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 翌日、朝から本格的な拠点設置が始まった。各チームの責任者が指示を出し拠点を作り上げていく。

健吾は悠人達に道彦と優希の特徴を教えながらその対抗策を練っていた。そんな中。

「やっほー捗ってる?」

 陽気な声色で近づいてくる女性が居た。

「よう鈴音」

 健吾は片手を挙げて鈴音を迎える。

「うんうん。順調みたいね」

「お蔭さんでな。子供のころを思い出しながら作っているよ。それよりもいいのか? お前がここに居たら不正になるんじゃないのか?」

「それなら心配いらないわよ。正式なチームの引受人は決まったから。晴れて私は傍観者になったのよ」

 羨ましい。できることなら自分もその立ち位置が良かったものだと、健吾は嘆息する。

「引受人って鋼一だろ」

「正解! よく分かったわね」

「拠点一に関わってる人間で今居ないのは龍平と鋼一ぐらいだからな。それよりも龍平は来ないのか?」

「兄なら来ないわ」

「どうして?」

「アメリカにいるから」

 へえ、そうなのか。健吾は幼馴染の近況報告を知っても驚くことはなかった。ただ何となく龍平という人間はどこで何をやっていても不思議ではない、可能性に満ちた人物であるということを健吾は知っている。

「じゃあ鈴音が龍平の代わりか」

「まあそんなとこ」

「昨日の鈴音を見ていると昔の龍平を思い出したよ」

「それは光栄に受け取っていいのかしら」

「一応褒め言葉のつもりだよ」

「ふふっありがと」

 昔を懐かしみ二人して笑いあう。

空気が変わったことを感じて健吾が、

「なあ」

 と声を掛けた。

鈴音が「うん?」と首を傾げる。

「どうしてこの町に戻ってきたんだ?」

 健吾の言葉の後、少し間が空いた。

しばらくして鈴音が口を開く。

「ここが私の故郷だと思ったからよ」

 そっか。と健吾は言った。

「ところでそのスーツ暑くない?」

「勿論。暑いわよ、凄く」

 最後に冗談っぽく言いあってから鈴音は去っていった。

その後姿を見つめながら、

「余計なこと言ったかな」

 と健吾が呟いた。


 翌日。順風満帆とはいかないまでもそこそこ捗りながら作業していると、遠くから一人の男性が近づいてくるのが見えた。

それが誰だか分かったため、健吾はすぐさま作業を中断すると、男が近づきすぎる前に自分から近づいていった。

やがて会話ができる距離まで近づくと、

「よう、鋼一」と健吾から声を掛けた。

 鋼一と呼ばれた男は釣り上がり気味の目をメガネで隠しつつ、「ああ」と短く返事する。

「本当にお前が来るとはな」

「ふんっ、俺も来るつもりはなかったんだ。手紙だってわざと無視したしな」

「鋼一ならそうすると思ったよ。けど手紙の主が鈴音だってのは意外だろ」

「ああ、昨日の朝いきなり押しかけられてな。鈴音、昔からあんなアクティブだったか?」

「アクティブだったのは兄の方」

「やっぱりそうか。記憶が一致しないわけだ」

「お前記憶もはっきりしないまま引き受けたのか?」

「冗談だ。真に受ける必要は無い」

 相変わらず鋼一の冗談は分かりにくい。

「とにかく俺も参加する。今日はその挨拶に来ただけだ」

「そうか。それはよろしくな」

「ああ。それと参加するからには勝たせてもらう」

 それだけ言うと、背後を向いてさっさと立ち去っていく。

鋼一は相変わらずのようだ。

いつでも目の端が釣りあがっているから、いつ機嫌が良いのか分かりづらい。

これでまた強力な相手が現れたわけだ。


 それから一週間は拠点製作に費やした。

そろそろ仕上げに掛かってもいいかもしれないな、などと健吾は考える。

そんなときだった。

「大変! 健吾兄ちゃん!」

 血相を変えてやってきたのは悠人だった。

「どうしたんだ、慌てて」

「大変だよ。今そこに他のチームの子が居たんだ! スパイだよきっと!」

「本当かよ! それだと情報が筒抜けになってるんじゃないか」と幸太が騒ぐ。

「不味いですね。そんなことになったらこっちの不利です」と秀一が冷静に話す。

「悠人、どこのチームの子か分かるか?」

「えっと多分だけど」

「どこのチームだ?」

「あのお姉さんのチーム。男の子みたいに帽子被ってたけど、あれ夏子だよ」

「夏子かー。あいつ普段から男っぽいからなー」

「そうそう。男の格好してたら分かんないぜ」

「悠人よく分かったよな」

「うん。だって皆忙しいはずなのに一人だけ何もしてなかったし」

「それよりどうしますかこれから?」

「そうだよ。情報が漏れてるなら今やってることが無駄になっちまうよ」

「このままやるしかないんじゃない? もう作り直してる時間ないぜ」

「でもこのままだと負けちゃうよ」

「せっかく作ったのにそれは嫌だなー」

 子供達の間で不安が広がっていく。

そんな中唯一の大人である健吾が口を開いた。

「いやこれでいい」

「え?」と悠人はキョトンとした顔で健吾を見つめる。

「拠点を見せるのは作戦の内だ。それよりスパイがバレたということはもうこっちに来ることはないだろう。こっちは警戒するはずだからな」

 むしろそこが重要。早めに見られたことは僥倖と言っていい。

「ここからが作戦の重要な部分となる。まず皆にこれを渡す」

 そう言って健吾は子供達にある装備を渡していく。

「健吾兄ちゃんこれって……!」

 子供達の目が輝き始める。

「これからこれを使った戦法を教える」

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