第5話 ドラゴン
暫く歩いていると後ろを歩く音が聞こえたので、振り替えるとガランが悠然と歩いていたので、「万全か?」と聞くと、「滞りなく。」と自信満々の答えが返ってきていた。
(よし! 戦力が多いに越した事はないからな。
しかし、只闇雲に歩いていても埒が明かないな。
また使えそうな奴を喚ぶか。)
刻緒はこの鬱蒼とした場所から何とか脱出して、確かな情報と足を得る為にも再度喚ぶ事を決めたのである。
ある程度必要な事を頭に浮かべながらも先程よりも馴れた様子で、刻緒はまた手を伸ばし静かに言葉を紡ぐ。
「我は暝約者 荒蒔 刻緒!
暝約に従い我の願いを叶え。
我の前に姿を現せ!」
唱えた直後に辺りは幾分暗くなり、鳥や虫達の声は一切聞こえなくなっていた。
すると空中に黒く巨大な魔方陣が現れ、輝くような黒い光と共に現れたものとは・・・・
「????」
「何も出てきていないぞ?
これはもしかして失敗なのか?」
辺りをキョロキョロと見回すも喚んだ者の姿は見えず、少し不安になりながらも首を捻っていると、不意に上方から凄まじい威圧感が襲ってきていた。
慌てて上を見上げる刻雄。
するとそこには、どこまでも巨大で、黒く輝いているドラゴンが浮んでいた!
「!!!!!! はぁ?
な、何じゃこりゃ~~~~~」
(で、で、でかい! でかすぎるだろ!!)
驚いている刻雄を尻目にドラゴンはゆっくりと木々を倒しながらも刻雄の前に降りてきていた。
その姿は威風堂々であり、正に王者の貫禄があり、そしてその威圧感は半端無かった。
そして近づくにつれて、全貌が見えてきていた!
そのドラゴンの目はどこまでも黒く混沌であった。
そのドラゴンの口は全てを飲み込む程の大きさであった。
そのドラゴンの牙は何物をも打ち砕く巨大な刃であった。
そのドラゴンの存在は万物を従える気品と風格があった。
そしてそのドラゴンの鱗は黒く輝いており、全身からは黒い煙が常に吹き上がっていた。
暫く見つめているとドラゴンは長く大きい頭をゆっくりと地面すれすれ迄下げると、「我は竜帝ドルオーラ。
竜の帝にして絶対の君臨者!
古の暝約に従い参上した!
暝主の覇道を打ち立て、共に歩む事が我が願いである。
思う存分にこの身を使うが良い。」
(??? は~~~~っ!! ?? 竜帝? 帝? 君臨者??
ってかドラゴンて喋るのか?
そんで覇道って何ですかい!! ??)
いきなりのドラゴンの言葉に思考が追い付かず、ドラゴンを指しながら後を振り向く。
すると先程迄威風堂々と付いてきていた鬼族のガランは地に伏し、大きな体を縮ませ、ガタガタと震えながら、「竜帝様!
竜帝様! なんと言う事だ!
恐ろしや、恐ろしや〜」と呪文の様に唱え呟いていた!
お前もか~~~~~
心で強く叫ぶ刻緒で有った。