伝説の始まり
めっちゃ、久しぶりです!
俺こと小倉 古色は魔法を詠唱式と陣式の両方習うと決めたはいいが、時間的にやばくて結局明日に持ち越すことになった。
俺は、詠唱魔法についてのwikiを見ていた。
「へぇー、もう称号について載っているのか。
なになに、あの剣聖が獲得したのか。
流石だな。」
そこには【動く城塞】という称号について書かれていた。
VIT、AGI、MND、HPに補正を効果があるらしい。
因みに、剣聖とはベータの頃に一度PvPで決闘をしたことがあり、魔法剣がかなり印象的だった。
おまけに守りが意外と固く、基本的なわかりやすい攻撃は全部盾で返された。
あの時の勝てるか勝てないかの高揚感が楽しかった。
魔法に対する対応が分からなくて負けたけど、次は負けるつもりはない。
俺が魔法を習い始めたのも魔法剣に憧れたのが理由だ。
彼らは詠唱型の無詠唱を取得しており、非常に厄介だった。
「さて、一度復習をした後に再びインするか」
勿論、復習はゲーム内の魔法についてである。
まず、魔法と一概に言うが、種類がある。
魔法→魔術→魔導→賢者
と言ったように強さと難しさが分かれている。
魔法は二次元式と呼ばれ詠唱なら単純詠唱、陣なら平面陣となっている。
そして魔術は準三次元式と呼ばれ詠唱なら重詠唱と呼ばれる特殊な並び順や言い方になる。
陣なら重ね陣となる。
威力は当然魔術の方が上で汎用性も高い。
しかし、式と詠唱、陣の構造があまりの複雑さで『魔道士』の二つ名を持つあいつしか重詠唱を使うことができなかった。
そう言った方面ではかなりプレイヤー達は泣きを見ているが、魔法の方で改良を重ねてオリジナル魔法を作って遊ぶ奴もいた。
要するに魔法の自由度が高いのだ。
ちなみに魔導は未だに誰一人として知らない。
さて、次は魔法式についての復習だ。
先程から挙げていた式とは魔法式のことを指し、例えば俺がこの前使ったフレアを魔法式に変えると…。
○+ fal+χ(カイ)=フレア
となっている。
そして、それぞれの意味が…。
○ 基礎
fal 火
χ 放出
となっている。
これである程度予想できた人もいると思うが、これは魔法陣に描かれているパーツとなっているのだ。
○の数を増やしたり形を変えたりできてそれによってより複雑な構成の式や陣の作成が可能だが、陣の法則性に関しては未だに謎らしい。
魔法の細かい部分や処理、新システムなどはその場で称号と同じようにAIが管理している。
故に基本的な魔法陣の作成は式から陣に移し替えるのだ。
その際にMPを多少なりとも食うため、陣魔法が流行らない理由になっている。
因みに原点詠唱というのがあるのだが、それはMPの消費量を抑えることが出来るらしい。
「そろそろ、インするか」
特にめぼしい情報も無かったので俺はゲームにインすることにした。
*************
「やっと来たか」
俺が入ると同時に聞こえてきた第一声がそれだった。
「こんにちは、新人の相手は大丈夫何ですか?」
俺はほかに来ているであろうプレイヤーについてはどうなっているのか気になり口に出した。
「今は交替の時間でな、私とは別の人が入ってる。
中身は人間だから一日中入ることが出来ないのでな」
エフィアさんはハハハと笑いながら言う。
この人は肝が太いと言うかなんていうか…。
「では、君には最適の訓練所に案内しよう」
そう言ってエフィアさんは歩き出す。
俺はそれについて行き、ある部屋に入った。
「一応、一般開放されている『魔法の間』だ。
ただし、使われたことは一度も無い」
その場所は部屋全体が微量ながら光っている。
俺は入ると同時にメニュー画面が浮かんできた。
どうやら、この部屋の設定画面らしい。
ーーーーーーーーー
魔法の間にようこそ
ここでは自分のしたい訓練が行えます。
機能についての説明をします。
消費MP表示&消費MP肩代わり
ダメージ計測
速度計測
処理計測
自動修復
書庫からの引き出し
時間延長(未実装)
取得経験値半減(未実装)
消費MP表示&消費MP肩代わり
消費MP量の計測とMPの使用をせずにスキルなどの試し打ちなどが出来ます。
ダメージ計測
放った攻撃のトータルと個々の攻撃力やダメージ量の計測をします。
速度計測
準備から打つまでの時間の計測をします。
処理計測
あなたの工程の立てる速度の数値化を図ります。
自動修復
この訓練所の破壊されたオブジェの修復をします。
書庫からの引き出し
その名の通り隣にある部屋の本を取り出すまたは戻すことができます。
時間延長(未実装)
この場だけの進む時間を速くします。
取得経験値半減(未実装)
進む時間が速くなった分だけスキルや職業に入る経験値を少なくします。
ーーーーーーーーー
「あの、加速機能なんて作れるんですか?」
俺がこれを見て放った第一声がそれだった。
もし実装されれば絶対使う。
「原型そのものは出来てるらしいが、実装はまだ当分先だな。
さらに言えば、それまでここの需要なんて無いに等しいからな」
それもそうだ。
魔法の研究するにしても通常とそんなに変わらないからな。
スキル上げにくらいにしか…。
「でも、俺的には丁度いい場所だな…。
エフィアさん、ここでログアウトしたらどうなるんですか?」
「え?
えっと、確か書庫の方にインするはずよ」
「そうですか。
では、始めるとしますか」
俺はそれと同時に…。
「エフィアさん、ここで使われる特殊言語は?」
「ここではそれが無い。
近くのコントロールパネルを使用するか、メニューという言葉で反応する」
「このゲームにしては珍しいですね。
『メニュー』」
俺はそうして、次々と本を取り出していく。
「私がややこしいのは嫌いだからと頼んだのだ。
あと、紙とペンはあそこにあるから好きに使っていいぞ」
「ありがとうございます」
そうして、始まった1ヶ月に及ぶゲーム内のHI・KI・KO・MO・RI生活が始まったのだった。
「これはある意味、後世にまで語り継ぎたいな」
エフィアがボソリと呟いていたが聞こえているぞ。
まぁ、時間も無いからツッコミを入れるのはやめておこう。
*************
サービスが始まってから一週間。
盗賊の洞穴にてひとりの少年が歩いていた。
「これで職業暗殺者になれるんだよな?」
「ああ、その通りだ。
しかし、こんな早い段階で中位職業に就く人間なんて中々いないぞ」
少年のつぶやきに盗賊の洞穴を担当しているGM、クラッツは呆れたように呟く。
そもそも、職業暗殺者とは首を切り落としてのキルを100回、短剣と隠密スキルをそれぞれレベル30と盗賊の職業のレベル30以上という条件でなることが出来る職業である。
まず、今のような序盤で可能な職業とは言えない。
しかし、このゲームは現実の自分と同期してる面がある。
要するにもともとその知識と実力を持っていればある程度他の人と比べて強くなりやすい面が存在している。
「君は…何者だい?
掲示板に書かれていた首切りって君のことだろう?」
少年は頷く。
「まさか、本業とか…」
その言葉を聞いた少年はここで再び口を開く。
「俺は本業じゃないよ。
ただの収集家だよ」
そう言って少年は静かに消え去る。
正確には歩いて去っていった。
それほどにまで、少年の隠密は優れていたのだ。
*************
剣術の山にて
「あなたがアイント?」
一人の少女がアイントの前に立ち聞く。
「いかにも、丁度暇で精神統一しとったところだ」
アイント自身あまり暇な時間がつい先日まで無かった。
しかし、ここに来た全員が途中でアイントのしごきに耐えられずに去った者が多数出た後だった。
(しかし、この少女…あの山を登っても息切れ一つしておらん。
こやつはコシキと同じ感じじゃのう)
アイントは観察を終えた後、目を瞑り立ち上がる。
「ふーん、中々強そうな体の使い方してるね」
少女の言葉にアイントはより警戒を強める。
これは武人と同じ類の人間だと…。
「一つ勝負をしない?」
「よかろう」
この日、正式サービスが開始して最大のpvpが行われた。
「あなた、私を舐めてるの?」
少女はpvpを終えた後に呟く。
アイントは二本の剣を杖代わりにして刺して立ち上がる。
それぞれにダメージエフェクトが立ち上る中、少女への勝利のエフェクトが走る。
少女のHPゲージは三分の一にまで減っており、周りのオブジェクトの損傷を見るからにどれだけ激しい戦いが繰り広げられたかは想像はできる。
「なんのことかのう?」
「あなたの間合い、握り、足捌きどれを取っても剣術じゃない。
刀術の類の筈…」
少女は確信を持ってアイントに言う。
「知っとるか…このゲームの刀術というのは…EXスキル…要するにお主達の決意の先にあるものじゃ…」
「意味が分からない…」
「分からなくて良い。
いずれ分かる」
アイントはそう言って立ち上がり、刀を取り出す。
「…っっ!」
無音だった。
何も分からない。
何も見えない。
そう、少女の腕にダメージエフェクトが立ち上り切り落とされていたのだ。
「それが、差じゃよ。
儂は刀が本領だと見抜いたその知識は評するがまだ甘いのう。
とりあえず、お主に案内したいところがある。
付いて来なされ」
そう言ってアイントは歩き出す。
「やっぱり、面白いなぁ」
少女はそう言ってアイントに着いて行く。
読んで頂きありがとうございます。
面白いと思って頂けたなら幸いです。
これからもよろしくお願いします。