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第17話 ヤンデレ危機一髪

「わ、我が人生に一片の悔いなしです……ぐはっ」


 一言だけを言い残しエレナは気絶した。それを見たオリヴィアが取り乱しながらエレナに駆け寄る。


「エレナ! エレナー!」


「どうなってんだよ……」


「私は何もしてないわよ……」


 エレナの体に外傷がないことを確認するとオリヴィアはすっと立ち上がった。


「私のエレナに……一体何をしましたの?」


 オリヴィアがタクトとマキナを鋭い目つきで睨みつける。その目を見た途端、二人は蛇に睨まれた蛙のように固まった。どうやらオリヴィアは完全に正気を失っているようだ。


「私は本当に何も知らなかったの! まさかタクトが爆弾を持ってるなんて思わなかったの!」


「ま、待った! 何言ってんだよマキナ! そんな物騒な物俺が持ってる訳ないだろ!」


「やはり爆弾ですの?」


 オリヴィアの視線がタクト一人に向けられる。


「ば、爆弾な訳ないだろ!」


「では、アレは何ですの?」


 タクトに向かってオリヴィアがゆっくりと近づく。後は任せたと言わんばかりに隣でマキナがウインクをしている。それはそれで可愛いが今はそれどころではない!


「あれは携帯電話って言ってな! 遠くにいる奴といつでも話しができるっていう、この世界に一つしかないすげぇ発明品なんだよ!」


 オリヴィアの足が止まる。


「あら? それはおかしな話しですわタクト。一つしかないのなら、どうやって相手と話しをするんですの? 嘘ならもう少しマシな嘘を吐くべきですの」


 あ、そっか! でも、他に説明のしようがない。


 再びオリヴィアが進行を始めた。


「待って!」


 マキナがオリヴィアの前に立った。


「何ですの? 共犯なら容赦はしませんの」


「きっと、タクトはこんなことする人じゃないと私は思う!」


「マキナ……」


「マキナは一体、タクトの何を知っていると言いますの? 現にエレナは危険に晒されましたわ」


「確かに私は何も知らない……けど! どうしてオリヴィアはタクトのことを信じてあげないの? あなたたち仲間でしょ? 仲間の言うことを信じないなんて、そんなのおかしいじゃない! 私はタクトを信じる! あれは……ケイタンデンパよ!」


「マキナ……それを言うなら携帯電話」


「え、やだ…………携帯電話よ!」


 言い直した! その時、タクトは思った。もしかするとマキナは俺が思うよりほんの少しだけ天然なのかもしれない。


「オリヴィア……二人を許してあげてください……」


 いつの間にか、エレナが目を覚ましていた。


「エレナ! 目を覚ましましたの?」


 オリヴィアが再びエレナに駆け寄る。


「タクトは確かに非力でバカで無能でしょうがない奴です。でも、嘘は言いません。だから……ぐはっ」


「私はただエレナのためを思って……」


「オリヴィアの気持ちは重々分かっています……ぐはっぐはっぐははっ!」


「エレナ! もうそれ以上喋ってはいけませんの!」


「エレナ、お前……そのぐはってやつが言いたいだけだろ!」


 それを聞いたエレナがむくりと上体を起こした。


「バレてしまいましたか! 流石はタクトです! オリヴィア、あとは手出し無用ですよ。私にいい考えがあります!」



 ――どうしてこうなった?


 携帯電話を破壊され、その上財布まで捨てられたと言うのに……。


 エレナが復活したおかげで何とかオリヴィアは正気を取り戻し、四人はそのまま買い物を済ませるとオリヴィアの屋敷へ向かっていた。ただ一つだけ変わったことと言えば……タクトが両腕いっぱいに荷物をぶら下げ、さらにその背中にはエレナを背負っていることだ。


「ほらほら、タクト! ペースが落ちてますよ!」


「くそぉ……調子に乗りやがって……」


「何ですか? オリヴィアに言いつけますよ? いいんですか? 私は今、怪我人なんですからね。もっと大切に扱ってください」


「タクト、大丈夫? 重くない? 私も少し荷物持つ?」


「ありがとう、マキナ。すげぇ重いけど! その気持ちだけで俺は十分だよ」


「何ですか! 失礼ですよ! 私はそんなに重たくありません!」


「それにしても、怪我をしたエレナを背負ってくださるなんてタクトもなかなかいい所がありますの。でも、いつの間にエレナは怪我をしたんですの? 私ったら、ずっと一緒にいたのに全く気付きませんでしたわ」


 お、オリヴィアのやつ、あの混乱で完璧に記憶が飛んでやがる! 一体どんな頭してんだよ! まぁ、そのお陰で助かってるんだから好都合なのかもしれない。


「オリヴィア、実はですね! タクトの……」


 ガンッ!


 何かを途中まで言いかけたエレナにタクトが肘打ちを食らわせた。


「う、うぅ……おのれ……タク……ト」


「エレナ? 今何か言いましたの?」


 前を歩いていたオリヴィアが振り向く。


「何言ってるんだよ? オリヴィアの気のせいだって? エレナのやつ、ついさっきからこの通りぐっすり眠ってるぜ?」


 タクトの背中でエレナがぐったりとしている。


「でも、今確かにエレナの声が……」


「わ、私は何も聞こえなかったわよ?」


 タクトの横から慌ててマキナがフォローに入る。


「マキナもそう言うならきっと私の空耳ですわね」


 タクトがエレナにだけ聞こえる小声で喋る。


「これで今朝の分とちゃらにしてやる。それでお互い様だろ?」


「仕方が……ありませんね……」


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