昔々あるところに_008
昔々あるところにモグさんという貧しい青年がおりました。
モグさんは黒猫堂という骨董品屋で、とある財布をみかけました。
本牛皮の長財布で、色は黄色で
<お金がどんどんふえる魔法の財布(本物)>とありました。
モグさんはそれを見たとたん、電撃に打たれたように飛びつきました。
カウンターに持って行って
「この、お金が増える魔法の財布(本物)というのは本当ですか?」
と店主に聞きました。
店主は黒猫でした。
「本当ダニャ、お金が増えるニャ」黒猫は老眼鏡を近づけてそう言いました。
「お金が増えるというのは、単に、両替して数が増えると言うことではないですか?」
念のために聞きました。
「そう言うわけではないニャ」黒猫が言いました。
「売ってください。買います」
もぐさんは10万円出してその財布を手に入れました。
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家に持って帰ってテーブルの上に置きました。一万円札を二枚と千円札を三枚入れて見ました。
財布は、ぶるぶるぶるぶる……ぶるぶるぶるぶる……
震えました。
そのまま震えている財布をモグさんは確かめてみました。
一万円札が二枚と千円札を三枚入っており、まったく変化はありませんでした。
財布の表面をよく見ると
【おかねがふ○えるさいふ】
と刻印してあり
【る】の字が消えかかっていました。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ