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第15話 ついにヒロイン登場!?

 賑やかな大通りからだいぶ離れた細い路地裏の奥の奥。一人の少女が行き止まりに追い込まれていた。その後方から何者かがゆっくりと迫り来る。


「もう逃げられませんよ?」


「あなた……一体何者なの?」


「我が名はライトニングマスター。最強にして最凶の異能を持つ者」


「ライトニングマスター……」


「命が欲しければまず持っている物を全てこちらに渡してもらいましょうか?」


「悪いけど私、あなたに渡すものなんて何も持ってないわよ」


「なら――死んでもらいます!」


 ライトニングマスターを名乗る者が少女に向かって両手を伸ばした丁度その時。少年と少女が後ろから待ったをかけた。


「やめろ!」


「エレナ! いけませんの!」


 そこに立っていたのは駆けつけたばかりで息を切らせている、タクトとオリヴィアだった。


「二人とも邪魔しないでください! 今とても良いところなんです!」


 エレナの構えた先には一人の少女が立っていた。

 年齢は十代後半程、桜色をしたセミロングの髪、白と薄紅色の衣服を着ている。それに何と言っても……。


 か、可愛い!


 エレナやオリヴィアも見た目だけならかなり可愛らしい方ではあるが、二人とはまた違って美しさを兼ね備えいる。タクトのこれまでの人生の中でここまで可愛いと思う美少女を見たことがなかった程だ。

 タクトが気付いた頃にはもう咄嗟に体の方が動いていた。


 エレナの前に両手を広げたタクトが立ちはだかる。


「タクト! 何のつもりですか! 邪魔する気ですか! それとも心変わりですか!」


「お前は金が欲しいだけだろ! この子は悪くない!」


「ええ、確かに私は今お金が必要です! しかし、いくら私でもそれだけの理由で人を襲うと思いますか?」


「じゃあ、他に理由があるのかよ!」


「ありますとも! だって、その人……能力者ですよ」


 エレナは間を置かずして答えた。


「え?」


 タクトが振り返ると少女が驚いた表情をして立っていた。


「どうして……分かったの?」


 少女の問いかけに対しエレナが不敵な笑みを浮かべる。


「これです」


 そう一言だけ答え、エレナが帽子を脱ぐと頭のてっぺんからアンテナのように髪が立っていた。


「これが私の編み出した能力者レーダーです!」


「そんなことできるなんて聞いてないぞ!」


 その時、同時にタクトがあるものに気付く。エレナの後ろで呆れながらオリヴィアが首を横に振っていた。


「嘘かよ!」


 渾身の嘘をあっさりと見抜かれてしまった途端、エレナの態度が一変し駄々をこね始めた。


「だって……オリヴィアがいけないんですよ! 少しぐらいお小遣いをくれたっていいじゃないですか!」


「あのなー! いくら金がないからって人を襲うことないだろ!」


「これが一番手っ取り早くて確実だっただけです! 少し脅かすだけで最初から殺すつもりなんてこれっぽっちもありませんよ! まさか本当に能力者だったとは思いもしませんでした!」


「ん? 待てよ? じゃあ、この子は一体?」


 三人の視線が一斉に見知らぬ少女に注目する。


「え、あ、あの……あなたたち、もしかして私の命を狙っていた訳じゃないの?」


「いいえ、私はお金が欲しかっただけです」


「俺はこいつを連れ戻しに」


「私も同じくですの」


 暫し、異様な空気が流れる。


「えぇ〜何よそれ! びっくりさせないでよ〜!」


 少女はいきなり大声を上げると緊張が解けたのか、そのまま気が抜けたようにその場に座り込んだ。そこへオリヴィアが歩み寄る。


「無礼は謝りますわ。私はオリヴィアと言いますの」


 そう言うとオリヴィアはスカートの裾を両手で摘み軽く持ち上げながら頭を下げた。


「お名前を尋ねてもよろしいですの?」


「私は……」


 少しの間少女は空を眺めると、それから呟くように答えた。


「マキナ……マキナって呼んで」


 自らの名前を告げるとマキナは立ち上がりタクトに視線を向けた。


「私のこと助けてくれてありがとう……えっと……」


「俺はタクト。櫻見奏人(サクラミタクト)


「タクト……いい名前ね。ありがとうタクト」


 マキナがタクトの顔を見て微笑む。


「何鼻の下を伸ばしてるんですか!」


 それを横から見ていたエレナが名前を呼ばれてニヤけているタクトに喝を入れた。


「じゃあ、私はこれで」


 そう言い残すとマキナは何事もなかったかのように路地の来た道を足早に戻って行った。三人が去って行く彼女の後ろ姿を見ていたその時。足が止まったかと思うと急にマキナが引き返して来た。


「ねぇ、あなたたちに聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」


「どうかしましたの?」


「この辺りでタダで泊めてくれそうな場所とか知ってたら教えてくれない? できれば安全な所がいいんだけど」


 ん? このセリフ、どこかで聞いたことがあるような……。


 それを聞いたエレナとオリヴィアがマキナの方を見ながらひそひそ話を始めた。


「何を話してるの?」


「では、私の家にいらしたらどうですの?」


 そう! このパターンは!


「あなたの家に? 本当にいいの?」


「ええ、問題ありませんわ。ねえ? エレナ? タクト?」


「そうですね、仕方ありません」


「まぁ、俺は何も言う権利がないしな」


「本当の本当にいいの?」


「ええ」


「じゃあ、お言葉に甘えて泊めさせてもらおうかしら」


 き、キター! これは間違いない! ハーレムというやつだ! 今日ほど生まれて来てよかったと思う瞬間は他にない!

 タクトの中のもう一人のタクトがこれまでにない程の大きなガッツポーズを決め、はしゃぎ始めた。


 その時だった!


 タクトが背後からただならぬ気配を感じ振り返ると、そこにはオリヴィアが立っていた。いや、正確に言うなら死神のような姿をしたオリヴィアだ! オリ神だ! 


 ば、バカな! 俺の心の中にどうしてオリヴィアが!


「タクト……変な真似をしたら……殺す」


 俺の心に直接語りかけているだと! あ、あり得ない! まさか、これは! 知らず知らずのうちに、本当に無意識のうちに、俺はオリヴィアを恐れているのか! そのオリヴィアに対する恐怖心が俺の心の中で具現化されたとでも言うのか!


「タクト? 大丈夫ですの? すごい汗ですわ。どこか具合でも悪いんですの?」


 意識を取り戻すと現実のオリヴィアがタクトの顔を心配そうに下から覗き込んでいた。


「はぁ……はぁ……いや、大丈夫だ。何でもない」


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