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一夜の消える夢

作者: 大神 志歩

 その日の私には、前日までにはなかった、おかしな能力が身に付いていた。それも、その日の朝、家を出るときにはそんなものはなかったはずだ。私はその能力のせいであの恐ろしい世界へと行ってしまった。

 朝の教室、親友との会話を楽しんでいた。いつも通りの光景だった。しかし、その後悲劇は起きた。私の言った冗談に、親友は笑い、私の肩を軽く叩いた…瞬間、親友の姿が見えなくなった。何が起こったのか分からなかった。ただただ呆然とするしかなかった。そんな私に、別の友人が後ろから「元気ないね、どした~?」と声を掛けながら頭をなででくれた…はずなのに、振り向くとそこには友人がいない。慌てて教室中を見渡したが、その友人はどこにも居なかった。これだけでも相当おかしいのだが、更におかしいことには、クラスメイトが2人も神隠しにあったように消えたのに、誰も気づいて居ないようなのだ。それは1限目が始まっても同じことで、元からそのような人は存在しない、と言わんばかりに、誰も何も言わなかった。私はとてつもない違和感を感じながら、4限までを過ごした。

 お昼休み、廊下を歩いていた私に、追いかけっこをしている男子がぶつかってきた。「そんなことは外でやってよ!」と文句の一つでも言おうとしたが、その男子の姿は見当たらない。そこでようやく私は悟った。朝から私に触れた人が消えている。そして、消えた人の事は誰も覚えていない、と。気付いたあと、恐ろしく、そして、気味悪くなった。どうしてこんなことになってしまったのか…。それは見当もつかなかったが、とりあえず、私は絶対に誰かに触れてはいけないということだけは、嫌というほど分かった。それを決意し、5限目が始まる前の教室に入った。しかし…。(え、なんで!?)ドアを開け、入ってすぐの所に居た2・3人の生徒と目が合った瞬間、朝やさっきの昼休みの時と同じように消えてしまった。更にもう一人と目が合い、その人も消えた。(嘘だ!目が合った人も消えちゃう…。)どうしようもなかった。起きて生活している限り、人と目を合わせないなんてほぼ不可能だった。黒板の版書を写すため顔を上げると、先生さえも消えてしまい、周りは、最初から自習だったかのように振る舞っていた。訳が分からなくなり、泣き出しそうになったまま、5限を終え、6限も終えた後、部活の時間になった。私は部活が大好きだった。このままでは大好きなみんなを消してしまう、と判断した私は、部活を休み帰ろうとしたが、その日は大切な話があるということで、1年から3年まで、全員必ず部活に参加しろ、と昨日顧問が言っていたのを思い出し、嫌々ながらも参加した。…結果は分かっていた。顔を会わせた瞬間、先輩も、同級生も、後輩もみんな消えた。先生も消えた。泣きながら家に帰ると、出迎えてくれた母も消えた。部屋にいた妹も、仕事から帰ってきた父も…私の大切な人は、私のせいでみんな消えた。生き地獄だ。涙が枯れるまで泣いた。

 …そしてやっと目が覚めた。最初から自分に触れれば良かったんだと気づき、触れた…が消えなかった。私は、消えることも出来ないのか、と絶望した。その直後、階下から母の「ご飯よ~!」という声が聞こえた。それから私は下に行き、家族4人そろってご飯を食べた。もちろん、もう誰も消えることはなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 字詰めだとスリルが増して良い
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