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プロローグ

「これは大戦です。戦いなのです。お互いの不当とするところを暴くために我々はぶつかり合わなければなりません!」

 夏の暑い日差しを受け熱風を肌で感じて汗だらけにも関わらず、宮川鈴音はリクルートスーツをビシッと着込み、大声で宣言した。

「これより出場者は速やかに所定のポイントへ着いてください。合図が鳴ったら行動開始、つまり戦いの幕開けです。では四者とも公平な戦いを心掛けて思う存分競い合ってください!」

 この言葉を合図に四人の少年少女はそれぞれ別々の方向へと歩いていく。それぞれの目に闘志を宿して確固たる自信を漲らせて、それぞれの“拠点”へと戻っていく。

その光景を遠くから眺める四人の大人達が居た。

「もうすぐみたい始まるみたいだぞ」

 しゃがみ込み、真剣に双眼鏡を覗き込む朝比奈道彦は周りの三人へと声を掛ける。金髪頭が眩しく、その声は高揚を隠せないのか楽しげだった。

「なあ、どこが勝つか賭けねーか?」

「馬鹿。賭けになんないわよ。私んとこが勝つんだから」

 道彦にそう釘を刺す小野原優希は、シャツにジーンズというラフな格好と中分けしたストレートロングの髪が目立つ、この場にいる唯一の女性だ。

「優希のチームは女だらけじゃねーか。勝つのは断然俺の甥っ子達だろ」

「身内贔屓も大概にしておけ」

 更に釘を刺すメガネを掛けたインテリ風な男性がクールに告げた。

「身内贔屓は鋼一も同じだろ。お前のチーム殆どお前の従兄弟だって聞いたぞ」

 鋼一と呼ばれた男性、弓野鋼一は深く溜息をついて道彦へと向き直る。

「気付いたらそうなってただけだ。大体俺はお前みたいにそんなに乗り気じゃない」

「前に鋼一のチームの偵察に行ったらノリノリで指揮執ってたって甥っ子が言ってたぞ」

「あ、その情報私んとこにもきた」

「煩いんだよ二人とも」

 若干イラついた様子で鋼一は目の端を吊り上げる。

「まあでも優希と鋼一には負ける気しねーよ」

 軽薄にケラケラ笑いながら道彦は二人を挑発する。

「この中で一番手強そうなのは健吾くらいだし。なあ、健吾はどこが勝つと思う?」

 道彦に呼ばれて、それまで木に寄りかかって両腕を組み様子を見ていた田上健吾はゆっくりと身体を起こす。他の三人ほど目立つ特徴はないが、バランスよくついた筋肉と長身の体躯がどこか頼もしい雰囲気を醸し出している。

「勝ち負けはあんまり興味ないな」

「そんな、この戦いを真っ向から否定すること言うなよ。健吾も当事者なんだし」

「悪い悪い」

 と悪気がなかったように言うが、田上健吾に言わせれば勝ち負けというのは本当にどうでもよい。

あえて重要視するなら、楽しんだ者が勝者。それ以上でも以下でもない。

「お、始まるぞ」

 双眼鏡を覗き込みながら道彦は告げた。道彦の視線の先にはピストルを上に構えた宮川鈴音の姿がある。

そのピストルがパンッと鳴り、瞬間、

 うおおおおおおぉぉぉぉーーーーという少年達掛け声が聞こえてきた。

「お、思ったより激しそうね」

 優希が少し驚いたように表情を曇らせる。

 かくして戦いの火蓋は切って落とされた。

少年達は我先へと果敢に突撃し、戦いが始まる。


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