6 ――黒槍霊樹ミストルティン――
冒頭でいきなりの全裸シーンがあります。
本話の最後にも再び全裸シーンがございます。
「――神器解放!!――」
僕がそう叫んだ瞬間、辺りはまっ白な閃光に包まれた。
その光の中心で、僕は“すっぽんぽん”になっている。
……オイ。
自分自身の全裸シーンを見せつけられ、僕は少しげんなりする。
着ていた学生服が光の粒子に分解され、その代わりにXXXが装着されていく。
今僕の身の回りでは、いわゆるところの「エッチなアニメの不思議な光」のような物が、全裸の身体に巻き付くようにして展開されている。
たしかに変身シーンにおける裸は、魔女っ娘アニメを始めとする様式美の一つに数えられる物なのかもしれない。
それにXXXというゲームの特徴である、負けたら全裸というシチュエーションを成立させるためには、この演出は必要不可欠なのだろう。
しかし、それにしても神器解放の度に、僕はこの羞恥プレイを味合わなくてはならないのだろうか?
そんなことを考えている内に、僕の周囲を覆っていた光は徐々にその輝きをなくしていく。どうやら装着が完了したらしい。
「おお! かっけー!!」
眩い光の中から解き放たれた僕の身に、XXXが装着されていた。
それは白を基調とした衣服だ。これまで着ていた詰襟の学生服に似ているっていうか、どこか軍服のような趣のある形をしている。
所々に空色のラインが走っており、それは僕にアリーシャちゃんの縞パンを思い起こさせた。これは彼女から貰ったものであるし、もしかして彼女はこの配色を気に入っているのかもしれない。
また、フードの付いた長いマントも付属している。その背中の部分には、微妙に中心線からずれた大きな空色の十字架が描かれていた。
足にはロングブーツのような、黒鉄でできた蛇腹式のフルグリーブが装着されている。
うん。格好いいこと、この上ない。
「そんで、これが僕の武器か」
僕はそれを感慨深げに眺める。
星明かり一つ無い闇を思わせるように黒いそれは、だいたい僕の肘から先と同じくらいの長さをしている。
太さは人差し指と同程度であろうか。
握りやすく、そして軽い。昔日の頃、僕がまだワンパク坊主だった時代に持ったことがあるような、そんな懐かしさすら覚える。
そしてその先端には、やはり黒が存在していた。
抜けば玉散るなんとやら、といった感じの瑞々しさすら感じさせるそれは、まるで夜露に濡れた小さな一枚の葉……。
「……っていうか、これ、まんま葉っぱだよ! まっ黒な葉っぱがついた、まっ黒な枝!! え!? なにこれ!? このただの枝が僕の武器なの!!!?」
防具の格好良さとは対照的に、武器はあまりにも心許ないっていうか――えっ、まじでただの枝が僕の武器なの? って感じだ。
いやいやいや、ハッハッハ……えっ、まじでただの枝が僕の武器なの?
「うんうん♪ かっこいいよ~☆ 秋人クン❤」
は? どこが? ただの枝なんですケド? 君、目ぇ付いてる?
僕はそう思いながらアリーシャちゃんを睨む。ゴリッゴリにガンをくれてやる。
「ど~したの~☆ 秋人クンたら、怖い顔しちゃって❤」
「……うん。服は分かるよ。正直なところXXXの中でも、かなり格好いい部類に入ると思う。けど、この枝はなに? たぶんこれ敵と接触した瞬間に、ポキンといくと思うんだけど……」
タダで貰っておいてなんだが、命に関わることなので僕は必死になる。
冗談だよ~♪ キャハッ☆ とか言ってくれないかなぁ、とアリーシャちゃんの顔を見つめるが、返ってきた答は予想外のものだった。
「【黒槍霊樹】は~、持つ人の実力によって姿と強度を変えるスーパーなウェポンだよ☆ 今は~、う~ん……ちょっと頼りないみたいだけど~。エへ♪」
は? なんて? みすとるてぃん?
ゲームの中では、神すら貫く黒槍と謳われたあの【黒槍霊樹】?
テキストの中にだけあって、実際のアイテムとしては存在しなかったあの伝説の? マジで?
「マジで? ねぇ、マジなん? マジであのミストルティンなん?」
「うん♪ この神樹アルシャナが生まれた時から~、宿木として一緒に育った由緒正しき霊木❤ その力の結晶である正真正銘の神槍、だよ☆」
キターーーッ!!!
絶叫しそうになるほどの胸の高鳴りを抑えて、僕はその黒い枝をまじまじと見つめる。
たしかに今はただの枝だが、そこには無限の可能性が秘められているような気がして、僕は思わずそれに頬ずりしてしまった。
あー、やべー。急に愛おしく思えてきた。
もう! 驚かせちゃってくれるじゃない、このこのこのー!!
――ポキン!
「あ、折れちゃった☆」
ん? いまなんて?
「え?」
僕がその目を下にやった時、そこには“すっぽんぽん”になった自分の身体があった……。
え、まじで?
次回こそは、アリーシャちゃんとキャッキャウフフできる展開 (になるといいなぁ)。
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