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「やるじゃん、優希」
「健吾こそ流石ね」
戦いも終盤というところ、健吾と優希がお互いを褒め称えていた。
「でも言ったでしょ。私のチームが勝つって」
優希が得意気な笑みを浮かべながら言った。
「いいや。まだ勝負は分からない」
相変わらず健吾は決着のついていないことに口を挿むのは無粋だ、とばかりに多くは語らない。健吾にとっては、勝負の行く末はまだ分からない、ただそれだけのことだ。
そんな二人の近くでは道彦と鋼一がぐったりしていた。もう勝つ望みの薄い勝負に精神が消耗したかのように動かない。
「道彦と鋼一疲れてるようね」と鈴音が二人を観察しながら言う。
「そりゃあ道彦は切り札を取られちゃったし鋼一はもう攻められないからね」
「……ああ。それもこれも健吾のせいだ」
「俺のせいだけか?」
「健吾のせいだ。そのせいで俺のチームはもう戦えない……」
「鋼一のは自分達で攻めていった結果だろ」
健吾に言及されて鋼一はまた言葉を失う。
「まあともかく。後、十分。これだけの時間で勝負がつく。果たして優希のチームがフラッグを奪取できるか、それとも健吾のチームがフラッグを守れるか。はたまた優希がフラッグを奪取して健吾も他のフラッグを奪取するか、もしくは健吾がフラッグを守って尚且つ他のフラッグを奪取するか」
「何度も言ってるけど勝つのは私のチームだから」
「あいつらが楽しめるなら別に負けたって構わないが、でも、そもそも負けて納得するやつらじゃなかったな」
忘れていたというように健吾が、ふっ、と笑みを溢す。
それが健吾が見せた一番自然な笑みだった。そのことに鈴音だけが気がつき、思わず優しい笑みを浮かべた。