8 アリーシャちゃんは隠れ巨乳
アリーシャちゃん編 クライマックス。
はたして超弩級アイドル駄女神の貞操は守られるのか!?
「アイドルってのは、あれでしょ? 街のステージに出る歌姫や踊り子みたいなものなんでしょ? そしたらさ、枕営業の一つも出来ないと有名にはなれないよ」
目の前でまっ白な肌を晒す彼女に、僕はそう言い放つ。
アリーシャは、その身に纏っていた全てをすでに脱ぎ捨てていた。
「アリーシャちゃん有名になりたい! もっと、もーっと、有名になって! 世界中の皆を元気にしてあげられるアイドルになりたい!」
彼女は必死だった。世界一のアイドルになるためだったら、他の全てを差し出す覚悟があるのだろう。
彼女の真剣な眼差しから涙が一つこぼれ、そしてそれは、彼女の豊満な胸の谷間に落ちていく。
ゆったりとした女神の羽衣を着ている時は分からなかったが、どうやら彼女はかなりのワガママボディを持っているらしい。
さすがは、創造と慈愛を司る女神といったところか。彼女がたまに見せる母性溢れるセリフにも、これで納得がいくというものだ。
「なら、さ……」
僕はアリーシャの柔肌に手を触れた。「あっ」と彼女は吐息を漏らす。触れた部分はすぐさま熱を持ち、みるみるうちに紅く染まっていく。
そしてその紅潮は、彼女の綺麗な顔にまで届き、それを真っ赤に染め上げた。
「アリーシャちゃんは……初めてなんだから。えっと、その……優しくしなきゃダメ、なんだぞっ❤」
それは彼女の、最後の強がりだったのかもしれない。
その言葉を最後に、彼女をアイドル足らしめていた独特な口調は鳴りを潜め、ただただ熱い吐息だけが、アリーシャの桃色の唇から発せられる。
僕は彼女の、その充血しきった――
◇ ◇ ◇
「ど~したの~、秋人クン? なんかフリーズしちゃってない? キャハッ☆」
「はっ!」
僕はアリーシャちゃんの言葉で我に返った。
どうやら数秒の間、意識を飛ばしてしまっていたらしい。
フリーズする僕の脳裏に流れていたのは『XXX』のエッチシーンの一幕であった。
ああ、ちなみにコレは正規のものではない。だって僕は、このゲームのそういった部分に触れることが一切出来なかったからね。
R15版は、エッチシーンの導入となる部分までがテキストとして表示されるものの、その後の核心部分についてはスキップされているのだ。
じゃあ、なにかって?
コレはアレだよ。その……妄想だよ。
このゲームが好きすぎるがあまり、僕が“自作”したエッティなシーンだよ。
僕はR15版をプレイしながら、おそらくここでそういったシーンが展開されるんだろうなって場面では、こうして自作のエロパートを頭の中で妄想してたんだよ!
くそったれ!! 黒歴史ってレベルじゃねぇぞコレ!!!
「もしも~し、大丈夫? 秋人ク~ン☆」
「はっ!」
人生最大級の黒歴史オブ黒歴史を前にして、僕はまたもやフリーズしてしまっていたらしい。
気付いた時には、アリーシャちゃんの顔がすぐ目の前にあった。
「おっわ! わわわわって、と、か、かか、かお……顔が、ち、近い……」
先程までの妄想が蘇り、そのピンクの唇がいやに艶かしく見えてしまう。
よく見りゃ着ている服も妙にヒラヒラしていてて、胸にできた大渓谷が、その威容をチラチラと主張しているじゃないか……やべぇ、僕の持ってるもう一つのミストルティンが、それに反応しちまってる!
「んん~? 秋人クン、なんか隠してな~い? あやしい☆ なになに~❤」
人の心、神知らずっていうか、アリーシャちゃんはさらに無防備に距離を詰めてくる。
すでに彼女の胸の二子山は、僕の胸板に押し付けれて、ふにゅんと形を変えていた。
おまけに僕のミストルティンも、すでに完全変形が完了していた。目撃されたら即事案発生、というレベルだ。
ああ、なんだろう。ついさっきまで『ゲームの主人公のセリフを真似れば、エッチにもつれ込むまではイケルんじゃね?』とか考えていたくせに。
いざ、そうしようと彼女に近づいた瞬間に、僕はパニックに陥っていた。
――そりゃそうだよ。だって僕、童貞だもん。
童貞は、童貞らしく、パソコンの前でだけハッスルしてれば良かったんだ。
そう思っていたからこそ、僕はこのゲームを買ったのに!
そして僕が現実とゲームの違いに打ちひしがれている間に、その事件は起こった。
「ふにゃっ☆ あ、ああ、秋人キュン!!?」
「はい?」
なんだろう? アリーシャちゃんが僕を指さしながら固まっている。
ハハッ、まるでさっきまでの僕みたいなフリーズ具合じゃないか。僕の股間を指さしたままの姿で目を見開いちゃって、いったい君は何を目撃したんだい?
――もしかして、僕の完全変形ミストルティンロボ?
「ちっ、ちち、ちがっ、ちがうんだ!」
「ちっ、ちち、ちがうよ! ちがうよね!? アリーシャちゃん見てない! あ、秋人キュンの、お、おお、おち、オチン――、とにかく見てない! 大丈夫っ!!」
僕とアリーシャちゃんは、そうして二人して慌てふためく。
ああ、なんだろう? 二人して慌てながら、僕は自分が、少し優しい気持ちになっていることに気付いていた。
それはたぶん、結局のところ、童貞は童貞だったということだ。
童貞にはアダルティックな展開は似合わない。せめてこんな風な、R15的プチエロハプニングがお似合いなのだ。
今はまだ、女体の神秘を夢見るだけでいい。
だけど、せめてゲームの中でだけは、その神秘に触れてもみてもいいじゃないか。
だからこそ、僕は家に帰らなきゃならない。帰って、インストールの続きを再開するんだ。
――そのために僕は、旅立たなくてはならない。
きっといつか、異世界転移の方法を見つけてみせる。
いまだに両手で顔面を隠したままのアリーシャちゃんを見て、僕はそんな風に思った。
完全変形ミストルティンロボ――全長18センチミーター
※次回こそは旅立ちます。ご愛読まことにありがとうございます。