プロローグ 4
まだまだまだ短いです。
荒蒔 刻雄 32歳 独身 彼女なし。
この男を一言で表すと【陰気】と周りの人は口を揃えて言うだろう。
決して人付き合いが悪いわけでもなく、性格も温厚で怒る事も無い。
容姿も183㎝の高身長に切れ目で整った顔立ち。
昔から女性から声を掛けられる事も多かったが、誰とも付き合う事無く過ごしてきていた。
しかし自分から相手に声を掛ける事は絶対に無く、全て受け身であった。
幼い時に両親が事故で亡くなり、親戚や身寄りもなかった為、養護施設で18歳迄過ごし、その後土木作業員として黙々と働き続けていた。
平凡で楽しみも無く、このまま人生を終わらせても良いのかと思っていた。
あの時迄は・・・
・・・・・・・・・・・・・・
「死にたい」と答えた刻緒に対して陰湿な声は静かに笑いだす。
(クックックックッ
ハッハッハッハッハッ)
一通り笑い終わるとぽつりと呟く。
(死にたいのか・・・)
(此処に来る物は皆、生に執着を持ち、未練が残るものが殆んどなのに、怯えず怯まず、ただ死にたいのか。)
刻緒は首を捻りながらも一言「ああ!その通りだ。」
と答えた。
また笑い声が聞こえたが、次は静かで暗い笑い声であった。
(生を捨て、ただ死を願う者よ!
お前に興味が湧いた!)
(望み通りに死を与えてやろう!
決して安らぐ事無く、未来永劫に苦しむ死を。)
そして、また意識が遠退いていく。
(本当にこの世界は面白い!
幾千幾万もの月日を見てきたが、こんなにも絶望と無の狭間に漂う様な者は初めて見た。)
(望み通り死ねるだろう!
しかし思う存分に死を撒き散らし、絶望と無の狭間を堪能してみるが良い。
そしてその果てにどの様に朽ちていくのか、それとも・・・・
見物だな・・・)