前の相手はただの的である。


ミミカもうまく攻撃を行い、危ない時は魔法で動きを止めてくれる。

決着は付いた。


どうやら、敵mobだと防御面も上がるようだがそれ以前にこちらはノーダメージである。

その時点でもう既に決着は付いた。

ミミカの一撃で敵は足を止める。

そして、俺の一撃とカスミの魔法が同時にハイフォレストベアにぶつかる。



そして、ハイフォレストベアのHPバーがゼロとなる。



パリンッ



とポリゴンとなって弾け飛ぶ音が響き渡る。

それと共に俺は力が抜けて膝をつく。



「終わったな…」


「そうね…おわったのね」


「うん、やっと超えられたよ…第一のボス」



そう言って喜びを噛み締めてしばらく休んだ後俺たちは気が抜けたように歩きながら次のエリアへと足を踏み入れるのだった。

あれ、コシキのステータスはって?

いや、これは次見たときのお楽しみです。

意外な結果が待ち受けてますから。

次回かその次くらいには出したいなとは思ってます。

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