ようこそ、新入部員! -05-
教室は施錠されてるので、行く当てなんかない。「カコンッ」と、ししおどしのようにうなだれた私は、一階におりて教室横のトイレに入った。
まいったな。屋上は開放されてないからなぁ。今さら、取り下げるのも間が抜けてる気がするし、そうは言ってもやる気のある他の部に入るつもりもないし……。
このままでは校内をブラブラするしかなくなる。『難民』か……。
みんな、そう言われるのが嫌らしく。ここに来るまでに生徒の姿を見かけなかった。
考え事をしながらトイレ内を行ったり来たりしていると、あっという間に五分経ってしまった。
誰か来たら具合が悪い。
批難するように私はトイレの個室に入って、文庫本を取り出し――頭を抱えた。
さっきの司書さんの一瞥が頭をよぎる。借りた文庫本は長編小説の下巻だったのだ。表紙ぐらい確認すれば良かった。詰めの甘さに自己嫌悪する。
仕方なく上巻の予備知識もないまま適当に読み進めていると、あっという間に時間が過ぎた。
まあ、私にも帰る場所くらいはある。というわけで、四時を確認した時点で荷物を片付け、個室を出た。
トイレのドアを開けた時――。
背後で個室が開く音がした。他にも誰かいたらしい。
これはいよいよ反省しなくては。他の個室など気にも留めていなかった。